魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~

虎柄トラ

文字の大きさ
16 / 63
第一章 正式サービス開始編

第十六話 お気に入りスキル5種類習得

しおりを挟む
 さて……ゴブリンが常套手段を用いるのなら、こちらも常套手段を用いるとしよう。

 僕はショートソードをギュッと握り締める、次に足元に転がっている小石を前方めがけて蹴り飛ばす。

 コンッ!…………ガンッ!!コロン、コロン。 

 静寂の中、小石が前方の壁にぶつかり音が洞窟全体に反響する。その音に反応したゴブリンがガサっと曲がり角から飛び出してきた。

 僕の誘いに釣られ、戦闘態勢もロクに取れず攻撃を仕掛けて来るゴブリンに向かって僕は「ソニックブレイド!!」と叫び、ショートソードを左に薙ぎ払う。

 ショートソードから放たれた斬撃はそのまま衝撃波となり、こん棒を振り上げ襲いかかって来ていたゴブリンの胴体をスパッと真っ二つに斬り裂いた。

 いきなり勢いよく前方に倒れ込んだゴブリンは「ぐあ?」とつまづいた原因を確認するため、後ろを振り返った。そこでゴブリンの視界に入ったものは、見覚えのある腰布を巻いた下半身しかない同族の身体だった。ゴブリンは自分の身に何が起こったのかをその時やっと理解した。

「ぎゃあぁぁぁ!!ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 ゴブリンの絶叫が洞窟中に響き渡る。静けさを取り戻した時、ゴブリンを形成していたもの全てが、神々しい光の粒子となって空に舞い上がり消滅していった。

 このゲームでは倒した魔物は、死体としてその場所に残らずに存在そのものが元々なかったかのように消滅する。そして消滅した場所には一定確率でドロップ品が出現するようになっている。また5階層ごとにいるボスは初回のみ必ずドロップ品を落とすらしい。ただ今回倒したゴブリンは何も落とさなかった。

「それにしてもやっぱソニックブレイドは便利だな。それに前よりも当てやすくなった?」

 ソニックブレイドとは片手剣用のスキルで、自分が振り抜いた剣筋がそのまま衝撃波として対象めがけて、かまいたちのように斬り裂くスキル。僕はこのスキルをクローズドベータテストの時からずっと愛用している。遠くから一方的に攻撃できるって最強じゃないかという理論。それにクールタイムも1分と短いのも高ポイント。

 スキルにはクールタイムというものがあり、これはまたそのスキルを使用するためには、その決められた時間が経過しない限り、再使用が出来ないというもの。このクールタイムには1分、3分、5分、10分と全部で4種類ある。このクールタイムが長いほど、性能がいい強いスキルとなっている。

 スキルは強化する事も出来るが、強化する度に使用するスキルポイントは、どんどん倍になっていく、最初習得するのに1ポイント、次に強化で2ポイント、そこからさらに強化すると4ポイントという感じで上昇していく。そのため最初はスキルを強化せずに、まずは使えるスキルを増やす事が最重要。またスキルは基本的に6種類までセットして使用する事が出来る。ただスキルを再度振りなおす事は出来ないので、習得する時も強化する時も考えてやらないと、あとで大惨事になってしまうので注意が必要。

 それから僕はソニックブレイドを頼りにゴブリンを倒しながら、ボスがいる5階層を目指して歩みを進めた。道中、複数で待ち伏せしているゴブリンとも戦った。また2体以上との戦闘に備えてソニックブレイドだけではさすがに心細い事もあって、新たにレイジングスラッシュというスキルを習得しておいた。

 レイジングスラッシュは剣身になんかもやもやしたオーラをまとわせる事により、火力の底上げとオーラの分少しだけ攻撃範囲を広げてくれる片手剣用のスキル。クールタイムは3分で効果時間は30秒。ソニックブレイドで万が一倒し損ねたゴブリンがいた場合に、このレイジングスラッシュで何とか切り抜ける作戦だ。

 もやもやオーラのおかげで攻撃範囲が広がっているので、ゴブリンの攻撃が届くよりも先に僕のショートソードの切っ先が、やつらの身体に届くという寸法だ。ただ幸運にも僕はまだ一度もその状況に出遭っていないため、レイジングスラッシュはただ単に習得しただけとなっている。

 順調に洞窟を進んで行くなかで僕はちょっと気になる事、違和感を覚えた。それはゴブリンがクローズドベータテストの時よりも、動きがかなり鈍くなっているように感じた事だ。昔のゴブリンだったら、僕が放ったソニックブレイドを躱すやつもいたが、なぜか今回は全て命中している。

 それにゴブリンの行動が手に取るように分かる。どういう角度でショートソードを振り抜けば、ソニックブレイドの一撃で同時にゴブリンを倒す事が出来るのかという事も、自然と何も考えずとも頭に浮かんでくる。

 それからはもうショートソードを『ソニックブレイド』の掛け声に合わせて縦横に振るだけの簡単なお仕事だった。たぶん正式サービスに合わせて魔物の能力でも調整したのだろう。そうじゃなかったら、僕の攻撃がこんなに容易くポンポンとゴブリンに当たるはずがない、そうに決まっている。

 その後も順調にゴブリンをなで斬りしながら洞窟を進み続けた僕は、宿敵が待つ5階層にたどり着いた。ボスが存在する階層は通常のダンジョンのように入り組んだ迷宮ではなくて、4階層に続く階段の前にセーフティエリアがあり、そこから2、3m先に高さ3mほどの巨大な両扉が設置されている。

 その先には階層のボスがプレイヤーが挑みに来るのを静かに待っている。そして晴れてそのボスを倒す事が出来れば、次の階層へ進むことが出来る。僕はまだこの先のボスエリアまでしか見たことがない。ボスエリアには向こう側にこの扉と同じものが設置されている。きっとあれが6階層へ続く扉なのだろう。

 ボスに挑む前にもう一度スキルを確認しておくとしよう。ここに来るまでの間に僕は、階層をクリアする度にひとつずつスキルを習得していった。いま僕が使えるスキルは全部で5種類、これら全てクローズドベータテストでお世話になったスキル。

 そのスキルとはソニックブレイド、レイジングスラッシュ、アサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップの5つ。

 ソニックブレイドとレイジングスラッシュは前述のとおりなので省略。それ以外の3つのスキルについて再確認しておこう。

 僕はその場で腰を下ろしあぐらを組む。

 アサルトラッシュは片手剣または短剣用のスキルで、効果は一定時間武器の攻撃力と攻撃速度が向上するが、防御力が低下するというもの。無強化での効果時間は1分、強化する度に30秒延長される。クールタイムは10分とスキルの中でも長い部類となっている。まぁ残りふたつのスキルもアサルトラッシュと同じ効果時間、クールタイムだったりする。

 ダンシングイリュージョンは短剣用のスキルで、一定時間全ての動作に残影がつくようになる。僕が剣を振ると時間差で同じルートを影が追従する。たったそれだけなのかと思うかもしれないが、この影は実体化している。つまりこのスキルが発動している間は常時2回攻撃が可能となる。

 エアリアルステップも短剣用のスキルで、こっちは一定時間移動速度が向上する。一言でいうと、足が速くなる……ただそれだけのスキル。こちらのスキルもダンシングイリュージョンのように最初は、たったそれだけなのかと思うかもしれない。実際に僕も使用するまではそう思っていた。しかし、このスキルはかなり使い勝手がいい、というかこれがなければクローズドベータテストでは、この扉を拝む事すら出来なかっただろう。

 ただ足が速くなるだけなら使えないスキルとして分類されてしまうかもしれないが、このスキルは正確には移動速度と敏捷性が向上するというもの。自分が思い描いたとおりに身体を動かせるように補助した上で、さらに足も速くなるという一石二鳥なスキル。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...