《完結済み》記憶喪失になったボク。お見舞いに来た「恋人」を名乗るギャル姉と「幼なじみ」清楚系妹の秘密を知ってしまったみたいです。

黒羽あかり

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第14話

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「ううっ……」

 目が覚めると、薄暗い場所にいた。少なくとも、学校ではないことは確かだ。鼻を刺す鉄錆てつさびの匂いに包まれたこの場所の光源は、たくさんあるバイクのヘッドライトのみ。周りを見回し、使われなくなった工場だと気付く。聞こえるのは、大人数の男たちが騒ぐ声とエンジンの吹かす音だけ。誰かがタバコを吸っているのか、煙ったい雰囲気が漂う。

まつさん、やめてください! そんなところ弄ったら、俺の買ったばっかのバイク、ぶっ壊れちゃいますよ! かじさんも止めてくださいよ~」

「たく、よく覚えとけ。松は機械音痴なんだよ。でも、バイク好きという矛盾を抱えて、必死に生きてんだ。可哀そうだろ?」

「梶……お前、ちょくちょく俺のことバカにしてんだろ」

「何言ってんだよ。ありのままの真実を、たくに教えてるだけだぜ?」

「おお、そうか。それなら仕方ない……ってなるかボケ!」

 あのメガネと糸目と厳つい男の3人組がバカ騒ぎしている。ということは、ボクはロクでもない場所に来てしまったようだ。

「おっ、目覚ましたみたいだぜ?」

 梶と呼ばれていた糸目の男と目がう。そして、松と呼ばれていた厳つい男がボクに近づいてくる。

「悪いな。総長、ちと遅れてんだ。もうちょっと待ってくれや」

「知りませんよ! 早く帰らせてください!」

「生意気な口聞くんじゃねーよ! 刃美乱ばびろん舐めてんのかっ!」

「ば、バビロン?」

 何だよそれ? でも、どこかで聞いたような…… 

「テメェ、なんも知らねぇのか? 最強であり最恐! 無敗の族『刃美乱』をよぉ!」

「し、知りませんけど……」

「はぁ? だったら覚えとけ!」

 その時、ガラガラと大きな鉄の扉が開く音が聞こえるとともに、バイクを爆音で吹かして、『総長! 17歳のお誕生日おめでとうございます!』と野太い大声が響き渡る。

「な、なんやねんこれ!」

 驚いた様子を見せる、特攻服に身を包んだ総長らしき人物……皆と髪型も制服も同じだが、オラついた様子もなく、真面目そうな雰囲気が漂っている。

「サプラ~イズ総長! プレゼントもあります!」

「はぁ?」

 キョロキョロさせて、総長は戸惑いの表情を見せていた。

「今日っすよね、お誕生日。みんなで考えたんですよ~」

 ニコニコと総長の元に大勢の仲間たちが駆け寄り、喜びの言葉を浴びせる。

「ちょっと待てって。おい、梶! これ企画したの誰やねん?」

「松で~す」

 糸目の男が面白そうに報告する。

「やっぱりか。あのアホ……」

「な、なんか、問題あるんすか?」

 たくと呼ばれていたメガネの男が、きょとんとした表情を浮かべる。

「大ありだ、このボケ! 俺の誕生日は、まだ1ヵ月も先じゃ!」

 その場の空気が一瞬にして凍りつく。さっきまでのお祝いムードは、どこへいったのやら。ここにいる全員に冷や汗が流れる。純粋な気持ちで祝おうとした人物の大失態を、全く関係ない傍観者の立場で眺めるボク……正直、めっちゃ気まずい。

「そもそも、今日は抗争って言うてたやろ。ここで潰しとかなアカンって、ちょくちょくやってたやんけ。まさか、忘れとったんか?」

「でも、総長のお誕生日の方が大事だと――」

「んなことあるかボケ! あとよ、『総長』呼びするなって、何度も言うてるやろ。恥ずいねん! タメなんやから、名前で呼ばんかい」

 総長の言葉に「すいません!」と、ボクを除く全員が頭を下げる。

「……で、コイツ誰やねん。おい、松。こんなヤツおったか?」

 総長がポケットに手を突っ込み、ボクの目の前で座る。顔が近い……雰囲気から感じる威圧感で思わず目を逸らしてしまう。

「こ、コイツは、総長の喧嘩相手にと……」

 学校にいた時の強気な姿勢はどこへやら、厳つい男がビクビクしながら総長の質問に答える。
「松、よぉ聞いとけ。俺はなぁ、強いヤツとの喧嘩が好きやねん。こんなひょろくて弱そうなヤツと相手しても、オモロないやろ。それに……」

 すると、総長が仲間の頭をゆっくり掴んで、

「総長って呼ぶなって言うたやろ!」

 思いっきり頭突きを喰らわす。厳つい男の鼻から血が噴き出し、鈍い音と男のつんざく悲鳴がこだまする。

「いや~怖かったやろ? これで、かんにんかんにん」

「は、はぁ……」

「ほな、怪我せんよう、早う家帰りな」

 か、帰してくれるのか? 予想外のことで拍子抜けする。

「おい、扉開けたれ」

 仲間が返事をした後、ガラガラと重そうな鉄の扉が開く。

 こ、これで、家に帰れる……安心して、出口に向かおうとすると、

「ヤベぇです! 『武陵桃源ぶりょうとうげん』のヤツらです!」
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