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41-1 平凡日常
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足場が崩れ落ちて真っ暗闇の中で意識を失った。
次に意識を取り戻した時、俺の目に映ったものは自室の天井だった。そこには一枚のポスターが貼られていた。ゲームの購入特典で付いてきたポスター。マントを羽織り聖剣をかざす勇者。ベッドに入り見上げたら視界に入るように位置を調整した。毎朝毎夜と見ていたはずなのに、とても懐かしく思えた。
暫くの間、そのまま仰向けで呆然と天井を眺めていると、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。その足音は俺の部屋の前でピタリと止まる。次に激しくドアノックが続いたあと、部屋主の断りもなく急に押し入ってきた。
ドア横の点灯ボタンが押されて部屋に天井照明が灯る。勢いそのままにベッドを横切りカーテンを開けて窓を全開にされる。外から朝風とともに雀のさえずりが部屋に流れ込んでくる。
朝だ起きろと目を覚ませと周りが訴えてくる。だが、それでも俺が頑なにベッドから出ずにいると神の鉄槌が下された。
「な~ぎ~! あんたいつまで寝てんのよ! さっさと起きろ、そして朝飯を食え! 招来の嫁を待たせてんじゃねぇよ!!」
女性の怒号が部屋に響き渡る。掛け布団は剥がされベッドから転げ落ちる。
そんな息子を足蹴にしながら母親は一瞥もせずに部屋を出て行った。
俺の母さん嵐のような女性だと思う。本当に父さんはどこに惹かれて母さんと結婚しようと決意したのか。何度か父さんに訊ねてみたことはあったが、毎回のらりくらりと躱されて答えてもらったことはない。
寝ぼけまなこで制服に着替える。スクールバッグを担ぎ、スマホや財布をポケットに入れる。忘れ物がないのを確認したのち、リビングに向かいとそこにはすでに先客がいた。幼馴染はオレンジジュースに舌鼓を打っていた。その隣席では父さんがブラックコーヒーを嗜みながら新聞を広げている。
二人とも朝っぱらから、どんだけ優雅なひと時を満喫してんだよと思いつつ用意された朝食をとる。手早く洗顔や歯磨き等の朝支度を手早く済ませる。リビングに降り立ってから、朝支度を完遂するまでにかかった時間は10分。これがいつもの俺の朝のルーティンだ。
「……いつものルーティン?」
毎日やっているはずなのに、この光景もいつも見ているはずなのに、なぜか違和感を覚えた。
「なにボサっとしてんのよ! 準備完了したんならさっさと学校へ行ってこい!!」
母親にスクールバッグを投げつけられて急かすように家を出た。
通学路も道中で出会う級友らも校門前で眼光鋭い風紀委員や先生。
教室や授業、昼休みに放課後と、これらも全ていつもの知っている光景のはずなのに、なんでこんなに胸がざわつく。何というか居心地が悪い。
幼馴染を家まで送ってから自宅に帰る。帰宅後は夕飯まで自室でゲーム。夕食後は風呂に入ってまた寝るまでゲームにふける。平々凡々な変わり映えの無い日常。幾度となく繰り返してきた。この暮らしを望んでいた。なのに、全然満たされない。あれほど熱中していたゲームが空虚にしか感じない。
「……望んでいた? なんで俺はそんな風に思うんだ?」
ふと浮かんだ疑問を声に出す。すると、どこからともなく俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。
ゲーム機の電源を落とし目を閉じて耳を澄ませる。幻聴かなと思っていたが、どうやらその声は外から聞こえているらしい。
『……な……お……て……』
ゲーム機をベッドに投げ捨て窓を開けて外を見渡してみるが誰もいない。
それと同時に聞こえていたはずの声も聞こえなくなっていた。
「……って誰も居るわけないよな。バカバカしい」
やはり聞き間違いかと思い框に手をかけ窓を閉めようとした時だった。窓の外からスルリと白い手が伸びて俺の腕を掴んできた。振り解こうと必死に頑張ったが、細腕とは思えないほどの豪腕により徒労に終わる。
結局、俺は抗うこと叶わず身投げするようなかたちで窓から飛び降りた。
次に意識を取り戻した時、俺の目に映ったものは自室の天井だった。そこには一枚のポスターが貼られていた。ゲームの購入特典で付いてきたポスター。マントを羽織り聖剣をかざす勇者。ベッドに入り見上げたら視界に入るように位置を調整した。毎朝毎夜と見ていたはずなのに、とても懐かしく思えた。
暫くの間、そのまま仰向けで呆然と天井を眺めていると、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。その足音は俺の部屋の前でピタリと止まる。次に激しくドアノックが続いたあと、部屋主の断りもなく急に押し入ってきた。
ドア横の点灯ボタンが押されて部屋に天井照明が灯る。勢いそのままにベッドを横切りカーテンを開けて窓を全開にされる。外から朝風とともに雀のさえずりが部屋に流れ込んでくる。
朝だ起きろと目を覚ませと周りが訴えてくる。だが、それでも俺が頑なにベッドから出ずにいると神の鉄槌が下された。
「な~ぎ~! あんたいつまで寝てんのよ! さっさと起きろ、そして朝飯を食え! 招来の嫁を待たせてんじゃねぇよ!!」
女性の怒号が部屋に響き渡る。掛け布団は剥がされベッドから転げ落ちる。
そんな息子を足蹴にしながら母親は一瞥もせずに部屋を出て行った。
俺の母さん嵐のような女性だと思う。本当に父さんはどこに惹かれて母さんと結婚しようと決意したのか。何度か父さんに訊ねてみたことはあったが、毎回のらりくらりと躱されて答えてもらったことはない。
寝ぼけまなこで制服に着替える。スクールバッグを担ぎ、スマホや財布をポケットに入れる。忘れ物がないのを確認したのち、リビングに向かいとそこにはすでに先客がいた。幼馴染はオレンジジュースに舌鼓を打っていた。その隣席では父さんがブラックコーヒーを嗜みながら新聞を広げている。
二人とも朝っぱらから、どんだけ優雅なひと時を満喫してんだよと思いつつ用意された朝食をとる。手早く洗顔や歯磨き等の朝支度を手早く済ませる。リビングに降り立ってから、朝支度を完遂するまでにかかった時間は10分。これがいつもの俺の朝のルーティンだ。
「……いつものルーティン?」
毎日やっているはずなのに、この光景もいつも見ているはずなのに、なぜか違和感を覚えた。
「なにボサっとしてんのよ! 準備完了したんならさっさと学校へ行ってこい!!」
母親にスクールバッグを投げつけられて急かすように家を出た。
通学路も道中で出会う級友らも校門前で眼光鋭い風紀委員や先生。
教室や授業、昼休みに放課後と、これらも全ていつもの知っている光景のはずなのに、なんでこんなに胸がざわつく。何というか居心地が悪い。
幼馴染を家まで送ってから自宅に帰る。帰宅後は夕飯まで自室でゲーム。夕食後は風呂に入ってまた寝るまでゲームにふける。平々凡々な変わり映えの無い日常。幾度となく繰り返してきた。この暮らしを望んでいた。なのに、全然満たされない。あれほど熱中していたゲームが空虚にしか感じない。
「……望んでいた? なんで俺はそんな風に思うんだ?」
ふと浮かんだ疑問を声に出す。すると、どこからともなく俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。
ゲーム機の電源を落とし目を閉じて耳を澄ませる。幻聴かなと思っていたが、どうやらその声は外から聞こえているらしい。
『……な……お……て……』
ゲーム機をベッドに投げ捨て窓を開けて外を見渡してみるが誰もいない。
それと同時に聞こえていたはずの声も聞こえなくなっていた。
「……って誰も居るわけないよな。バカバカしい」
やはり聞き間違いかと思い框に手をかけ窓を閉めようとした時だった。窓の外からスルリと白い手が伸びて俺の腕を掴んできた。振り解こうと必死に頑張ったが、細腕とは思えないほどの豪腕により徒労に終わる。
結局、俺は抗うこと叶わず身投げするようなかたちで窓から飛び降りた。
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