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第33話
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小一時間の昼寝(とは言わないか)で、ガス欠寸前の俺の脳ミソは何とか復活。バイト終了のチェッカーフラッグを受けて、急いで帰宅する。
部屋ではほたるがスピスピと寝息を立てて眠っていた。パンツ、見えてるぞ。
「……ああ、おかえり和馬」
と、薄目を開けてチラと俺に振り向く。美味しいものを食べてる夢でも見てたのか? よだれ垂れてるぞ。
「ほたる、ゲームの対戦やるぞ」
「んんん、まだ眠い。和馬も少し寝た方がいいぞ」
「心配するな。何日か寝なくても死にはしないさ。それにもう日にちがあまりない」
寝惚け目だったほたるが、俺のひと言でハッと鋭い碧眼に変わった。
「……気付いてたのか」
「ああ、ほたるに言われてな。『らぶ☆ほたる』は十四日間のストーリーだった。だからほたると過ごすのも、あと四日しか残ってないんだろ」
「そうだな。あと四日、か」
ほたるはゴロリと背を向けて、小さく息を吐いたように見えた。それから急に、とんでもないことを言い出したんだ。
「なあ和馬。ゲームで勝てなくても、あたしとエロゲ展開してもいいんだぞ」
「な、何を言い出すんだよ」
「和馬はゲームの中であたしとのエンディングに辿り着いたんだ。だからゲームのエンディングを、今してもいいんだぞ」
柔らかな身体の曲線を隠すタオルケットの端から、ストライプ柄の下着が見えている。そこから伸びる白い足。長い金髪、Tシャツの袖から見える細くて透き通った肌。
薄暗い部屋の中で、ほたるのいるそこだけが澄んでいるように感じた。
「……いや、やめておくよ」
「どうして? あたしはエロゲのヒロインなんだ。あたしはそういうキャラなんだぞ」
「ゲームの中で、だろ」
そう、今は違うんだ。俺の目の前にいるほたるは、ゲームの中の望月ほたるじゃない。百万人に愛されるエロゲのヒロインじゃない。
俺のヒロインであって、一人の女の子なんだ。
ほたるは何も言わない。ただ黙って背中を向けていた。
「わかった、俺も少し寝るよ。でも起きたら勝負再開だ」
俺はソファにゴロリと横になった。ほたるが何を考えているのかわからないけど、今は聞かないでおこう。
寝不足と疲れで、意識がなくなるまでそう時間はかからなかった。
目が覚めると俺に布団が掛けられていて、ベッドにはほたるがいない。代わりにキッチンから物音と、食べ物の匂いが……
「あ、起きた?」
声のする方を振り向くと、そこにはほんわかと湯気の立つお皿を運ぶほたるがいた。
「それは?」
「朝ごはんだよ。もう夕方だけどね」
時計を見ると時刻は十六時。しまった、思いっきり寝てしまった。
「心配しなくてもまだ時間はあるよ。それより一緒にご飯を食べよう」
「ご飯って、もしかしてほたるが作ったのか?」
「そうだよ、文句あるか?」
ちょっとだけ照れ顔でテーブルにご飯と味噌汁と……焦げた何かを並べる。
「あ、ああ。じゃあ頂きます」
箸を持って、まずは味噌汁を。
ん? 何やらフルーティーな風味が漂うな。味噌の味はするから間違いなく味噌汁だが、中に沈んでいるこの物体は?
いびつに輪切りにされた、ナス……じゃない。芋の類でもない。箸で摘まむとヌルっとした感触がするこれは――
バナナだった。
……味噌汁にバナナを入れるか?
「落ち着け、俺。時空を超えたゲーム世界線では、バナナも味噌汁の具になり得ると聞いたことがあるような、無いような」
いや、無いな。
俺は危うく口の中から味噌汁をコースアウトさせてしまうのを必死で抑え、喉から食道、胃へと加速させた。そんな俺を、ほたるは真剣な眼差しで見つめている。
ならば次はご飯だ。これは間違いなく米だな、疑いようもない。どこのゲーム世界線でも米は米だからな。ご飯を炊くのにバナナは必要ないから、これはセーフティだ。
フワリとした米の香りを鼻で感じて口に入れると、
「……軟らかい」
いや、軟らかいと言うよりベチャベチャしてるな。そうか、これはお粥か。ほたるは疲れて寝ていた俺に気を遣って、消化に良い「軟らかめ」で炊いてくれたのか。
だが、よくよく見ると米粒がドロドロとぬかるんでて箸で掴めない。これでは食べる速度を維持できないぞ。スピードダウンだ。
そんな俺を見て、ほたるの顔がさらにぐんと近づいてきた。
部屋ではほたるがスピスピと寝息を立てて眠っていた。パンツ、見えてるぞ。
「……ああ、おかえり和馬」
と、薄目を開けてチラと俺に振り向く。美味しいものを食べてる夢でも見てたのか? よだれ垂れてるぞ。
「ほたる、ゲームの対戦やるぞ」
「んんん、まだ眠い。和馬も少し寝た方がいいぞ」
「心配するな。何日か寝なくても死にはしないさ。それにもう日にちがあまりない」
寝惚け目だったほたるが、俺のひと言でハッと鋭い碧眼に変わった。
「……気付いてたのか」
「ああ、ほたるに言われてな。『らぶ☆ほたる』は十四日間のストーリーだった。だからほたると過ごすのも、あと四日しか残ってないんだろ」
「そうだな。あと四日、か」
ほたるはゴロリと背を向けて、小さく息を吐いたように見えた。それから急に、とんでもないことを言い出したんだ。
「なあ和馬。ゲームで勝てなくても、あたしとエロゲ展開してもいいんだぞ」
「な、何を言い出すんだよ」
「和馬はゲームの中であたしとのエンディングに辿り着いたんだ。だからゲームのエンディングを、今してもいいんだぞ」
柔らかな身体の曲線を隠すタオルケットの端から、ストライプ柄の下着が見えている。そこから伸びる白い足。長い金髪、Tシャツの袖から見える細くて透き通った肌。
薄暗い部屋の中で、ほたるのいるそこだけが澄んでいるように感じた。
「……いや、やめておくよ」
「どうして? あたしはエロゲのヒロインなんだ。あたしはそういうキャラなんだぞ」
「ゲームの中で、だろ」
そう、今は違うんだ。俺の目の前にいるほたるは、ゲームの中の望月ほたるじゃない。百万人に愛されるエロゲのヒロインじゃない。
俺のヒロインであって、一人の女の子なんだ。
ほたるは何も言わない。ただ黙って背中を向けていた。
「わかった、俺も少し寝るよ。でも起きたら勝負再開だ」
俺はソファにゴロリと横になった。ほたるが何を考えているのかわからないけど、今は聞かないでおこう。
寝不足と疲れで、意識がなくなるまでそう時間はかからなかった。
目が覚めると俺に布団が掛けられていて、ベッドにはほたるがいない。代わりにキッチンから物音と、食べ物の匂いが……
「あ、起きた?」
声のする方を振り向くと、そこにはほんわかと湯気の立つお皿を運ぶほたるがいた。
「それは?」
「朝ごはんだよ。もう夕方だけどね」
時計を見ると時刻は十六時。しまった、思いっきり寝てしまった。
「心配しなくてもまだ時間はあるよ。それより一緒にご飯を食べよう」
「ご飯って、もしかしてほたるが作ったのか?」
「そうだよ、文句あるか?」
ちょっとだけ照れ顔でテーブルにご飯と味噌汁と……焦げた何かを並べる。
「あ、ああ。じゃあ頂きます」
箸を持って、まずは味噌汁を。
ん? 何やらフルーティーな風味が漂うな。味噌の味はするから間違いなく味噌汁だが、中に沈んでいるこの物体は?
いびつに輪切りにされた、ナス……じゃない。芋の類でもない。箸で摘まむとヌルっとした感触がするこれは――
バナナだった。
……味噌汁にバナナを入れるか?
「落ち着け、俺。時空を超えたゲーム世界線では、バナナも味噌汁の具になり得ると聞いたことがあるような、無いような」
いや、無いな。
俺は危うく口の中から味噌汁をコースアウトさせてしまうのを必死で抑え、喉から食道、胃へと加速させた。そんな俺を、ほたるは真剣な眼差しで見つめている。
ならば次はご飯だ。これは間違いなく米だな、疑いようもない。どこのゲーム世界線でも米は米だからな。ご飯を炊くのにバナナは必要ないから、これはセーフティだ。
フワリとした米の香りを鼻で感じて口に入れると、
「……軟らかい」
いや、軟らかいと言うよりベチャベチャしてるな。そうか、これはお粥か。ほたるは疲れて寝ていた俺に気を遣って、消化に良い「軟らかめ」で炊いてくれたのか。
だが、よくよく見ると米粒がドロドロとぬかるんでて箸で掴めない。これでは食べる速度を維持できないぞ。スピードダウンだ。
そんな俺を見て、ほたるの顔がさらにぐんと近づいてきた。
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