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act.3
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マントライキの前脚が宙を舞い、ドサッと湿地の泥の上に落ちた。
だが、血飛沫はない。
――いや、違う。
「……再生してるのか」
ミカエルが剣を振り払いながら、切り落とした右前脚を見つめる。
僅かに歪む空気、その瞬間、断面が蠢いた。
ちぎれたはずの部位が、ズルリ……ズルリ……と泥の中で動き始める。
まるで生きているかのように、元の位置へ這い戻ろうとしているのだ。
「ちっ……厄介だな」
ミカエルが舌打ちした。
その時――
「ミカエル、避けて!!」
ルカナの声が響く。
ミカエルは即座に飛び退いた。
ズドォン!!
次の瞬間、彼が立っていた場所に、銀光の矢が突き刺さる。
貫かれたマントライキの前脚が、まるで意思を持つかのように痙攣し、そのまま動きを止めた。
「再生能力持ちか……」
ルカナが弓を構えながら分析する。
「いや、それだけじゃない……」
ミカエルは剣を構え直し、わずかに腰を落とす。
次の瞬間――
ズゥン!!
湿地が揺れるほどの衝撃が走った。
マントライキが大地を抉るほどの一撃を叩きつけたのだ。
その巨体からは想像できない速さ。ミカエルは跳躍して攻撃を回避する。
だが、マントライキはさらに追撃を仕掛けてきた。
地を蹴り、跳躍する。
その巨体が空を舞った。
「跳ぶのか……ッ!!」
ミカエルが驚愕する間もなく、巨大な影が迫る。
ドォン!!
湿地に着地した瞬間、衝撃波が周囲に広がり、泥が激しく弾け飛ぶ。
ミカエルはすかさず距離を取る。
「……タフなだけじゃないな。速さもある」
だが、相手がどうであれ――
「それなら……こっちも全力でいくよッ!」
ミカエルの全身から、雷光が弾ける。
バチバチッ!
瞬間、彼の姿が掻き消えた。
マントライキの視界から、ミカエルの姿が消える。
いや、違う。
木々の間を疾駆している。
電光石火の速度で、幹を蹴り、枝を踏み、さらに跳躍する。
雷を纏った影が、闇を裂くように駆け抜ける。
マントライキが振り向く間もなく――
ズババババッ!!!
斜め後方から雷撃が走る。
マントライキの装甲じみた外皮が裂け、裂傷が走る。
巨体が悲鳴を上げ、のたうち回る。
しかし、ミカエルの動きは止まらない。
さらに木々を駆け、上空へと舞い上がる。
シュバッ!!
ルカナの銀光の矢が、マントライキの視界を奪うかのように飛び、狙いを狂わせる。
「ナイス、ルカナ!!」
ミカエルはその隙を逃さない。
雷光を纏い、さらに上空へ。
空を駆けるように、幹を蹴り、枝を踏み、最後の跳躍をかける。
「――終わりだ!!」
雷が剣を伝い、稲妻が迸る。
その一撃は――マントライキの胸部を貫いた。
ズドォン!!
マントライキの巨体が、湿地に崩れ落ちる。
静寂が訪れる。
ミカエルは剣を振り払い、息を整えた。
「……ふーー。とりあえずこんな感じかな」
ミカエルは剣を軽く振り払い、肩を回した。
湿地の空気がまだ戦いの熱を帯びたまま、周囲の狩猟家たちは息を呑んでいた。
沈黙。
そして、瞬く間に広がる歓声。
「すっげえ……」
「あんな化け物を……たった一人で……!」
「やっぱり一流の未探家は違うな……!」
興奮冷めやらぬ様子で、狩猟家たちが口々に賞賛の言葉を漏らした。
「電光石火の剣技……初めて見たぜ」
「あの速度、普通の人間じゃ目で追えねぇぞ……!」
羨望と驚愕の声が広がる中、ミカエルは軽く笑った。
「おいおい、そんな大げさな――」
「まだ生きてるぞ!!」
ユリアスの鋭い叫びが響き渡った。
「――ッ!」
その瞬間――
ギロッ……!
地に沈んでいたはずのマントライキの血走った赤い瞳が、再び光を宿す。
「嘘だろ……!? あれで死なないのか!?」
驚愕する狩猟家たちをよそに、マントライキの巨体がビクンッと痙攣するように動いた。
そして――
ドグン!!
爆発的な勢いで、その巨大な前脚が振り抜かれた。
「――ッ!!」
ミカエルが反応する間もなく、凄まじい前蹴りが彼の胴を直撃する。
ドォッ!!
衝撃が走る。
「ぐっ……!!」
ミカエルの身体が空を舞い――
ズザザザッ!!!
湿地の地面を抉るように吹き飛ばされた。
だが――
「チッ……」
咄嗟に長剣を盾にし、衝撃を逃がしながら受け身を取る。
ドサッ!
膝をつきながらも、なんとか着地。
「くそっ、今のは効いたな……!」
肺の奥が焼けるような痛み。全身を襲う鈍い衝撃。
しかし、ここで倒れるわけにはいかない。
「……ああ、粘着質…。君モテないだろ?」
ミカエルは苦笑しながら、ゆっくりと立ち上がった。
その視線の先――
マントライキは完全に復活していた。そして、さらなる殺気を滾らせていた。
「油断したな、バカめ」
ルカナが駆け寄り、冷たく言い放つ。
だが、ミカエルは口元を緩めたまま、長剣を杖代わりに立ち上がる。
「いやいや、ハンデでしょ。それに僕はルカナさんに罵られたくて未探家やってる節あるし」
「脳まで損傷が酷いらしいな。そこで寝ていろ」
「ご冗談をッ!」
ミカエルは大きく息を吐き、構えを取り直した。ルカナもまた、銀嶺ペガシスを弦にかけ、鋭い視線をマントライキに向ける。
その先――
ドクン……ドクン……
まるで生き物の心臓音のように、空気が震えた。
――白い巨影。
沼の泥の中から、マントライキの巨大な躯体がゆっくりと起き上がる。
全身を覆う、純白の毛並み。
しなやかでありながら、獣の荒々しさを孕む猛虎の遺伝子。月光を思わせる白銀の光が、わずかにその毛並みに反射する。
「……なんか綺麗だよね、あいつ」
「美しさと脅威は別物だ。……気を抜くな」
「もちろん」
マントライキの赤い双眸が、鋭く二人を睨みつける。
次の瞬間――
ズガッ!!!
爆発的な速度で、獣の巨体が跳ねた。
ミカエルとルカナ、二人は同時に地を蹴り、迎え撃つ。
「ユリアスさん! 私たちも加勢しましょう!」
リリゼは迷いなく駆け寄り、ユリアスの隣に立った。だが――
「邪魔せず見ていてください……」
ユリアスの声は、普段の余裕を感じさせる調子ではなかった。笑いの色を一切含まない、冷静で真剣な響き。
「じゃ、邪魔……トホホ……」
リリゼは肩を落とし、思わず地面にしゃがみ込んでしまった。
普段なら軽口で流してくれるのに、今回はガチだ――。
「リリゼ、どんまい」
フィリップが背中を軽く叩く。
「うぅ、私だって役に立てるのに……!」
涙目で拳を握るリリゼを横目に、ユリアスは再び視線を前へ戻した。
マントライキの猛攻、ミカエルとルカナの反撃。W種と二人の未探家が散らす火花は、邪の森を激震させていた。
だが、血飛沫はない。
――いや、違う。
「……再生してるのか」
ミカエルが剣を振り払いながら、切り落とした右前脚を見つめる。
僅かに歪む空気、その瞬間、断面が蠢いた。
ちぎれたはずの部位が、ズルリ……ズルリ……と泥の中で動き始める。
まるで生きているかのように、元の位置へ這い戻ろうとしているのだ。
「ちっ……厄介だな」
ミカエルが舌打ちした。
その時――
「ミカエル、避けて!!」
ルカナの声が響く。
ミカエルは即座に飛び退いた。
ズドォン!!
次の瞬間、彼が立っていた場所に、銀光の矢が突き刺さる。
貫かれたマントライキの前脚が、まるで意思を持つかのように痙攣し、そのまま動きを止めた。
「再生能力持ちか……」
ルカナが弓を構えながら分析する。
「いや、それだけじゃない……」
ミカエルは剣を構え直し、わずかに腰を落とす。
次の瞬間――
ズゥン!!
湿地が揺れるほどの衝撃が走った。
マントライキが大地を抉るほどの一撃を叩きつけたのだ。
その巨体からは想像できない速さ。ミカエルは跳躍して攻撃を回避する。
だが、マントライキはさらに追撃を仕掛けてきた。
地を蹴り、跳躍する。
その巨体が空を舞った。
「跳ぶのか……ッ!!」
ミカエルが驚愕する間もなく、巨大な影が迫る。
ドォン!!
湿地に着地した瞬間、衝撃波が周囲に広がり、泥が激しく弾け飛ぶ。
ミカエルはすかさず距離を取る。
「……タフなだけじゃないな。速さもある」
だが、相手がどうであれ――
「それなら……こっちも全力でいくよッ!」
ミカエルの全身から、雷光が弾ける。
バチバチッ!
瞬間、彼の姿が掻き消えた。
マントライキの視界から、ミカエルの姿が消える。
いや、違う。
木々の間を疾駆している。
電光石火の速度で、幹を蹴り、枝を踏み、さらに跳躍する。
雷を纏った影が、闇を裂くように駆け抜ける。
マントライキが振り向く間もなく――
ズババババッ!!!
斜め後方から雷撃が走る。
マントライキの装甲じみた外皮が裂け、裂傷が走る。
巨体が悲鳴を上げ、のたうち回る。
しかし、ミカエルの動きは止まらない。
さらに木々を駆け、上空へと舞い上がる。
シュバッ!!
ルカナの銀光の矢が、マントライキの視界を奪うかのように飛び、狙いを狂わせる。
「ナイス、ルカナ!!」
ミカエルはその隙を逃さない。
雷光を纏い、さらに上空へ。
空を駆けるように、幹を蹴り、枝を踏み、最後の跳躍をかける。
「――終わりだ!!」
雷が剣を伝い、稲妻が迸る。
その一撃は――マントライキの胸部を貫いた。
ズドォン!!
マントライキの巨体が、湿地に崩れ落ちる。
静寂が訪れる。
ミカエルは剣を振り払い、息を整えた。
「……ふーー。とりあえずこんな感じかな」
ミカエルは剣を軽く振り払い、肩を回した。
湿地の空気がまだ戦いの熱を帯びたまま、周囲の狩猟家たちは息を呑んでいた。
沈黙。
そして、瞬く間に広がる歓声。
「すっげえ……」
「あんな化け物を……たった一人で……!」
「やっぱり一流の未探家は違うな……!」
興奮冷めやらぬ様子で、狩猟家たちが口々に賞賛の言葉を漏らした。
「電光石火の剣技……初めて見たぜ」
「あの速度、普通の人間じゃ目で追えねぇぞ……!」
羨望と驚愕の声が広がる中、ミカエルは軽く笑った。
「おいおい、そんな大げさな――」
「まだ生きてるぞ!!」
ユリアスの鋭い叫びが響き渡った。
「――ッ!」
その瞬間――
ギロッ……!
地に沈んでいたはずのマントライキの血走った赤い瞳が、再び光を宿す。
「嘘だろ……!? あれで死なないのか!?」
驚愕する狩猟家たちをよそに、マントライキの巨体がビクンッと痙攣するように動いた。
そして――
ドグン!!
爆発的な勢いで、その巨大な前脚が振り抜かれた。
「――ッ!!」
ミカエルが反応する間もなく、凄まじい前蹴りが彼の胴を直撃する。
ドォッ!!
衝撃が走る。
「ぐっ……!!」
ミカエルの身体が空を舞い――
ズザザザッ!!!
湿地の地面を抉るように吹き飛ばされた。
だが――
「チッ……」
咄嗟に長剣を盾にし、衝撃を逃がしながら受け身を取る。
ドサッ!
膝をつきながらも、なんとか着地。
「くそっ、今のは効いたな……!」
肺の奥が焼けるような痛み。全身を襲う鈍い衝撃。
しかし、ここで倒れるわけにはいかない。
「……ああ、粘着質…。君モテないだろ?」
ミカエルは苦笑しながら、ゆっくりと立ち上がった。
その視線の先――
マントライキは完全に復活していた。そして、さらなる殺気を滾らせていた。
「油断したな、バカめ」
ルカナが駆け寄り、冷たく言い放つ。
だが、ミカエルは口元を緩めたまま、長剣を杖代わりに立ち上がる。
「いやいや、ハンデでしょ。それに僕はルカナさんに罵られたくて未探家やってる節あるし」
「脳まで損傷が酷いらしいな。そこで寝ていろ」
「ご冗談をッ!」
ミカエルは大きく息を吐き、構えを取り直した。ルカナもまた、銀嶺ペガシスを弦にかけ、鋭い視線をマントライキに向ける。
その先――
ドクン……ドクン……
まるで生き物の心臓音のように、空気が震えた。
――白い巨影。
沼の泥の中から、マントライキの巨大な躯体がゆっくりと起き上がる。
全身を覆う、純白の毛並み。
しなやかでありながら、獣の荒々しさを孕む猛虎の遺伝子。月光を思わせる白銀の光が、わずかにその毛並みに反射する。
「……なんか綺麗だよね、あいつ」
「美しさと脅威は別物だ。……気を抜くな」
「もちろん」
マントライキの赤い双眸が、鋭く二人を睨みつける。
次の瞬間――
ズガッ!!!
爆発的な速度で、獣の巨体が跳ねた。
ミカエルとルカナ、二人は同時に地を蹴り、迎え撃つ。
「ユリアスさん! 私たちも加勢しましょう!」
リリゼは迷いなく駆け寄り、ユリアスの隣に立った。だが――
「邪魔せず見ていてください……」
ユリアスの声は、普段の余裕を感じさせる調子ではなかった。笑いの色を一切含まない、冷静で真剣な響き。
「じゃ、邪魔……トホホ……」
リリゼは肩を落とし、思わず地面にしゃがみ込んでしまった。
普段なら軽口で流してくれるのに、今回はガチだ――。
「リリゼ、どんまい」
フィリップが背中を軽く叩く。
「うぅ、私だって役に立てるのに……!」
涙目で拳を握るリリゼを横目に、ユリアスは再び視線を前へ戻した。
マントライキの猛攻、ミカエルとルカナの反撃。W種と二人の未探家が散らす火花は、邪の森を激震させていた。
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