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第5曲 『ライラック』 act.1
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「むふふふ~」
「え?どうしたの湊。やけにニヤケてるけど」
「これ見てくれよ」
中等部棟の3年A組の教室では、湊の久しぶりの出席に学友たちが集まる。そのうちの一人、片目を前髪で隠した"黒髪雰囲気厨二病イケメン"の桜井 透が話しかけてきた。
「えぇ?!スマホ?!買ったの?」
「父さんが買ってくれてさ。」
「あれだけ要らないって言ってたのに…」
「結局情報化社会じゃ必須だってことに気づいたんだよ!むふふふ~」
湊は、父・一郎太に買ってもらったスマートフォンの画面を覗き込みながら、まるで数100年も遠い存在かと思ってた昔懐かしこの感動に浸っていた。
「でも良かったよ。これで好きな時に湊と連絡が取れるもんね。はい、俺のQRコード」
「QRコード?」
「あぁ、使ったこと無いんだよね。LAIN開いて、上の人と十字マークのところ押して、」
「こうか…」
「そうそう、それでカメラが出るから、俺の読み取って……そうそう…それで、」
スマホはずっと使ってきた。しかし、LAINの友達追加はしたことがなかった光。何故って、そりゃあスマホが普及してから友達が増えてないからだ。
推し活、ツイッター、ソシャゲー、ちょっとした調べ物のための検索エンジンさえ使えればそれで十分だったスマホ。そもそも現実世界の15年前なんかに私生活で使い込めるほどのスマホなんかなかったから、学生時代にスマホを活用することがなかった。そんな光にとってLAINの友達追加や仕様方法なんかはまだ疎い。
「他に誰がいるの?友達」
「父さんと母さんだけかな…」
「え?本当?!」
ーーこいつ無意識におちょくってんのか!!買ったばかりだからに決まってんだろ!!これから一瞬で増えんだよ!クソが!
「何で由貴ちゃんは居ないの?」
「え?」
ーーあぁ…そっちか。それは…。
「喧嘩ーーーー?!?!あれだけ仲が良かったのに、正直由貴ちゃんはブラコン気質かと思ってただけに、喧嘩なんか起こり得ないと思ってたんだけどなぁ」
「んなこと俺が一番思ってたわ!だから収拾つかなくて困ってんだろ…」
妹・由貴と喧嘩したことを透に相談し、これからのことを考える二人。
「何々スマホ買ったのか湊?!俺もLAIN交換しようぜーー」
「空気読めや!!ハゲ頭!!」
「えぇ?!唐突な悪口?!」
「ハァ…タイミング悪いよ昂…」
妹との仲直りの方法で頭を悩ませていたところへ台風の目のように現れた二人目の学友・坊主頭の寺井 昂に逆ギレする湊と呆れる透。
「えぇ?!由貴ちゃんと喧嘩?!」
ーーデジャブじゃねーかよ。てかうるせーな。
「それやべーじゃん。あんだけ仲良かったのに!」
「それももう聞いたわ!!同じことを!!何べんも何べんも!!」
「痛え痛え~離してくれ~」
何度も聞いた透と全く同じ反応にボリュームを考えない声量の昂に苛立ちを覚えた湊は、昂の頭をグリグリして締め上げる。
「家でも全く話さないの?」
「全くだなぁ~『二度と口もききたくない』んだと」
「うわぁ~だいぶ深刻だね」
「どうすりゃいいんだよ~」
こっちの世界に来て右も左も分からない自分に多くのことを教えてくれた由貴。今その患者に報いなければならない。それでも、口すらきいてくれないこの状況で何ができるのか。
「それも間の悪いことこの上ないぜ~」
「何が?」
「だって湊、今週の土曜はスピリッツオーブの試合だろ?そんで月末は期末、それに進級試験もまだじゃん。やること尽く目で妹に構ってる暇なんかないんでないの?」
「期末?何それ」
「もう~惚けないでよ、学期末試験だよ。3年最後の成績を決める試験。一応進級が決まってても後期中間と合わせて平均以下の成績は進級取り消しで春休みに補修が待ってるらしいよ。まぁ湊の成績なら大丈夫だろうけど」
ーー進級試験だけじゃないの?学期末試験って何だよ。中間?平均?進級取り消し?補修?あぁーーもう意味わかんねーー。勉強勉強勉強!!勉強尽くしで、中学嫌いだーーーーーーーーーーーー。
「結構難しい?」
「何でそんな怯えてるのさ、中間は満点だっただろ?」
ーー中間?!満点?!つまり?!期末でヘマこいたところで…案外楽ちんに行けちゃう感じ?!
「それじゃあ正直赤点取ったって…」
「それは期末の平均点次第でしょ。3学年は進級がかかってるんだ。例年通りじゃ中間なんて比じゃないほどに上がる傾向があるよ」
ーー始めから勉強しとけよアホども~~。最後ばっか本気でやりやがって。どうすりゃいいんだ。一体進級するのに何点必要なんだ。てか、俺の場合は進級試験が終わってない以上、学期末なんかより進級試験を合格して、進級確定させる方が先だよな?!。やること多すぎんだろーーー。もっと夏休みとかに転生させてくれよ、悪魔さんよー。
「まぁそう心配すんなって。俺でも進級できんだからよ」
「え?昂ってどこら辺の成績なの?」
「んーー、下から数えた方が早いんじゃないかな」
「もっとオールブランに包めよ、透~」
「それはシリアルだよ…。この通りさ」
ーーうん、相当アホだってことが分かったよ。なんか見た目通りで安心した。
オブラートに包むさえ勘違いしているような昂が進級試験を合格し、期末もなんて事ないと思えるくらいレベルが低いらしい。
「なんか気負って損した」
「そうだよ。魔導学の天才がビビるほどじゃないさ」
「あぁ、その事なんだけどな…俺、魔法専攻に変えるわ」
「「えぇ?!?!」」
唐突な専攻変更に驚愕する二人。これまでの湊を知っているだけに、魔導の道を諦めて魔法使いの道へ進もうとする湊を全力で説得するも湊の心はもう決まっていた。あの日、ヘレンに魔法を教えてもらって以来、その素晴らしさに魅入られてしまった。今湊の頭の中は、妹のこと以外では、スピリッツオーブのことで埋め尽くされていた。
「え?どうしたの湊。やけにニヤケてるけど」
「これ見てくれよ」
中等部棟の3年A組の教室では、湊の久しぶりの出席に学友たちが集まる。そのうちの一人、片目を前髪で隠した"黒髪雰囲気厨二病イケメン"の桜井 透が話しかけてきた。
「えぇ?!スマホ?!買ったの?」
「父さんが買ってくれてさ。」
「あれだけ要らないって言ってたのに…」
「結局情報化社会じゃ必須だってことに気づいたんだよ!むふふふ~」
湊は、父・一郎太に買ってもらったスマートフォンの画面を覗き込みながら、まるで数100年も遠い存在かと思ってた昔懐かしこの感動に浸っていた。
「でも良かったよ。これで好きな時に湊と連絡が取れるもんね。はい、俺のQRコード」
「QRコード?」
「あぁ、使ったこと無いんだよね。LAIN開いて、上の人と十字マークのところ押して、」
「こうか…」
「そうそう、それでカメラが出るから、俺の読み取って……そうそう…それで、」
スマホはずっと使ってきた。しかし、LAINの友達追加はしたことがなかった光。何故って、そりゃあスマホが普及してから友達が増えてないからだ。
推し活、ツイッター、ソシャゲー、ちょっとした調べ物のための検索エンジンさえ使えればそれで十分だったスマホ。そもそも現実世界の15年前なんかに私生活で使い込めるほどのスマホなんかなかったから、学生時代にスマホを活用することがなかった。そんな光にとってLAINの友達追加や仕様方法なんかはまだ疎い。
「他に誰がいるの?友達」
「父さんと母さんだけかな…」
「え?本当?!」
ーーこいつ無意識におちょくってんのか!!買ったばかりだからに決まってんだろ!!これから一瞬で増えんだよ!クソが!
「何で由貴ちゃんは居ないの?」
「え?」
ーーあぁ…そっちか。それは…。
「喧嘩ーーーー?!?!あれだけ仲が良かったのに、正直由貴ちゃんはブラコン気質かと思ってただけに、喧嘩なんか起こり得ないと思ってたんだけどなぁ」
「んなこと俺が一番思ってたわ!だから収拾つかなくて困ってんだろ…」
妹・由貴と喧嘩したことを透に相談し、これからのことを考える二人。
「何々スマホ買ったのか湊?!俺もLAIN交換しようぜーー」
「空気読めや!!ハゲ頭!!」
「えぇ?!唐突な悪口?!」
「ハァ…タイミング悪いよ昂…」
妹との仲直りの方法で頭を悩ませていたところへ台風の目のように現れた二人目の学友・坊主頭の寺井 昂に逆ギレする湊と呆れる透。
「えぇ?!由貴ちゃんと喧嘩?!」
ーーデジャブじゃねーかよ。てかうるせーな。
「それやべーじゃん。あんだけ仲良かったのに!」
「それももう聞いたわ!!同じことを!!何べんも何べんも!!」
「痛え痛え~離してくれ~」
何度も聞いた透と全く同じ反応にボリュームを考えない声量の昂に苛立ちを覚えた湊は、昂の頭をグリグリして締め上げる。
「家でも全く話さないの?」
「全くだなぁ~『二度と口もききたくない』んだと」
「うわぁ~だいぶ深刻だね」
「どうすりゃいいんだよ~」
こっちの世界に来て右も左も分からない自分に多くのことを教えてくれた由貴。今その患者に報いなければならない。それでも、口すらきいてくれないこの状況で何ができるのか。
「それも間の悪いことこの上ないぜ~」
「何が?」
「だって湊、今週の土曜はスピリッツオーブの試合だろ?そんで月末は期末、それに進級試験もまだじゃん。やること尽く目で妹に構ってる暇なんかないんでないの?」
「期末?何それ」
「もう~惚けないでよ、学期末試験だよ。3年最後の成績を決める試験。一応進級が決まってても後期中間と合わせて平均以下の成績は進級取り消しで春休みに補修が待ってるらしいよ。まぁ湊の成績なら大丈夫だろうけど」
ーー進級試験だけじゃないの?学期末試験って何だよ。中間?平均?進級取り消し?補修?あぁーーもう意味わかんねーー。勉強勉強勉強!!勉強尽くしで、中学嫌いだーーーーーーーーーーーー。
「結構難しい?」
「何でそんな怯えてるのさ、中間は満点だっただろ?」
ーー中間?!満点?!つまり?!期末でヘマこいたところで…案外楽ちんに行けちゃう感じ?!
「それじゃあ正直赤点取ったって…」
「それは期末の平均点次第でしょ。3学年は進級がかかってるんだ。例年通りじゃ中間なんて比じゃないほどに上がる傾向があるよ」
ーー始めから勉強しとけよアホども~~。最後ばっか本気でやりやがって。どうすりゃいいんだ。一体進級するのに何点必要なんだ。てか、俺の場合は進級試験が終わってない以上、学期末なんかより進級試験を合格して、進級確定させる方が先だよな?!。やること多すぎんだろーーー。もっと夏休みとかに転生させてくれよ、悪魔さんよー。
「まぁそう心配すんなって。俺でも進級できんだからよ」
「え?昂ってどこら辺の成績なの?」
「んーー、下から数えた方が早いんじゃないかな」
「もっとオールブランに包めよ、透~」
「それはシリアルだよ…。この通りさ」
ーーうん、相当アホだってことが分かったよ。なんか見た目通りで安心した。
オブラートに包むさえ勘違いしているような昂が進級試験を合格し、期末もなんて事ないと思えるくらいレベルが低いらしい。
「なんか気負って損した」
「そうだよ。魔導学の天才がビビるほどじゃないさ」
「あぁ、その事なんだけどな…俺、魔法専攻に変えるわ」
「「えぇ?!?!」」
唐突な専攻変更に驚愕する二人。これまでの湊を知っているだけに、魔導の道を諦めて魔法使いの道へ進もうとする湊を全力で説得するも湊の心はもう決まっていた。あの日、ヘレンに魔法を教えてもらって以来、その素晴らしさに魅入られてしまった。今湊の頭の中は、妹のこと以外では、スピリッツオーブのことで埋め尽くされていた。
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