8 / 17
二学期
しおりを挟む
「はぁ、どうしよう」
夏休みを迎える前は気分が沈んでいた。
そして夏休みが終わり、俺は別の事で悩んでいた。
当然、レイラの幼馴染みで恋人候補のレオンハルトの事だ。
毎日会う事はない、俺の家には元婚約者の姉がいる。
姉はレオンハルトをレイラに取られたと思い込み、俺にレイラを襲わせてレオンハルトに見せつけるという最悪な作戦を思いついた。
俺は安全に二人を密室空間から逃すために協力するフリをした。
レイラは無事に何事もなく逃す事は出来た。
しかし、俺は同じようにレオンハルトを逃がそうとしてレオンハルトに襲われた。
意味が分からない。
しかもレオンハルトのが俺の中に入っていた。
友達になりたいだけなのに、なんでレオンハルトはゲームと違うんだ?
そもそも俺と友達というのが可笑しいからなのかな。
姉には作戦失敗を責められたが、レオンハルトの事は言えない。
そんな事を言うものなら、姉の敵は俺にならないか?
街の外でレオンハルトに会うと、物陰に連れ込まれてキスをされる。
まるで、長い時間恋人に会えなかった寂しさを埋めるようだ。
後ろは壁で、前はレオンハルトが俺の姿を隠しているから他人に見られる心配はない。
でも俺の感情はすり減っているように感じた。
「早く仕事に戻りなよ」と言うと「照れているのか?」と嬉しそうに言う。
何を言ってもダメだ。
友達という単語を言うと怖い顔になるから何も言えない。
俺は夏休みが終わるまで、家の中で引きこもりとなった。
学校が始まっても俺が住む寄宿舎の横はレオンハルトが住む兵舎だから、逃げられない。
校舎の前に立って、小さくため息を吐いた。
周りの生徒達は久々に友達に会えた喜びではしゃいでいた。
俺は悪名高い家のせいでクラスメイトで友達はいない、声を掛けても明らかに避けられる。
だから、学園を卒業してもレオンハルトと友達でいたいんだ。
一人ぼっちは寂しいと、学園にいて嫌というほど分かっている。
だからといって、恋人はまた別の話でレオンハルトにそれは求めていない。
欲求不満だから恋人がいいのか?
レオンハルトなら選び放題だろ。
校舎の前でずっと考えても仕方ないかと、一歩踏み出すと会話に夢中になっている人が後ろから来ていた。
俺の肩にぶつかって、隣にいた人にぶつかった。
最初にぶつかった人は俺を一瞬だけ見て、何事もなく歩いて行った。
隣にいた人は尻餅を付いていて、慌てて手を差し伸ばした。
「ごめんなさい、お怪我はありませんか?」
「………」
その人は、俺の手を叩いて一人で立ち上がった。
面倒そうにため息を吐いて、俺を睨みつける。
あれ?この人、何処かで見た記憶があるな。
こんな高身長の相手、一度見たらなかなか忘れない。
俺の見覚えがあるものは、ゲームの中の出来事だ。
思い出そうと視線を下に向けると、手が赤く滲んでいた。
手を付いた時に怪我をしてしまったのかもしれない。
少年の肩を掴んで、ギョッとしたような顔をしていた。
「手当てしないと、保健室に行きましょう!」
「は?別に…」
「俺のせいだから、手当てするだけですぐに終わるから」
面倒そうにして一人で行こうとするから、保健室に引きずって歩いた。
周りから変な注目をされたが、傷口からばい菌が入るよりはマシだ。
自分の事に無頓着だからレイラが放っておけないんだよな。
クラスメイトだからこそ、レイラが彼の世話係になっている未来もある。
レイラの恋人候補はレオンハルトだけではない。
12人いるからな、彼もその一人としてゲームで到着する。
俺ともクラスメイトだ、話した事はないけど。
ちなみにレイラはまだ彼の世話係にはなっていない。
保健室のドアを開けると、保健の先生は何処にもいなかった。
救急の授業はやっているから手当てくらい出来る。
「もう帰っていい?」
「それは手当てしてからな」
大きくため息を吐かれて、早く終わらそうと丸椅子に座らせた。
彼は最初からレイラに好感を持っていて、犬のように従順だった。
そして、レイラに意地悪をする俺を含めたナイトフロウ子爵家が嫌い。
殺されないための俺の友達計画、しかし今まさに印象が悪い俺はどう友達になればいいんだ?
レオンハルトの時は家の事も教えていないから、最初から友人になれた。
そう思っていたのは俺だけだったんだと最近知ったけど。
それでも、ここまで嫌がられる事はなかった。
初会話がぶつかった事によるものだから、それもあるのかもしれない。
消毒液が入った瓶や包帯など、思いつくものを全て抱えて持ってきた。
少年の手を取り、血を綺麗に濡れた布で拭った。
「お前、ランクなしだろ」
「えっ…何故それを」
「この学校で一人しかいないから有名人だよ、悪い意味で」
この学園には入学式で受ける魔力診断でランクが決まる。
基本ランクは最高位の神の祝福に最も近いSSSランク、この学園に3人しかいない強い生徒に与えられる。
派閥も分かれていて、正直自分から関わろうとは思わない人達。
その下はAからEまであり、SSSランクでなくても誰でも神の祝福になれる。
そのためにはSSSランクを倒さないといけないから、レイラのような物語の主人公でないと望みはなさそうだ。
俺は何処のランクもない。
そもそももらえない。
落第間近の劣等生は…
俺は魔力が消滅するのかと言いたくなるほど魔力が少ない。
勉強は頑張れば何とかなるが、魔力はどう足掻いても良くはならない。
家族には絶対に落第するなと常に言われ続けている。
「落第したらどうなるか分かってるよな」と言われて、命の危険すら感じる。
冗談なら良かったが、家族が俺に冗談なんて言うわけがない…これは本気だ。
夏休み中も俺だけ他よりも多い課題に追われていて、憂鬱だった。
何とか引きこもっていたから課題は終わらせた。
しかし、それだけで及第点を取れるほど甘くはない。
今までも俺のようなランクなしはいたが、今は俺だけだ。
何故なら皆、及第点を取れず落第して学園を去ったからだ。
夏休みを迎える前は気分が沈んでいた。
そして夏休みが終わり、俺は別の事で悩んでいた。
当然、レイラの幼馴染みで恋人候補のレオンハルトの事だ。
毎日会う事はない、俺の家には元婚約者の姉がいる。
姉はレオンハルトをレイラに取られたと思い込み、俺にレイラを襲わせてレオンハルトに見せつけるという最悪な作戦を思いついた。
俺は安全に二人を密室空間から逃すために協力するフリをした。
レイラは無事に何事もなく逃す事は出来た。
しかし、俺は同じようにレオンハルトを逃がそうとしてレオンハルトに襲われた。
意味が分からない。
しかもレオンハルトのが俺の中に入っていた。
友達になりたいだけなのに、なんでレオンハルトはゲームと違うんだ?
そもそも俺と友達というのが可笑しいからなのかな。
姉には作戦失敗を責められたが、レオンハルトの事は言えない。
そんな事を言うものなら、姉の敵は俺にならないか?
街の外でレオンハルトに会うと、物陰に連れ込まれてキスをされる。
まるで、長い時間恋人に会えなかった寂しさを埋めるようだ。
後ろは壁で、前はレオンハルトが俺の姿を隠しているから他人に見られる心配はない。
でも俺の感情はすり減っているように感じた。
「早く仕事に戻りなよ」と言うと「照れているのか?」と嬉しそうに言う。
何を言ってもダメだ。
友達という単語を言うと怖い顔になるから何も言えない。
俺は夏休みが終わるまで、家の中で引きこもりとなった。
学校が始まっても俺が住む寄宿舎の横はレオンハルトが住む兵舎だから、逃げられない。
校舎の前に立って、小さくため息を吐いた。
周りの生徒達は久々に友達に会えた喜びではしゃいでいた。
俺は悪名高い家のせいでクラスメイトで友達はいない、声を掛けても明らかに避けられる。
だから、学園を卒業してもレオンハルトと友達でいたいんだ。
一人ぼっちは寂しいと、学園にいて嫌というほど分かっている。
だからといって、恋人はまた別の話でレオンハルトにそれは求めていない。
欲求不満だから恋人がいいのか?
レオンハルトなら選び放題だろ。
校舎の前でずっと考えても仕方ないかと、一歩踏み出すと会話に夢中になっている人が後ろから来ていた。
俺の肩にぶつかって、隣にいた人にぶつかった。
最初にぶつかった人は俺を一瞬だけ見て、何事もなく歩いて行った。
隣にいた人は尻餅を付いていて、慌てて手を差し伸ばした。
「ごめんなさい、お怪我はありませんか?」
「………」
その人は、俺の手を叩いて一人で立ち上がった。
面倒そうにため息を吐いて、俺を睨みつける。
あれ?この人、何処かで見た記憶があるな。
こんな高身長の相手、一度見たらなかなか忘れない。
俺の見覚えがあるものは、ゲームの中の出来事だ。
思い出そうと視線を下に向けると、手が赤く滲んでいた。
手を付いた時に怪我をしてしまったのかもしれない。
少年の肩を掴んで、ギョッとしたような顔をしていた。
「手当てしないと、保健室に行きましょう!」
「は?別に…」
「俺のせいだから、手当てするだけですぐに終わるから」
面倒そうにして一人で行こうとするから、保健室に引きずって歩いた。
周りから変な注目をされたが、傷口からばい菌が入るよりはマシだ。
自分の事に無頓着だからレイラが放っておけないんだよな。
クラスメイトだからこそ、レイラが彼の世話係になっている未来もある。
レイラの恋人候補はレオンハルトだけではない。
12人いるからな、彼もその一人としてゲームで到着する。
俺ともクラスメイトだ、話した事はないけど。
ちなみにレイラはまだ彼の世話係にはなっていない。
保健室のドアを開けると、保健の先生は何処にもいなかった。
救急の授業はやっているから手当てくらい出来る。
「もう帰っていい?」
「それは手当てしてからな」
大きくため息を吐かれて、早く終わらそうと丸椅子に座らせた。
彼は最初からレイラに好感を持っていて、犬のように従順だった。
そして、レイラに意地悪をする俺を含めたナイトフロウ子爵家が嫌い。
殺されないための俺の友達計画、しかし今まさに印象が悪い俺はどう友達になればいいんだ?
レオンハルトの時は家の事も教えていないから、最初から友人になれた。
そう思っていたのは俺だけだったんだと最近知ったけど。
それでも、ここまで嫌がられる事はなかった。
初会話がぶつかった事によるものだから、それもあるのかもしれない。
消毒液が入った瓶や包帯など、思いつくものを全て抱えて持ってきた。
少年の手を取り、血を綺麗に濡れた布で拭った。
「お前、ランクなしだろ」
「えっ…何故それを」
「この学校で一人しかいないから有名人だよ、悪い意味で」
この学園には入学式で受ける魔力診断でランクが決まる。
基本ランクは最高位の神の祝福に最も近いSSSランク、この学園に3人しかいない強い生徒に与えられる。
派閥も分かれていて、正直自分から関わろうとは思わない人達。
その下はAからEまであり、SSSランクでなくても誰でも神の祝福になれる。
そのためにはSSSランクを倒さないといけないから、レイラのような物語の主人公でないと望みはなさそうだ。
俺は何処のランクもない。
そもそももらえない。
落第間近の劣等生は…
俺は魔力が消滅するのかと言いたくなるほど魔力が少ない。
勉強は頑張れば何とかなるが、魔力はどう足掻いても良くはならない。
家族には絶対に落第するなと常に言われ続けている。
「落第したらどうなるか分かってるよな」と言われて、命の危険すら感じる。
冗談なら良かったが、家族が俺に冗談なんて言うわけがない…これは本気だ。
夏休み中も俺だけ他よりも多い課題に追われていて、憂鬱だった。
何とか引きこもっていたから課題は終わらせた。
しかし、それだけで及第点を取れるほど甘くはない。
今までも俺のようなランクなしはいたが、今は俺だけだ。
何故なら皆、及第点を取れず落第して学園を去ったからだ。
70
あなたにおすすめの小説
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
超絶悪役当て馬転生、強制力に抗う方法は×××
笹餅
BL
乙女ゲームのクズ悪役ストーカーに転生した少年。
17歳のゲーム開始前日から、物語は大きく変わった。
ゲーム通りに進めば、ゾンビになってしまうからゲームの激つよ強制力から必死に逃げるしかない。
ゾンビ回避の近道は攻略キャラクター達と仲良くする事。
勝手に友情ストーリーを目指していたら、別の好感度が上がっている事に気付かなかった。
気付いた頃には裏ルートが始まっていた。
10人の攻略キャラクター×強制力に抗う悪役令息
転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~
トモモト ヨシユキ
BL
10000回の善行を知らないうちに積んでいた俺は、SSSクラスの魂として転生することになってしまったのだが、気がつくと本だった‼️
なんだ、それ!
せめて、人にしてくれよ‼️
しかも、御主人様に愛されまくりってどうよ⁉️
エブリスタ、ノベリズムにも掲載しています。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった
まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。
なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。
しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。
殿下には何か思いがあるようで。
《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。
登場人物、設定は全く違います。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる