34 / 40
第34話
しおりを挟む
「じゃ、じゃあ次はこの黒い何かだ」
「それは卵焼きだよ」
ほたるが口を尖らせて言う。
た、卵焼き……だと? この真っ黒な物体が卵焼きだと言うのか。卵が残念なくらいに黒く焼けただれているぞ。『サンダー』にでも撃たれたのか?
箸を入れると「カスッ」と乾いた音がする。水分という水分が干上がってて、まるで保存食だ。お湯をかけて三分待てば食べ頃になるのか?
ええい、ままよと口に放り込む。
「……うん。これは卵焼きだ」
「だろ?」
語弊があるかもしれないから言っておくぞ。たしかにこれは『卵』を『焼いた』モノだ。卵を焼けば『卵焼き』だ。否定はしない。
だが、黒い卵焼きなど俺は今まで見たことがない。出汁や砂糖の代わりに暗黒物質でも混ぜ込んでいるのだろうか、ダークマターの味は苦かった。
「どうだ、ウマいか?」
ほたるは嬉しそうに尋ねてくるが、ここでお世辞にも「美味しい」などと答えるのは優しさではないぞ。
「めちゃくちゃマズい」
「嘘っ!?」
「嘘っ!? じゃない。てか驚くところじゃないだろ」
だいたい味噌汁にバナナを入れるか? もしかしてほたるもマリヲカートをやり過ぎて、バナナの皮でスピンしながら作ったんじゃないだろうな。
「それに、このご飯だ」
俺は茶碗をほたるの眼前に突き出す。
「あはは、それは失敗したやつ」
「それはって何だよ、これ以外は成功してるのか!?」
三品の中で唯一まともに食べられるご飯が、ほたる曰く「唯一の失敗」とは。俺は力なく茶碗を引っ込め、最後の一つ、邪悪なオーラを解き放つ真っ黒な卵焼きを指さした。
「じゃあ、この卵焼きだ。こいつは電撃でも受けて真っ黒になっているのか? 俺は冷蔵庫に『サンダー』を入れておいた記憶はないぞ」
「それはよく焼いたからだよ。卵のサルモネラ菌は十分に加熱するといいんだろ?」
なぜそこまで知ってて卵焼きのレシピを知らない。
「まったく、料理だけは俺の方が上だな」
「なんだよ、あたしは一生懸命作ったんだぞ」
と言って、ほたるは自分でも卵焼きをかじり、ご飯を口に運び、味噌汁をすすると、
「……マっズ!」
まるで『サンダー』の電撃に撃たれたように痙攣し、白目を剥いた。そりゃそうだろうよ。
「たはは、これは全部失敗作だな。ごめんごめん」
苦笑いを浮かべたほたるは、そそくさと料理を下げようとした。その指先に一つ、絆創膏が巻かれている。
包丁を使うメニューなんてないのに、どうして絆創膏を使うんだよ。ヤケドでもしたのか。絆創膏でヤケドは治らないぞ。
「いいよ、食べるから」
俺はほたるの手から暗黒卵焼きを取り返し、茶碗からベチャベチャのご飯をかき込む。
「あ……」
「ほたるにも出来ないことがあるんだな。それを見られたのは良かったよ」
卵焼きを平らげ、味噌汁を飲み干した。塩気と苦みと甘みが口の中で十六連鎖して、もはや何を食べているのかわからん。
「でも、次は俺が作るからな」
箸を置き「ごちそうさま」と手を合わせるとほたるは、
「……うん」
と俯いて頬を染めていた。
お皿に茶碗を重ねてキッチンへ持っていく。洗い物くらい俺がやるさ。指、ヤケドしたんだろ?
洗い場のシンクには、焦げ跡が痛々しいフライパンやら味噌汁が吹きこぼれた鍋やらが無残な姿を晒していた。
いいさ、洗い場は俺の舞台だ。
「んで、ほたるは何が食べたい?」
ひょいと頭を傾けて聞くと、帰ってきた答えは、
「レタスチャーハン!」
「同じものばっかりだな」
「いいだろ、大好きなんだから」
「へいへい、レタスチャーハンね。必ず作ってやるよ」
「絶対だよ、約束だかんね」
なんかこうしてると、本当に同棲してるみたいだな。
「それは卵焼きだよ」
ほたるが口を尖らせて言う。
た、卵焼き……だと? この真っ黒な物体が卵焼きだと言うのか。卵が残念なくらいに黒く焼けただれているぞ。『サンダー』にでも撃たれたのか?
箸を入れると「カスッ」と乾いた音がする。水分という水分が干上がってて、まるで保存食だ。お湯をかけて三分待てば食べ頃になるのか?
ええい、ままよと口に放り込む。
「……うん。これは卵焼きだ」
「だろ?」
語弊があるかもしれないから言っておくぞ。たしかにこれは『卵』を『焼いた』モノだ。卵を焼けば『卵焼き』だ。否定はしない。
だが、黒い卵焼きなど俺は今まで見たことがない。出汁や砂糖の代わりに暗黒物質でも混ぜ込んでいるのだろうか、ダークマターの味は苦かった。
「どうだ、ウマいか?」
ほたるは嬉しそうに尋ねてくるが、ここでお世辞にも「美味しい」などと答えるのは優しさではないぞ。
「めちゃくちゃマズい」
「嘘っ!?」
「嘘っ!? じゃない。てか驚くところじゃないだろ」
だいたい味噌汁にバナナを入れるか? もしかしてほたるもマリヲカートをやり過ぎて、バナナの皮でスピンしながら作ったんじゃないだろうな。
「それに、このご飯だ」
俺は茶碗をほたるの眼前に突き出す。
「あはは、それは失敗したやつ」
「それはって何だよ、これ以外は成功してるのか!?」
三品の中で唯一まともに食べられるご飯が、ほたる曰く「唯一の失敗」とは。俺は力なく茶碗を引っ込め、最後の一つ、邪悪なオーラを解き放つ真っ黒な卵焼きを指さした。
「じゃあ、この卵焼きだ。こいつは電撃でも受けて真っ黒になっているのか? 俺は冷蔵庫に『サンダー』を入れておいた記憶はないぞ」
「それはよく焼いたからだよ。卵のサルモネラ菌は十分に加熱するといいんだろ?」
なぜそこまで知ってて卵焼きのレシピを知らない。
「まったく、料理だけは俺の方が上だな」
「なんだよ、あたしは一生懸命作ったんだぞ」
と言って、ほたるは自分でも卵焼きをかじり、ご飯を口に運び、味噌汁をすすると、
「……マっズ!」
まるで『サンダー』の電撃に撃たれたように痙攣し、白目を剥いた。そりゃそうだろうよ。
「たはは、これは全部失敗作だな。ごめんごめん」
苦笑いを浮かべたほたるは、そそくさと料理を下げようとした。その指先に一つ、絆創膏が巻かれている。
包丁を使うメニューなんてないのに、どうして絆創膏を使うんだよ。ヤケドでもしたのか。絆創膏でヤケドは治らないぞ。
「いいよ、食べるから」
俺はほたるの手から暗黒卵焼きを取り返し、茶碗からベチャベチャのご飯をかき込む。
「あ……」
「ほたるにも出来ないことがあるんだな。それを見られたのは良かったよ」
卵焼きを平らげ、味噌汁を飲み干した。塩気と苦みと甘みが口の中で十六連鎖して、もはや何を食べているのかわからん。
「でも、次は俺が作るからな」
箸を置き「ごちそうさま」と手を合わせるとほたるは、
「……うん」
と俯いて頬を染めていた。
お皿に茶碗を重ねてキッチンへ持っていく。洗い物くらい俺がやるさ。指、ヤケドしたんだろ?
洗い場のシンクには、焦げ跡が痛々しいフライパンやら味噌汁が吹きこぼれた鍋やらが無残な姿を晒していた。
いいさ、洗い場は俺の舞台だ。
「んで、ほたるは何が食べたい?」
ひょいと頭を傾けて聞くと、帰ってきた答えは、
「レタスチャーハン!」
「同じものばっかりだな」
「いいだろ、大好きなんだから」
「へいへい、レタスチャーハンね。必ず作ってやるよ」
「絶対だよ、約束だかんね」
なんかこうしてると、本当に同棲してるみたいだな。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる
春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。
夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。
形のない愛は信じない。
でも、出来立ての肉は信じてしまう。
肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。
これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる