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第3曲 『はじまりのサイン』前編 act.1
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『ルミナリエ魔術学院行き(特急)』に乗り、ものの数分で学院についた湊。そして、目の前に堂々と聳え立つ学院に気圧されながらも逃げ出さずに向き合う。
ルミナリエ魔術学院…。来るのは倒れて運ばれて以来。色々あったが、あまり良い思い出ではなかった初日。
ーーいや、あれはノーカンだ。悪い夢だ。俺の、立花 光の初登校日は今日だ!今日から俺はつっぱってやる!!
ゴクリッ…。
ーー意気込んでみたはいいものの…俺の教室どこーーーーーっ?!てか何組だよ。ちょっと遅れてくる俺カッケーとか酔いしれようとさえ思ってたのに、もはや、教室すらわかんねー。助けてくれ由貴~。
これが自分の初登校日だと気持ちを切り替えた矢先にこれだ。当たり前と言えば当たり前だが、そもそも柊木 湊に対する理解が浅い光。
湊について知ってることなんて15歳、中等部3年であることくらいなものだ。
「にしても本当に広いよな~~。マジで中高ってより大学じゃん。どこ行ってもビッグベンみてーな建物ばっかだし、こりゃ迷うわ」
その後も湊は学院中をとりあえず歩き回って見ることにしたが、自分の学年やクラスの教室がどこの棟のどの位置にあるのか見当もつかず、見つけられなかった。
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン!!!
「あぁ~タイムオーバーかぁ。まぁ初日からそう上手くいかんよな」
進級試験という不安要素の存在を強く意識し過ぎたせいで根本のことを何も理解していなかったことを痛感する湊。まずは自分のことと、この学院のことを知ることが先決だった。
それでも、今のところ頼れる相手が妹の由貴しかいない現状。これがまずい。由貴と歳が離れているということは、由貴は湊の真の理解者にはなり得ないからだ。家族とは言えど学院のことは別問題。学院の湊については、同学年やそれに準ずる奴に聞くしかない。
「そういえば、湊って学友が居たんだよな…名前は…えぇっと…んんん…」
坊主と…厨二病イケメン…。
自分でも何て酷い覚え方なんだと申し訳なく思うが、第一印象が頭からこびりついて離れないのだ。
でも、きっと現実世界の自分に向けられていた目や印象もこんな感じだったのだろうな。
『インキャ』『ニキビ』『キモオタ』。
「明日は我が身…だよな。やめよ、人のこと悪く思うのは」
ーー金輪際こういうことはやめるんだ。自分がされてきて嫌だったことを人に当てるもんじゃない。今はこんな見た目で、恵まれたものもあって、けどそれは俺の努力した結果じゃない。俺には俺にしか分からない弱い人たちの気持ちが分かるから!!むしろ力を得た今はそれを助けるために使わなきゃな!
ぞろぞろぞろ…。
12時15分、一度チャイムが鳴や否や、多くの黒いローブを纏う生徒がぞろぞろと校庭に出て来ては、各々の好き勝手な場所へ向かっていく。
「12時?!もしかして、昼休みか?まるで昼食だけ食いにきたやつみてーじゃん俺」
ーーそういや、そんなやつ中学に一人は居たよな。給食だけ食べにくるアホが。
「「「えぇ?!あれ柊木君じゃない?」」」
「「「本当だ、湊君来てるじゃん!」」」
ルミナリエ魔術学院は12時15分に昼休み休憩に入り、それと同時に多くの生徒たちが学食や購買、もしくは学院の外の飲食店へと足を運ぶ中、芝生生い茂る校庭のど真ん中、噴水前で突っ立っていた湊に視線が集まる。
「あぁ…何となく想像はついてたけど、やっぱこうなるのか…。」
ーーでも、モテモテってのはやっぱり嬉しいもんだよな。陰でコソコソ悪口言われるよか百万倍嬉しいもんだ。それに何と言っても、ルミナリエは顔面偏差値高過ぎだろー。どこに目移しても可愛い子ばっかじゃん。入学試験に顔審査とかあるわけ?
(行きなよ、ミホ)
(えぇ、でも…)
(あんた今アタックしないでいつアタックするのよ!湊君、進級試験に居なかったんだよ?来月が最後になるかもだよ?ほらっ)
ドンッ!
「あぁ…」
「ん?」
何やら女子の間でヒソヒソと話してるかと思えば、強気な女子に押されるようにして、もう一人の大人しめな浅葱色の重ためなツインテール女生徒が湊の前に現れる。
「あ、あのう…ひ、柊木くん。よかったらお昼ごはん一緒にどうですか?」
ーー昼ごはん?昼食の誘いか…。凄い大胆なんだな、こっちの世界は。あっ…この子に道案内して貰えばいいんでねーの?。それなら…
「えぇっと、うん。こちらこそ」
「えぇ?!本当に?!」
「「「「「「えぇーーー?!?!?!」」」」」」
何やら後ろにいた強気な女生徒も、周りを囲んでいた女生徒も、もはや男までもが湊の選択に驚愕していた。
ーーまた俺なんかミスったか?自分的には最良の選択だと思ったんだけども…。
「あぁ…えぇっと、ど、どこへ、へへ行きます?(汗)」
「大丈夫?なんかすごい汗出てるけど…」
湊に昼食を誘って来た女生徒は、想像していた展開とは違ったため、唐突の湊のOKに頭を混乱させ、ものすごい量の汗を垂れ流す。
「あっ、そういやハンカチあるじゃん!これ良かったら使って」
「へぇ~?!?!?!…ありがとうございます…」
「いえいえ、」
女生徒は、湊から貸してもらったハンカチで額を拭き、目元を隠しながら、ハンカチの裏で猛烈に顔を赤らめ照れていた。
「あの~、ど、どこへ、行きますか?」
ーーいつもの俺なら…『何でもいいよ』とか言うところだが、今回は目的ありきだからな。
「学食ってあるんだっけ?」
「それは、もちろん」
「じゃあ学食に行こうよ」
「はい!」
湊は一人の女生徒に案内してもらい、カレッジ内にある三つの学食のうちの一つ『ビンテージ・バグ』に来ていた。
「かぁーーーーーー???」
湊は、目を丸くし大っぴらげに口を開いて呆れ果てる。
ーー想像とちげーーーーー。これ完全に酒場じゃねーかよ。
湊が連れてこられた『ビンテージ・バグ』は、"古びた虫"をテーマにしたアンティーク風というか、レトロ風というか、木造建築の古びた酒場のような内装で、カウンター奥には樽瓶が横向きに詰め込まれる程には、酒場のイメージが強かった。
「本当にここが学食?」
「あれ?他のところの方が良かったですか?」
「ま、まぁイメージと違ったな~くらいで」
「イメージ…確かに学生が好む場所じゃないかもしれないですね…。でもでもでも!ここのオムライスはすごく美味しいんですよ!」
ーーオムライス?!学食っぽい!。
「ちょっとしょっぱく作られてるんですけどね、逆に甘いものが欲しくなって、コーヒーゼリーやバタービールを頼ませて味を中和させるっていう、一種の緻密な戦略的経営努力が見て取れるんですよ」
「へぇ~~。しょっぱいオムライスにバタービールねぇ…。確かにしょっぱい物食べた時は甘い物食べたり飲みたくなるもんだよな…。じゃあオムライスとバタービール頼もうかな」
「是非!」
注文してから数分後、湊の前に黄色いとろっとろの黄色い卵が乗ったオムライスとオレンジ色の光沢をしたバタービールが運ばれてくる。
「うぉおお?!美味そう!いただきます!」
「いただきます」
パクッ…
「うまぁ!!でも、ここでバタービールを飲むと…?!?!うんめぇーーー!!何だこれ!卵はトロッとしてて、出汁も効いてる…
"出汁か!!しょっぱい理由は、だし巻き玉子をアレンジしたオムレツなんだ。それが下に詰められた甘酸っぱいケチャップ風味のチキンライスとマッチして強めな味を出してるんだ。そこから追い討ちのバタービールの甘さで中和…ただのボッタ店かと思えば、この二つで至高なんだ!!よく考えられてる料理だこれ。"」
「フフッ…凄いですね湊君。ナレーターさんみたいな食事レポートです」
ーーやべ?!。ついいつものくせで独り言のようにマシンガントークをしてしまった。
湊は、無意識に出た食レポを聞かれ、少し照れた表情でオムライスを無言で平らげていく。
その後は、あまり会話を弾ませることができなかった。何故か、それは相手の名前がわからないからだ。湊へは一方的に話をされるも、こっちからは話を振れない。それでも中等部3年目にして相手の名前を知らないってのは、色々と気まずいだろう。それでも…
「そういえば、名前聞いてもいい?」
「え?」
ーーやっぱ、名前を覚えてもらえてないってのは傷つくもんか。やっちゃったかな…
「いや、ごめん。その…」
「いえ、嬉しいです」
はっ?
「こんな陰薄い私、名前なんか覚えてもらえないですよね。でも、こうして改めて声をかけれて、名前まで覚えてもらえる機会があって嬉しいです!私は隣のクラス、中等部3年B組の、浅葱 美穂です」
ーー隣のクラス…ってことは、午後の授業はこの子についていけば教室に到達できるわけだ!。って…B組って中間じゃねーかよ。俺のクラスAとCどっちだよ。
「浅葱さんね。これからはちゃんと覚えるよ。」
「はい…嬉しいです///」
「そういえば浅葱さんはさ、どうして声かけてくれたの?」
「え?あぁ…それは、柊木君が進級しないって噂が流れてて、」
「噂?」
「だって、柊木君、この前の進級試験欠席したじゃないですか?」
ーーえ?もう進級試験って終わってんの?
まったくの大誤算。進級試験が知らぬ間に終わってた。もしかすると、湊が引きこもってた時か。それとも由貴と学院をサボって出かけた時か。学院を無断でサボりすぎたツケが今回って来た感覚。
「だから、柊木君は中等部で卒業しちゃって、別の高学院へ進学するんだって、皆んな言ってました」
「中高一貫で他校へ進学することなんかあるのか?」
「だから驚いてるんじゃないですか!もう一大ニュースですよ。入るのだって難しいのに」
浅葱の話だと、ここルミナリエ魔術学院の中等部入学試験の倍率は、自分たちの代で24倍の246名。つまりは、実際に入学試験を受けた人数は5904名。そして、この3年の間に途中編入として3人を含めた全249名が、現中等部3年生の全生徒数だった。
約6000人規模が参加した入学試験を突破して尚、高等部へ進級せず、他校へ進学する者なんて本当に稀で、数十年に一人居るか居ないかレベルの奇行だと浅葱は言う。
「なるほどね。俺が高等部に進級しないと思われてたのか」
「え?それじゃあ進級するの?」
「まぁ、それはこれからの努力次第だな」
ガシャン。
湊は木テーブルから立ち上がり、この学院に来た真の目的である進級試験対策の勉強に打ち込むため、食事を済ませてすぐに教室へ向かうことにした。
「ごちそうさん。ねぇ、浅葱さん」
「はい!」
「教室どこ?」
「へ?」
ルミナリエ魔術学院…。来るのは倒れて運ばれて以来。色々あったが、あまり良い思い出ではなかった初日。
ーーいや、あれはノーカンだ。悪い夢だ。俺の、立花 光の初登校日は今日だ!今日から俺はつっぱってやる!!
ゴクリッ…。
ーー意気込んでみたはいいものの…俺の教室どこーーーーーっ?!てか何組だよ。ちょっと遅れてくる俺カッケーとか酔いしれようとさえ思ってたのに、もはや、教室すらわかんねー。助けてくれ由貴~。
これが自分の初登校日だと気持ちを切り替えた矢先にこれだ。当たり前と言えば当たり前だが、そもそも柊木 湊に対する理解が浅い光。
湊について知ってることなんて15歳、中等部3年であることくらいなものだ。
「にしても本当に広いよな~~。マジで中高ってより大学じゃん。どこ行ってもビッグベンみてーな建物ばっかだし、こりゃ迷うわ」
その後も湊は学院中をとりあえず歩き回って見ることにしたが、自分の学年やクラスの教室がどこの棟のどの位置にあるのか見当もつかず、見つけられなかった。
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン!!!
「あぁ~タイムオーバーかぁ。まぁ初日からそう上手くいかんよな」
進級試験という不安要素の存在を強く意識し過ぎたせいで根本のことを何も理解していなかったことを痛感する湊。まずは自分のことと、この学院のことを知ることが先決だった。
それでも、今のところ頼れる相手が妹の由貴しかいない現状。これがまずい。由貴と歳が離れているということは、由貴は湊の真の理解者にはなり得ないからだ。家族とは言えど学院のことは別問題。学院の湊については、同学年やそれに準ずる奴に聞くしかない。
「そういえば、湊って学友が居たんだよな…名前は…えぇっと…んんん…」
坊主と…厨二病イケメン…。
自分でも何て酷い覚え方なんだと申し訳なく思うが、第一印象が頭からこびりついて離れないのだ。
でも、きっと現実世界の自分に向けられていた目や印象もこんな感じだったのだろうな。
『インキャ』『ニキビ』『キモオタ』。
「明日は我が身…だよな。やめよ、人のこと悪く思うのは」
ーー金輪際こういうことはやめるんだ。自分がされてきて嫌だったことを人に当てるもんじゃない。今はこんな見た目で、恵まれたものもあって、けどそれは俺の努力した結果じゃない。俺には俺にしか分からない弱い人たちの気持ちが分かるから!!むしろ力を得た今はそれを助けるために使わなきゃな!
ぞろぞろぞろ…。
12時15分、一度チャイムが鳴や否や、多くの黒いローブを纏う生徒がぞろぞろと校庭に出て来ては、各々の好き勝手な場所へ向かっていく。
「12時?!もしかして、昼休みか?まるで昼食だけ食いにきたやつみてーじゃん俺」
ーーそういや、そんなやつ中学に一人は居たよな。給食だけ食べにくるアホが。
「「「えぇ?!あれ柊木君じゃない?」」」
「「「本当だ、湊君来てるじゃん!」」」
ルミナリエ魔術学院は12時15分に昼休み休憩に入り、それと同時に多くの生徒たちが学食や購買、もしくは学院の外の飲食店へと足を運ぶ中、芝生生い茂る校庭のど真ん中、噴水前で突っ立っていた湊に視線が集まる。
「あぁ…何となく想像はついてたけど、やっぱこうなるのか…。」
ーーでも、モテモテってのはやっぱり嬉しいもんだよな。陰でコソコソ悪口言われるよか百万倍嬉しいもんだ。それに何と言っても、ルミナリエは顔面偏差値高過ぎだろー。どこに目移しても可愛い子ばっかじゃん。入学試験に顔審査とかあるわけ?
(行きなよ、ミホ)
(えぇ、でも…)
(あんた今アタックしないでいつアタックするのよ!湊君、進級試験に居なかったんだよ?来月が最後になるかもだよ?ほらっ)
ドンッ!
「あぁ…」
「ん?」
何やら女子の間でヒソヒソと話してるかと思えば、強気な女子に押されるようにして、もう一人の大人しめな浅葱色の重ためなツインテール女生徒が湊の前に現れる。
「あ、あのう…ひ、柊木くん。よかったらお昼ごはん一緒にどうですか?」
ーー昼ごはん?昼食の誘いか…。凄い大胆なんだな、こっちの世界は。あっ…この子に道案内して貰えばいいんでねーの?。それなら…
「えぇっと、うん。こちらこそ」
「えぇ?!本当に?!」
「「「「「「えぇーーー?!?!?!」」」」」」
何やら後ろにいた強気な女生徒も、周りを囲んでいた女生徒も、もはや男までもが湊の選択に驚愕していた。
ーーまた俺なんかミスったか?自分的には最良の選択だと思ったんだけども…。
「あぁ…えぇっと、ど、どこへ、へへ行きます?(汗)」
「大丈夫?なんかすごい汗出てるけど…」
湊に昼食を誘って来た女生徒は、想像していた展開とは違ったため、唐突の湊のOKに頭を混乱させ、ものすごい量の汗を垂れ流す。
「あっ、そういやハンカチあるじゃん!これ良かったら使って」
「へぇ~?!?!?!…ありがとうございます…」
「いえいえ、」
女生徒は、湊から貸してもらったハンカチで額を拭き、目元を隠しながら、ハンカチの裏で猛烈に顔を赤らめ照れていた。
「あの~、ど、どこへ、行きますか?」
ーーいつもの俺なら…『何でもいいよ』とか言うところだが、今回は目的ありきだからな。
「学食ってあるんだっけ?」
「それは、もちろん」
「じゃあ学食に行こうよ」
「はい!」
湊は一人の女生徒に案内してもらい、カレッジ内にある三つの学食のうちの一つ『ビンテージ・バグ』に来ていた。
「かぁーーーーーー???」
湊は、目を丸くし大っぴらげに口を開いて呆れ果てる。
ーー想像とちげーーーーー。これ完全に酒場じゃねーかよ。
湊が連れてこられた『ビンテージ・バグ』は、"古びた虫"をテーマにしたアンティーク風というか、レトロ風というか、木造建築の古びた酒場のような内装で、カウンター奥には樽瓶が横向きに詰め込まれる程には、酒場のイメージが強かった。
「本当にここが学食?」
「あれ?他のところの方が良かったですか?」
「ま、まぁイメージと違ったな~くらいで」
「イメージ…確かに学生が好む場所じゃないかもしれないですね…。でもでもでも!ここのオムライスはすごく美味しいんですよ!」
ーーオムライス?!学食っぽい!。
「ちょっとしょっぱく作られてるんですけどね、逆に甘いものが欲しくなって、コーヒーゼリーやバタービールを頼ませて味を中和させるっていう、一種の緻密な戦略的経営努力が見て取れるんですよ」
「へぇ~~。しょっぱいオムライスにバタービールねぇ…。確かにしょっぱい物食べた時は甘い物食べたり飲みたくなるもんだよな…。じゃあオムライスとバタービール頼もうかな」
「是非!」
注文してから数分後、湊の前に黄色いとろっとろの黄色い卵が乗ったオムライスとオレンジ色の光沢をしたバタービールが運ばれてくる。
「うぉおお?!美味そう!いただきます!」
「いただきます」
パクッ…
「うまぁ!!でも、ここでバタービールを飲むと…?!?!うんめぇーーー!!何だこれ!卵はトロッとしてて、出汁も効いてる…
"出汁か!!しょっぱい理由は、だし巻き玉子をアレンジしたオムレツなんだ。それが下に詰められた甘酸っぱいケチャップ風味のチキンライスとマッチして強めな味を出してるんだ。そこから追い討ちのバタービールの甘さで中和…ただのボッタ店かと思えば、この二つで至高なんだ!!よく考えられてる料理だこれ。"」
「フフッ…凄いですね湊君。ナレーターさんみたいな食事レポートです」
ーーやべ?!。ついいつものくせで独り言のようにマシンガントークをしてしまった。
湊は、無意識に出た食レポを聞かれ、少し照れた表情でオムライスを無言で平らげていく。
その後は、あまり会話を弾ませることができなかった。何故か、それは相手の名前がわからないからだ。湊へは一方的に話をされるも、こっちからは話を振れない。それでも中等部3年目にして相手の名前を知らないってのは、色々と気まずいだろう。それでも…
「そういえば、名前聞いてもいい?」
「え?」
ーーやっぱ、名前を覚えてもらえてないってのは傷つくもんか。やっちゃったかな…
「いや、ごめん。その…」
「いえ、嬉しいです」
はっ?
「こんな陰薄い私、名前なんか覚えてもらえないですよね。でも、こうして改めて声をかけれて、名前まで覚えてもらえる機会があって嬉しいです!私は隣のクラス、中等部3年B組の、浅葱 美穂です」
ーー隣のクラス…ってことは、午後の授業はこの子についていけば教室に到達できるわけだ!。って…B組って中間じゃねーかよ。俺のクラスAとCどっちだよ。
「浅葱さんね。これからはちゃんと覚えるよ。」
「はい…嬉しいです///」
「そういえば浅葱さんはさ、どうして声かけてくれたの?」
「え?あぁ…それは、柊木君が進級しないって噂が流れてて、」
「噂?」
「だって、柊木君、この前の進級試験欠席したじゃないですか?」
ーーえ?もう進級試験って終わってんの?
まったくの大誤算。進級試験が知らぬ間に終わってた。もしかすると、湊が引きこもってた時か。それとも由貴と学院をサボって出かけた時か。学院を無断でサボりすぎたツケが今回って来た感覚。
「だから、柊木君は中等部で卒業しちゃって、別の高学院へ進学するんだって、皆んな言ってました」
「中高一貫で他校へ進学することなんかあるのか?」
「だから驚いてるんじゃないですか!もう一大ニュースですよ。入るのだって難しいのに」
浅葱の話だと、ここルミナリエ魔術学院の中等部入学試験の倍率は、自分たちの代で24倍の246名。つまりは、実際に入学試験を受けた人数は5904名。そして、この3年の間に途中編入として3人を含めた全249名が、現中等部3年生の全生徒数だった。
約6000人規模が参加した入学試験を突破して尚、高等部へ進級せず、他校へ進学する者なんて本当に稀で、数十年に一人居るか居ないかレベルの奇行だと浅葱は言う。
「なるほどね。俺が高等部に進級しないと思われてたのか」
「え?それじゃあ進級するの?」
「まぁ、それはこれからの努力次第だな」
ガシャン。
湊は木テーブルから立ち上がり、この学院に来た真の目的である進級試験対策の勉強に打ち込むため、食事を済ませてすぐに教室へ向かうことにした。
「ごちそうさん。ねぇ、浅葱さん」
「はい!」
「教室どこ?」
「へ?」
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裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
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