《完結済》獣人王国の四男に生まれましたが、何故か人間でめちゃくちゃ愛されてます!?

MITARASI_

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第三章

第25話 夜明けの沈黙

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 鳥の声が、遠くで聞こえた。
 風の音が変わっている。もう、嵐は去ったのだとわかる。

 リクはゆっくりとまぶたを開けた。
 焚き火はすでに消え、薄明の光が小屋の隙間から差し込んでいる。
 木の床の上、まだ微かに残る体温。
 腕の中には――シリウスの温もりがあった。

 銀の髪が頬に触れる。
 呼吸が穏やかで、まるで何事もなかったかのように眠っている。
 けれど、昨夜の記憶は確かにここにある。
 焚き火の灯り、雨の音、唇の熱、そして――胸の鼓動。

 (夢じゃ、ないよね)

 リクは静かに体を起こした。
 動けば、この穏やかな時間が壊れてしまう気がした。
 でも、そのまま抱かれている勇気もなかった。

 シリウスがわずかに身じろぎをした。
 リクはとっさに目をそらす。
 「……お目覚めですか、王子」
 いつもの落ち着いた声。
 まるで昨夜のことなど何もなかったように。

 「……うん。おはよう」
 「体は冷えていませんか」
 「大丈夫。ありがとう」

 ――そう。
 いつもと同じ。
 それが少しだけ、胸に刺さった。

 沈黙が落ちる。
 雨上がりの匂いが、静かに小屋を満たしていた。
 リクは何か言おうとして、言葉を失う。
 “あれは間違いじゃない”と言いたいのに、
 口にすれば、すべてが壊れそうで。

 シリウスが立ち上がり、扉の外を確認した。
 「道はもう通れます。……お帰りの準備を」
 「うん」
 短い返事しかできなかった。

 外に出ると、森は濡れた光で包まれていた。
 雨粒が枝から落ち、空気が澄んでいる。
 遠くに見える山の向こうへ、雲が流れていく。

 馬車が壊れていたため、徒歩で麓まで下りることになった。
 道すがら、二人の間に言葉はなかった。
 けれど、時折ふとした拍子に手が触れるたび、
 その沈黙の中に、昨夜の温度が確かに残っていた。
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