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花祭りとは、このカルタナ王国で古くから催されている伝統的な祭りのことである。元々は春の収穫祭だったものが次第に形を変え、今では花を飾るという習慣のみが名残となり、一年に一度盛大に行われている。
この祭りの日だけは貴賎関係なくだれもがこの一年の幸福に感謝を捧げ、食事や鮮やかな花々を楽しむ。
平民たちの街などでは特に盛大に行われており、祭りの間はあちこちに色とりどりの花が飾られ、一気に街全体が華やかになる。出店などが所狭しと立ち並び、夜になるとそこかしこで花びらが舞い上がり、あちこちで笑い声が上がる活気あふれたもので、貴族がお忍びで訪れることもあるという。
そして、なんと言ってもここ最近、若い男女間でまことしとやかに囁かれている噂が注目を浴びていた。
それは花祭りの日に告白をするとその2人は永遠に結ばれるという、何ともありがちな噂。
しかし、もともとこの花祭りにはその日の最後に大切な人に花束を贈るという習慣があったことで、その誰が始めたかもわからない噂はあっという間に広がっていった。
今ではこの祭りの日のたびに花束を差し出して好きな人へと愛を誓う人々があちこちに見られる。
そんな恋する人たちのためのような祭りが1週間後に迫っていたことなどルイの頭からはすっぽりと抜けていた。
エミリーが大胆にもカミルを花祭りに誘ったことにあわあわとするしかないルイはふと彼がどんな顔をしているのかが気になり、カミルのことを恐る恐る見上げた。
そこでルイが目にしたものは、エミリーの誘いに不思議そうに首を傾げるカミルの姿だった。
「花祭り?」
カルタナ王国でどんなに有名でも、当然外から来たカミルがこの祭りのことなど知っているはずもなかった。
そう言えば、カミルはこれまで国交のなかった国から来ていたことなどすっかりと頭から抜け落ちていたルイはホッとしたような、何だか残念なような複雑な気持ちとなった。昔は純粋に国が活気付く年に一度のお祭りであるという認識であったが、今では前述の通り恋のお祭りとして認識している人々も多い。巷では花祭りに誘い、その誘いに応じることそれ自体が告白のように扱われることもあるという。カミルがこのことを知らなくてよかったと思う反面、どこか知っていて欲しかったと思っている自分もいることにルイは少し戸惑う。しかし、それよりもカミルへと花祭りの説明をしていたエミリーが、花束を差し出して愛を誓うとその2人は永遠に結ばれるという今ではすっかり馴染んでしまった迷信まで話しだそうとしていたのを慌てて止めることに夢中になってしまった。
「へえ、この国にはそんな祭りがあるんだな。」
一通り祭りの説明を聞いたカミルが、他国の催し物に興味を示したように目を輝かせる。カミルが目を輝かせたことを見逃しはしなかった強かな令嬢は、これ以上変なことを言うなというルイの視線などものともせず力強く返事を返した。
「ええ!ルイがカミル様とぜひ行きたいと!」
「ちょ、エミリー!」
「ルイが?」
エミリーのその言葉に少しだけ考えるようなそぶりを見せるカミルの様子に、ルイは背中に変な汗をかきながら何とか花祭りへと興味を向けないように誘導できないかと頭を巡らせる。
何せ花祭り当日はその名の通り色とりどりの花々が飾られ大層綺麗なものではあるが、それと同時に恋に浮かれた何ともピンクな雰囲気がそこら中に漂っている。
もじもじと恥ずかしそうに隣に立つ人を見る恋に染まった潤んだ瞳に、想いが通い合ってしっかりと手を握り締めあった2人が寄り添いながら嬉しそうに歩く姿。そんな光景で街は溢れかえる。
もし、万が一カミルがその光景を見てしまったら、きっと察しのいい彼は気づいてしまうだろう。これが祭りという名を冠した恋愛成就の場であると。そして、そのことに気づいてしまったカミルは次にこう考えるはずだ。
そんな祭りに一緒に行きたいと思ったルイはもしかしてオレのことが好きなのか?
「行くか、花祭り。」
「カミル!」
そこまで考えたと同時にそう答えたカミルにルイは慌てたように彼の名前を呼ぶ。これまでにないほど焦ったようなルイにカミルは不思議そうな顔をしていたが、ルイは何と説明したら良いものかが全く思い付かずあーだとかうーだとか言い淀んでしまう。
「……何でもない。」
「でしたら、決まりですわね!」
結局何も説得の言葉を言うことができなかったルイは力無く降参した。
そんなルイの姿など目に入らないとばかりに嬉しそうに話すエミリーをルイはつい恨みがましく見つめてしまった。
このままではルイの気持ちがカミルにバレてしまうとぐるぐると考えるルイは黙り込んでしまった彼を心配そうに見るカミルに気付かず、当日までにどうにかしなければと言う考えで頭がいっぱいであった。
あ、いや、別にカミルのことが好きだとかそんな……っ、そんなふうに見たことはないからね!?
誰に言うわけでもない負け惜しみのようなものをワーワーと心の中で喚いていたルイは気づかなかった。エミリーが何かを企むようにニヤリと笑みを浮かべていることを。
そして悶々とすること1週間、花祭りを楽しみにしている友人に水を刺すようなことを言う度胸など持ち合わせていなかったルイは、何の対策もなく祭りの当日を迎えていた。
待ち合わせ場所としてエミリーから言われた場所まで向かう最中に何とか絞り出した考えはとにかくカミルにこの花祭りの裏の部分を見せないことだった。幸いなことに、今日はルイとカミルの2人きりではなく、いつもの三人で花祭りへと行くことになっている。こうなったら恥も外聞も捨て去ってエミリーに何とかカミルの気を逸らしてもらうことを頼むしかないと気合を入れたルイはそのわずか数分後に崩れ落ちることになる。
待ち合わせ場所に着いたルイが目にしたものはやけに周りを人に囲まれたカミルであった。
思わず立ち止まってしまったルイだが、人に囲まれてもなお抜きん出ているその体格の彼はルイを見つけるとそれまで押し黙ってむっつりとしていた顔をぱっと明るくさせたかと思うとずんずんとこちらへ近づいてきた。
いつもは下ろしている前髪を軽くかきあげていたカミルは普段は隠れがちなその黄金の瞳がよく見えていて、何だかルイはどきりと心臓が跳ねてしまった。
何だか真っ直ぐカミルを見ていられなくなったルイはきょろきょろと視線を彷徨わせながらも、何とか声を振り絞る。
「ご、ごめんね、カミル!待たせちゃった?」
「いや、オレも今来たところだ。それにしてもこの祭りでは他人に花を贈るのが一般的なのか?急に囲まれて花を手渡されそうになったんだが……何か意味でもあるのか?」
そう言って煩わしそうにチラリと視線を後方へと向けたカミルに慌てたのはルイである。
どうやらその輝かんばかりの美貌を曝け出していたカミルに釣られた人々がほんの少しの望みにかけて彼へと花を渡そうとしていたらしい。
沢山の花を束ねたものであれば永遠の愛を誓うものであるが、一輪の花であればそれは、今日だけでもあなたからの愛をもらいたいと言う意味になる。詰まるところ、一夜の相手としての誘いである。
知識として聞き及んではいたが、実際にそんなことが起こっている場面など見たこともないルイは耐性がなく、頬がじんわりと熱くなっていくのを感じた。
しかし、そこで顔を赤くして狼狽えていてはカミルにこの花祭りのことがバレてしまうと気づいたルイは咄嗟にこれまで培ってきた表情筋を集結させ、すんっとした顔を作る。
「さあ?僕もよく分からないかな?あ、でも時折花を無理やり売りつけられることもあるって聞いたから、あんまり受け取らないほうがいいかも。それより、エミリーはまだかな?彼女が時間に遅れるなんて考えにくいけど……。」
若干早口になってしまった感は否めないが、無理やり話を逸らしたルイはにっこりと微笑む。
顔をほんのりと赤くしたかと思えば、全てを悟ったような慈愛の笑みを見せたルイにカミルは訝しげな視線を向けたが、大概ルイに甘い彼はまあいいかと明らかに何かを誤魔化そうとしているルイを見逃した。
「エミリーならさっきまでオレといたんだが、用事があるとかで家に帰ったぞ。」
「えっ?ど、どう言うこと?」
「いや、オレより先にエミリーの方がここに着いていたんだが、オレが着くなり急用ができたとか言ってバタバタと帰っちまって……オレにも何が何だか。」
そう言って困ったように眉を下げるカミルに釣られるようにしてルイの眉も下がっていく。
困惑してしまい、かと言ってこの場所から本当に離れていいのかも判断できずにいたが、ふと思い出したようにカミルがゴソゴソとポケットから何かを取り出した。
小さなメモ用紙のように見えるそれをカミルは自分で見ることはせずにルイへと手渡す。
思わず反射的に受け取ってしまった後で一体何の紙かわからなかったルイはきょとんとカミルを見上げた。
「絶対にルイ以外に見せたらダメだと言われてしまい込んでいたのを忘れるところだった。帰り際にルイに渡してくれとエミリーから頼まれていたものだ。もしかしたら、何か書いてあるかもしれないから、読んでくれるか?」
「エミリーから?何だろう?」
そう言ってペラリと紙を広げてそこに書かれていた文字を読んだルイは思わず叫び出しそうになった声をすんでのところで引っ込める。
それでもなお抑えきれなかった感情が体に現れたかのようにブルブルとメモ用紙を握る手が震える。
「ルイ?」
目を見開き、プルプルと全身を震えさせ始めたルイに不思議そうに何が書かれていたかを尋ねるカミルに何ともか細い声でルイは返事をした。
「何でもない……今日は2人でお祭りに行こっか。」
「あ、ああ、分かった。」
神妙な顔でそう告げるルイにカミルも何となく真剣に頷き返してから、2人はどこかぎこちない動作で歩き出した。
ぎゅうとしわくちゃになるほど握りしめられたエミリーからのメモにはこう書かれていた。
"あなたが花束を渡すことができるように、わたくしは今日はご遠慮させていただきます。幸運を祈りますわ!"
この祭りの日だけは貴賎関係なくだれもがこの一年の幸福に感謝を捧げ、食事や鮮やかな花々を楽しむ。
平民たちの街などでは特に盛大に行われており、祭りの間はあちこちに色とりどりの花が飾られ、一気に街全体が華やかになる。出店などが所狭しと立ち並び、夜になるとそこかしこで花びらが舞い上がり、あちこちで笑い声が上がる活気あふれたもので、貴族がお忍びで訪れることもあるという。
そして、なんと言ってもここ最近、若い男女間でまことしとやかに囁かれている噂が注目を浴びていた。
それは花祭りの日に告白をするとその2人は永遠に結ばれるという、何ともありがちな噂。
しかし、もともとこの花祭りにはその日の最後に大切な人に花束を贈るという習慣があったことで、その誰が始めたかもわからない噂はあっという間に広がっていった。
今ではこの祭りの日のたびに花束を差し出して好きな人へと愛を誓う人々があちこちに見られる。
そんな恋する人たちのためのような祭りが1週間後に迫っていたことなどルイの頭からはすっぽりと抜けていた。
エミリーが大胆にもカミルを花祭りに誘ったことにあわあわとするしかないルイはふと彼がどんな顔をしているのかが気になり、カミルのことを恐る恐る見上げた。
そこでルイが目にしたものは、エミリーの誘いに不思議そうに首を傾げるカミルの姿だった。
「花祭り?」
カルタナ王国でどんなに有名でも、当然外から来たカミルがこの祭りのことなど知っているはずもなかった。
そう言えば、カミルはこれまで国交のなかった国から来ていたことなどすっかりと頭から抜け落ちていたルイはホッとしたような、何だか残念なような複雑な気持ちとなった。昔は純粋に国が活気付く年に一度のお祭りであるという認識であったが、今では前述の通り恋のお祭りとして認識している人々も多い。巷では花祭りに誘い、その誘いに応じることそれ自体が告白のように扱われることもあるという。カミルがこのことを知らなくてよかったと思う反面、どこか知っていて欲しかったと思っている自分もいることにルイは少し戸惑う。しかし、それよりもカミルへと花祭りの説明をしていたエミリーが、花束を差し出して愛を誓うとその2人は永遠に結ばれるという今ではすっかり馴染んでしまった迷信まで話しだそうとしていたのを慌てて止めることに夢中になってしまった。
「へえ、この国にはそんな祭りがあるんだな。」
一通り祭りの説明を聞いたカミルが、他国の催し物に興味を示したように目を輝かせる。カミルが目を輝かせたことを見逃しはしなかった強かな令嬢は、これ以上変なことを言うなというルイの視線などものともせず力強く返事を返した。
「ええ!ルイがカミル様とぜひ行きたいと!」
「ちょ、エミリー!」
「ルイが?」
エミリーのその言葉に少しだけ考えるようなそぶりを見せるカミルの様子に、ルイは背中に変な汗をかきながら何とか花祭りへと興味を向けないように誘導できないかと頭を巡らせる。
何せ花祭り当日はその名の通り色とりどりの花々が飾られ大層綺麗なものではあるが、それと同時に恋に浮かれた何ともピンクな雰囲気がそこら中に漂っている。
もじもじと恥ずかしそうに隣に立つ人を見る恋に染まった潤んだ瞳に、想いが通い合ってしっかりと手を握り締めあった2人が寄り添いながら嬉しそうに歩く姿。そんな光景で街は溢れかえる。
もし、万が一カミルがその光景を見てしまったら、きっと察しのいい彼は気づいてしまうだろう。これが祭りという名を冠した恋愛成就の場であると。そして、そのことに気づいてしまったカミルは次にこう考えるはずだ。
そんな祭りに一緒に行きたいと思ったルイはもしかしてオレのことが好きなのか?
「行くか、花祭り。」
「カミル!」
そこまで考えたと同時にそう答えたカミルにルイは慌てたように彼の名前を呼ぶ。これまでにないほど焦ったようなルイにカミルは不思議そうな顔をしていたが、ルイは何と説明したら良いものかが全く思い付かずあーだとかうーだとか言い淀んでしまう。
「……何でもない。」
「でしたら、決まりですわね!」
結局何も説得の言葉を言うことができなかったルイは力無く降参した。
そんなルイの姿など目に入らないとばかりに嬉しそうに話すエミリーをルイはつい恨みがましく見つめてしまった。
このままではルイの気持ちがカミルにバレてしまうとぐるぐると考えるルイは黙り込んでしまった彼を心配そうに見るカミルに気付かず、当日までにどうにかしなければと言う考えで頭がいっぱいであった。
あ、いや、別にカミルのことが好きだとかそんな……っ、そんなふうに見たことはないからね!?
誰に言うわけでもない負け惜しみのようなものをワーワーと心の中で喚いていたルイは気づかなかった。エミリーが何かを企むようにニヤリと笑みを浮かべていることを。
そして悶々とすること1週間、花祭りを楽しみにしている友人に水を刺すようなことを言う度胸など持ち合わせていなかったルイは、何の対策もなく祭りの当日を迎えていた。
待ち合わせ場所としてエミリーから言われた場所まで向かう最中に何とか絞り出した考えはとにかくカミルにこの花祭りの裏の部分を見せないことだった。幸いなことに、今日はルイとカミルの2人きりではなく、いつもの三人で花祭りへと行くことになっている。こうなったら恥も外聞も捨て去ってエミリーに何とかカミルの気を逸らしてもらうことを頼むしかないと気合を入れたルイはそのわずか数分後に崩れ落ちることになる。
待ち合わせ場所に着いたルイが目にしたものはやけに周りを人に囲まれたカミルであった。
思わず立ち止まってしまったルイだが、人に囲まれてもなお抜きん出ているその体格の彼はルイを見つけるとそれまで押し黙ってむっつりとしていた顔をぱっと明るくさせたかと思うとずんずんとこちらへ近づいてきた。
いつもは下ろしている前髪を軽くかきあげていたカミルは普段は隠れがちなその黄金の瞳がよく見えていて、何だかルイはどきりと心臓が跳ねてしまった。
何だか真っ直ぐカミルを見ていられなくなったルイはきょろきょろと視線を彷徨わせながらも、何とか声を振り絞る。
「ご、ごめんね、カミル!待たせちゃった?」
「いや、オレも今来たところだ。それにしてもこの祭りでは他人に花を贈るのが一般的なのか?急に囲まれて花を手渡されそうになったんだが……何か意味でもあるのか?」
そう言って煩わしそうにチラリと視線を後方へと向けたカミルに慌てたのはルイである。
どうやらその輝かんばかりの美貌を曝け出していたカミルに釣られた人々がほんの少しの望みにかけて彼へと花を渡そうとしていたらしい。
沢山の花を束ねたものであれば永遠の愛を誓うものであるが、一輪の花であればそれは、今日だけでもあなたからの愛をもらいたいと言う意味になる。詰まるところ、一夜の相手としての誘いである。
知識として聞き及んではいたが、実際にそんなことが起こっている場面など見たこともないルイは耐性がなく、頬がじんわりと熱くなっていくのを感じた。
しかし、そこで顔を赤くして狼狽えていてはカミルにこの花祭りのことがバレてしまうと気づいたルイは咄嗟にこれまで培ってきた表情筋を集結させ、すんっとした顔を作る。
「さあ?僕もよく分からないかな?あ、でも時折花を無理やり売りつけられることもあるって聞いたから、あんまり受け取らないほうがいいかも。それより、エミリーはまだかな?彼女が時間に遅れるなんて考えにくいけど……。」
若干早口になってしまった感は否めないが、無理やり話を逸らしたルイはにっこりと微笑む。
顔をほんのりと赤くしたかと思えば、全てを悟ったような慈愛の笑みを見せたルイにカミルは訝しげな視線を向けたが、大概ルイに甘い彼はまあいいかと明らかに何かを誤魔化そうとしているルイを見逃した。
「エミリーならさっきまでオレといたんだが、用事があるとかで家に帰ったぞ。」
「えっ?ど、どう言うこと?」
「いや、オレより先にエミリーの方がここに着いていたんだが、オレが着くなり急用ができたとか言ってバタバタと帰っちまって……オレにも何が何だか。」
そう言って困ったように眉を下げるカミルに釣られるようにしてルイの眉も下がっていく。
困惑してしまい、かと言ってこの場所から本当に離れていいのかも判断できずにいたが、ふと思い出したようにカミルがゴソゴソとポケットから何かを取り出した。
小さなメモ用紙のように見えるそれをカミルは自分で見ることはせずにルイへと手渡す。
思わず反射的に受け取ってしまった後で一体何の紙かわからなかったルイはきょとんとカミルを見上げた。
「絶対にルイ以外に見せたらダメだと言われてしまい込んでいたのを忘れるところだった。帰り際にルイに渡してくれとエミリーから頼まれていたものだ。もしかしたら、何か書いてあるかもしれないから、読んでくれるか?」
「エミリーから?何だろう?」
そう言ってペラリと紙を広げてそこに書かれていた文字を読んだルイは思わず叫び出しそうになった声をすんでのところで引っ込める。
それでもなお抑えきれなかった感情が体に現れたかのようにブルブルとメモ用紙を握る手が震える。
「ルイ?」
目を見開き、プルプルと全身を震えさせ始めたルイに不思議そうに何が書かれていたかを尋ねるカミルに何ともか細い声でルイは返事をした。
「何でもない……今日は2人でお祭りに行こっか。」
「あ、ああ、分かった。」
神妙な顔でそう告げるルイにカミルも何となく真剣に頷き返してから、2人はどこかぎこちない動作で歩き出した。
ぎゅうとしわくちゃになるほど握りしめられたエミリーからのメモにはこう書かれていた。
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