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第2話:「副団長、なぜか毎日厨房に来る」
しおりを挟む「おかわり、いいか?」
そう言って、銀髪の副団長――レオンが、無言で器を差し出してきたのは3回目だった。
「……副団長。3杯目はさすがに食べすぎじゃないです?」
「構わん。こんなに胃に優しい食事、生まれて初めてなんだ」
そりゃそうだろう。
この世界、マジで全部が「焦げ」か「生焼け」か「苦い何か」しかない。
「……それに」
レオンはちらりと目線を落として、
まるでなにかを隠すように、少しだけ口元を緩めた。
「……お前の作る飯は、……温かいんだ。味だけじゃなく」
「……え?」
「なんでもない」
その日から、なぜか厨房に出入りする騎士が増えた。
まず来たのは、筋肉ゴリゴリの第一小隊長・カイ。
「おい新人!なんか肉食わせろ!ガツンと来るやつな!!」
とにかく元気だが、実はめちゃくちゃ甘党で、
「甘辛い角煮」にメロメロになってた。
「……うめぇ……なんだこれ、結婚してくれ……」
「味に惚れるのやめてください」
「いや……俺はたぶん、お前に惚れてる……」
「!?!?」
次に来たのは、毒舌眼鏡の軍師タイプ、シリル。
「ふうん……。君が例の“料理人”か」
「は、はい……なにかご希望あります?」
「僕に合わせて料理を作れるか試してみよう。
僕は胃が弱い。刺激物は避けて、あと……冷めても美味いものを。
……ああ、あと、僕は猫舌だ」
「注文多ッ」
「頼んだよ、七瀬ハジメくん」
彼らの胃袋を掴むたびに、
なぜか――俺を見る目が、少しずつ変わっていく。
優しく、穏やかで、
だけど確かに、“男”として見られている気がする。
「七瀬。お前、モテてるの気づいてるか?」
厨房の片隅で、洗い物を手伝ってくれてた厨房の少年・ルカが、ぽつりとつぶやいた。
「へっ?」
「副団長、いつも無口なのに、お前とだけはよく喋るし、
カイ隊長は一日三回は厨房に来るし、
シリルさんはこの間、お前のエプロン……持って帰ったよ」
「持ち帰った!?え!?え!?」
「みんな……たぶん、お前のこと“美味しそう”って思ってるよ。
――料理じゃなくて、本人が、ね」
「…………」
俺の異世界生活、
思ってたのと違う方向で、なんか危ない。
でも――
ちょっと、悪くないかもしれない。
そう思ったのは、
レオン副団長が、さりげなく俺の好物を厨房に補充しておいてくれたのに気づいたときだった。
「……まったく、罪な料理人だな」
レオンの背中が、そっと呟いた。
胃袋を掴んだら、心までついてきた。
異世界でモテ期到来中――俺、どうなるんだ!?
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