らぶ☆ほたる ~エロゲの美少女ヒロインを召喚したら、思ってたのと違うんだけど?~

団子騎士

文字の大きさ
12 / 40

第12話

しおりを挟む
 俺は昼過ぎには寝て、二十一時くらいに起きてバイトに行くのが日課だ。その間――ほたるは俺が寝ている時も、ずっと一人でテレビを見ている。
 同じ部屋にいるもんだからこれがなかなかの睡眠妨害で、音は聞こえるし映像は眩しいしで、俺は浅い眠りの中でバラエティー番組の笑いやらナレーションの声なんかが頭に残って仕方ないんだ。

「和馬くん、今日も寝不足? またゲームばっかりやってるんでしょ」

 光莉先輩が洗い場の向こうから声を掛けてくる。どっちも正解のようで正解じゃないです。

「私も最近やるんだけど、あんまり上手くなくて」

「え、光莉先輩もゲームやるんですか!」

 それは知らなかった。というか、これは思わぬ収穫。

「ちょっと前にPlayVacationプレイバケーション買ったんだよ」

「プレバケですか、どんなゲームをやってるんですか?」

「えっと……今はデビルハザードとか」

「意外にアクションホラーゲーム!?」

 デビルハザードはいわゆる「サバイバルホラー」で、銃を持った主人公が悪魔を倒しながら謎を解き明かし、最終的にボスと対決するゲーム。アクション性とホラー性を合わせた名作である。
 ただ、このゲームには「暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています」と表記されているとおり、ホラーやグロが苦手な人には向かないゲームでもある。
 なので、ほんわかおっとりな光莉先輩には似合わないゲームなのである。

「あれすごく怖いけど面白いよねぇ。でも研究施設でウロボロスの鍵が見つからなくて」

 なんとなく似合わないと言ったのは撤回しよう。光莉先輩が怯えながらホラーゲームをやっている姿を想像したら、サバイバルホラーもおとぎの国のメルヘンファンタジーに思えてくる。
 しかし、研究施設ということは中盤戦の山場か。

「あそこはちょっと複雑なんですよね」

 研究施設には下水路があって、そこで『欠落した遺伝子』を手に入れてから『ウロボロスの部屋』に行ってウイルスの生成を……って、

「説明するのは難しいんですよ。まず下水路の入り口は西館の資料室の奥にあって、バールを持っていかないと入れないんですけど」

「西館? どこだっけ??」

「施設の外周をぐるって回っていけるとこです」

「バールって何だっけ?」

「マンホールの蓋を開けるやつです」

 ぽかんと明後日の方向を見つめる光莉先輩。ダメだ、たぶん通じてない。

「実際にやって見せたほうがわかりやすいですよね」

「えっ、見せてくれるの?」

 明後日の方向を見つめていた光莉先輩の視線が俺に向いた。

「いいですけど、プレバケは置き型ゲームだからテレビがないと」

「じゃ、じゃあ和馬くんの家は?」

 俺の家ですか!?

「ダメ、かな?」

 そそそそんな、ダメってことは決してないですが、どどどどうして俺の家でなんか。まるで「ゲームをしに遊びに行っていい?」って言われてるみたいな勘違いをしていいんですか?

「おいお前ら、口ばっかり動かしてないで手を動かせ」

 すっかりお喋りに夢中になっていた俺たちに、キッチンから冨澤さんの声が飛んできた。ちょっ、今は俺の山場だったんですよ。

「てへ、怒られちゃったね」

 光莉先輩はペロっと舌を出してホールに戻っていった。光莉先輩が残念そうな顔をしていたのは――気のせいかな。



 バイトが終われば日付も変わっていて、今日は待ちに待った給料日である。

 ひとまずコンビニに立ち寄りATMで給料をおろして、食材を買うにはまだスーパーが開いてないからこのまま弁当でもって、

「アイツの分も買っていかないといけないのか」

 しぶしぶ和風おろしチキン弁当を二つ購入することにした。俺の家に同棲とは名ばかりの、無理やり寄生しているエロゲヒロイン様の分まで買わなきゃいけないとか、俺はほたるを養っているのだろうか。

「おっす、和馬」

「げっ……ミノル」

「なんで『げっ』なんだよ」

 いつものように攻撃力の高そうなツンツン頭。ジーンズにTシャツというラフな格好で、肩にバッグを引っ下げたミノルとエンカウントしてしまった。
 その姿は、これから学校に行くところみたいだな。

「ところで王座決定戦のスケジュールは決まったか?」

 ああ、この間言ってたやつか。てか、やるのかよ。

「冷たいこと言うなよ。友達だろ? 高校の頃はいつも対戦に付き合ってやったじゃんか」

「お前がヒマしてたからな」

「よく言うぜ。ゲームばっかりで女っ気のない和馬の相手をしてやったのに」

 何を言う。女っ気がなかったのはお互い様じゃないか。と憎まれ口をたたくけど、たしかにこいつとは仲がいい。
 二人ともゲーム馬鹿で女っ気がなくて勉強も運動も大したことなくて、いいところが一つもないから「類が友を呼んだ」んだろう。

「てか和馬、なんで同じ弁当を二つも持ってんの?」

 ミノルは俺が抱える二つの和風おろしチキン弁当をジッと見つめる。まずい、その質問は非常に危険だ。

「まさか、女か?」

 やはりそう来るか。

「いや違う。俺は断じて同棲とかエロゲみたいなことをしているわけではない」

「なるほど、同棲してない女がいると」

 墓穴を掘ったうえに揚げ足まで取られた。

「ミノルよ。お互いゲーム馬鹿で女っ気がなくて勉強も運動も大したことなくて、いいところが一つもない俺たちなんだ。そんなわけないだろ?」

「オレは違うぜ? ゲームは趣味程度だし大学には女友達もいるし、勉強も運動も普通にできるし、いいところがたくさんある」

 そうかそうか。では、ゲームは普通に趣味程度で、普通に女友達がいて、勉強も運動も普通で、見た目もいたって普通なミノルくん、

「じゃあどうしてミノルには彼女がいないんだ?」

「う……」

「その女友達とやらは本当に友達なのか? ただLINEのIDを交換しただけじゃないだろうな」

「うぐ……」

「そこから何か恋愛要素が発展しているのか? お前が一方的にLINEを送り付けた挙句、必殺の『既読スルー』で枕を濡らしているのではないか?」

「うぐぐぐぐ……!」

 形勢逆転だ。敵の隙を突いてコンボ攻撃を見舞う、これが対戦型格闘ゲームで強者の戦い方なのだよ。

「くそう、和馬め。この期に及んでハメ技を使ってくるとは」

 この隙に俺は、レジで弁当の会計を済ませてしまう。「温めますか?」「いえ、結構です」と一連の流れを終えると、

「あ、電車に間に合わなくなる」

 ミノルは思い出したかのように携帯の時刻を確認し、

「それじゃ、王座決定戦のスケジュールが決まったら連絡してくれよな」

 と言い残して去っていった。どうやら俺のカウンター攻撃で尻尾を巻いたらしい。弁当二つの件はうやむやになってくれたことを祈ろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

処理中です...