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08-3 伝説武具
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最初の1体目に一太刀浴びせただけで、支給品は刃こぼれして使い物にならなくなった。
頑強な身体をもつオーガ相手には標準武具では力不足だったようだ。
支給品のためここにポイ捨てするわけにもいかないので、ひとまずお手軽収納術に収納しておいた。
2体目以降からは自分の得物で屠ることにした。拳という選択肢もあったが、収納ついでにお気に入りの武器が目に飛び込んできたのだから仕方ない。
聖剣を入手するまでの間、気に入ってよく使っていた五振りのうちの一振り。
悪鬼羅刹に絶大な効力があるとされる伝説武具、その名も童子切安綱。
力を入れずとも刀の重さだけで、オーガの身体は切断される。
バターを斬るような軽く滑らかな感触が手に伝わると同時に息絶える。
一瞬の出来事のためオーガは断末魔をあげることなく消滅していく。
数年ぶりに手にする愛刀、その凄まじい切れ味に俺自身も驚きを隠せなかった。
「弱点特攻だからか……?」
背後から1体また1体と血祭りにあげるだけの簡単なお仕事の再開だ。
そんなこんなで20体ほど倒したところで、やっと戦闘音以外の音が耳に届く距離まで近づけた。
ガシャン――。
「あたしはまだまだ元気なんだから! あんたら、あたしを殺したいんじゃないの! 来なさいよこのオーガ風情が!!」
全然元気そうだ――と思いきや、微妙に声が震えている。
相手を威圧するというよりも自分を鼓舞しているように思える。
今までにはなかったあの金属物を落としたような音も気になる。
何やら俺が列に並んでいる間に切羽詰まるようなことが起こったようだ。
(反響の感じから察するに、莉緒までざっと10オーガぐらいの距離か……)
オーガ1体が消滅するのに大体2秒として最低でも20秒はかかる。
速度を上げてもオーガが消えないと邪魔で先に進めない。
もどかしいが俺が今できる最善策はこの作業を淡々と続けることだけだ。
魔物を倒すたびにふと思うことがある。肉体は消滅するのに、なぜそれ以外のものは消えずその場に残留するのかと。
ダンジョンから脱出すれば状況はリセットされるのだが、滞在中は一時保存のような状態が維持される。
先の草原では、色鮮やかな草花はオークにより彼岸花のような艶やかな花を咲かす。
それでもなかなかグロい光景ではあるが、それでもここに比べれば数億倍マシだ。
飛び散った鮮血は即座に染み込み赤黒く大地を染め上げ、湿気の匂いと鉄分の匂いが混ざり合った独特な刺激臭が充満する。
スプラッターに耐性があり、尚且つ場慣れしていない即倒するような過酷な環境だろう。
10、9、8とオーガを順に撫で斬りしていき、残すところ最後の1体となった。
その間、前列のオーガに気づかれることは一度も無かった。暗殺者としてもやっていけそうな気がする。
(これで――しまいだ。さてさて、ここからは言葉遣いに気を付けないと。俺はルーク、ルーク・凪・ランカード。桜川凪ではない、ここにいる俺はルーク。級友として接しないと……)
最前列のオーガに刃を突き刺す。
立ち往生したまま光の粒子となり消えていく、その奥に薄っすらと折れた剣を構える人影が見える。
足元には剣の一部だったものが落ちている。あの時、聞こえた音はどうやらこれのようだ。
体中のあちこちに擦り傷切り傷と血が滲み、制服は泥だらけでボロボロだが、その双眸にはギラリと輝く闘志が灯っている。
あんな震え声を出すからどんだけピンチなのかと焦ったが、思っていたよりも元気そうで安心した。
まあそれでも満身創痍なことには変わりない。ただ本当に莉緒が無事で良かったと心からそう思う。
「遅くなってごめんりっちゃん……りっ、スゥ……彼我結無事で良かった。助けに来たもう安心だ、さあ一緒に皆のところに戻ろう」
「――えっ?」
言葉遣いうんぬんの前に盛大にやらかした。
頑強な身体をもつオーガ相手には標準武具では力不足だったようだ。
支給品のためここにポイ捨てするわけにもいかないので、ひとまずお手軽収納術に収納しておいた。
2体目以降からは自分の得物で屠ることにした。拳という選択肢もあったが、収納ついでにお気に入りの武器が目に飛び込んできたのだから仕方ない。
聖剣を入手するまでの間、気に入ってよく使っていた五振りのうちの一振り。
悪鬼羅刹に絶大な効力があるとされる伝説武具、その名も童子切安綱。
力を入れずとも刀の重さだけで、オーガの身体は切断される。
バターを斬るような軽く滑らかな感触が手に伝わると同時に息絶える。
一瞬の出来事のためオーガは断末魔をあげることなく消滅していく。
数年ぶりに手にする愛刀、その凄まじい切れ味に俺自身も驚きを隠せなかった。
「弱点特攻だからか……?」
背後から1体また1体と血祭りにあげるだけの簡単なお仕事の再開だ。
そんなこんなで20体ほど倒したところで、やっと戦闘音以外の音が耳に届く距離まで近づけた。
ガシャン――。
「あたしはまだまだ元気なんだから! あんたら、あたしを殺したいんじゃないの! 来なさいよこのオーガ風情が!!」
全然元気そうだ――と思いきや、微妙に声が震えている。
相手を威圧するというよりも自分を鼓舞しているように思える。
今までにはなかったあの金属物を落としたような音も気になる。
何やら俺が列に並んでいる間に切羽詰まるようなことが起こったようだ。
(反響の感じから察するに、莉緒までざっと10オーガぐらいの距離か……)
オーガ1体が消滅するのに大体2秒として最低でも20秒はかかる。
速度を上げてもオーガが消えないと邪魔で先に進めない。
もどかしいが俺が今できる最善策はこの作業を淡々と続けることだけだ。
魔物を倒すたびにふと思うことがある。肉体は消滅するのに、なぜそれ以外のものは消えずその場に残留するのかと。
ダンジョンから脱出すれば状況はリセットされるのだが、滞在中は一時保存のような状態が維持される。
先の草原では、色鮮やかな草花はオークにより彼岸花のような艶やかな花を咲かす。
それでもなかなかグロい光景ではあるが、それでもここに比べれば数億倍マシだ。
飛び散った鮮血は即座に染み込み赤黒く大地を染め上げ、湿気の匂いと鉄分の匂いが混ざり合った独特な刺激臭が充満する。
スプラッターに耐性があり、尚且つ場慣れしていない即倒するような過酷な環境だろう。
10、9、8とオーガを順に撫で斬りしていき、残すところ最後の1体となった。
その間、前列のオーガに気づかれることは一度も無かった。暗殺者としてもやっていけそうな気がする。
(これで――しまいだ。さてさて、ここからは言葉遣いに気を付けないと。俺はルーク、ルーク・凪・ランカード。桜川凪ではない、ここにいる俺はルーク。級友として接しないと……)
最前列のオーガに刃を突き刺す。
立ち往生したまま光の粒子となり消えていく、その奥に薄っすらと折れた剣を構える人影が見える。
足元には剣の一部だったものが落ちている。あの時、聞こえた音はどうやらこれのようだ。
体中のあちこちに擦り傷切り傷と血が滲み、制服は泥だらけでボロボロだが、その双眸にはギラリと輝く闘志が灯っている。
あんな震え声を出すからどんだけピンチなのかと焦ったが、思っていたよりも元気そうで安心した。
まあそれでも満身創痍なことには変わりない。ただ本当に莉緒が無事で良かったと心からそう思う。
「遅くなってごめんりっちゃん……りっ、スゥ……彼我結無事で良かった。助けに来たもう安心だ、さあ一緒に皆のところに戻ろう」
「――えっ?」
言葉遣いうんぬんの前に盛大にやらかした。
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