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第1話:「はじめまして、世界一マズイごはん」
しおりを挟む目を覚ましたとき、俺は知らない天井を見ていた。
見慣れない石造りの天井。どこかクラシックな香りのする寝具。
それなのに、耳元に響いたのは――
「おぉぉおいっっ!また焦げてるじゃないかぁぁあああ!」
……絶叫。
思わず飛び起きて、目の前に広がるのは、
異世界によくある“城の厨房”みたいな場所。そして、
「騎士団の朝食、これで出せってのか!?くっさ!煙っ!誰か火を止めろー!」
「副団長がまた怒ってる……」
「昨日の焼き粥よりはマシじゃね……?」
なんか知らないけど、異世界の料理人たちが地獄の惨状を前に絶望していた。
……これ、もしや俺、転生した?
しかもよりによって、料理がマズい世界に?
「お前、どこから来た?」
少しして厨房を仕切る騎士が俺に声をかけてきた。
銀髪で涼しげな目元、騎士の鎧がいやに似合う。イケメン。
こういう人が副団長とかなんだろうな。
「あ……あの、俺、七瀬ハジメっていいます。
気づいたらここにいて、でもなんか……料理の香りが耐えられなくて」
「なるほど。“迷い人”か」
「まよい……?」
「異界からの流れ者。たまに来る。
……で、お前、料理が得意?」
俺はこくんとうなずいた。
だって――匂いの時点で、ここの飯、終わってる。
「ちょっと包丁、貸してもらってもいいですか」
「……いいだろう。見せてみろ、“異界の味”ってやつを」
そう言われた瞬間、
なぜか厨房中がぴたりと静まり返った。
どれだけマズい世界なんだ、ここ。
15分後――
騎士たちが集まっていた。
俺がつくったのは、シンプルな“卵粥”。
コンソメと塩をきかせ、仕上げにオリーブオイルと香草をひとつまみ。
お腹に優しい、でもちゃんとコクがある。
一口食べた瞬間――
「…………うま」
「な、なんだこの……!なめらかで、優しくて……!」
「はぁっ……なんか、食っただけで……癒される……」
一斉にため息が漏れる。
そして――さっきの副団長らしきイケメンが、そっと俺を見た。
「……お前、これからもこの厨房に立て。
いや、立ってくれ。頼む」
「へ……?」
「――この味は、世界を救う」
異世界に転生して、
最初に落としたのは、モンスターでも魔王でもなく――
騎士たちの胃袋と、ついでに心だった。
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