キミの目に僕はもう映らない

あくあ

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見えない傷跡

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山里さんの連絡先をゲットした侑也はすぐさまLINEをした。



「平子から紹介してもらった小河侑也と言います。LINEできてうれしいです。」



侑也はドキドキしながらLINEを送信した。「どんな返信がくるんだろ?」侑也は返信が来る間もずっとソワソワしていた。すると以外にもすぐに侑也のスマホが鳴った。



「キタ!!!!!」



ドキドキしながら侑也は山里さんからのLINEを開く。



「いいよぉ!よろしくね♪敬語なんか使わなくていいからね」



侑也は胸が張り裂けそうになった。



「やっと憧れの人と直接つながれた!」



一緒にカラオケに来ていたジュンも彼を見ながら嬉しそうにしている。



「うん。これから『山里さん』って呼んでいい?」



侑也はすぐに返信を返した。ドキドキはまだまだおさまらない。すると侑也のスマホはまたすぐに鳴った。



「いいよ。これからバイトがあるから帰ったらまたLINEするね。」



このLINEを見た侑也はすぐに「うん。わかった。」とだけ返信した。スマホをテーブルに置いた侑也はジュンのほうへ向き直すともう一度一緒に喜びを分かち合った。



日が暮れてきて家に帰った侑也は山里さんから来るLINEのことで頭がいっぱいになっていた。時々友達からのLINEが鳴って「おまえじゃねぇよ」と独り言を言いながら。



そこから時は経ち22時半になろうとしていたところで侑也のスマホが鳴った。



「山里さんだ!」



LINEの通知を見なくても侑也には相手が誰かすぐにわかった。そしてLINEを開く。



「ごめん、ごめん。バイトはいつも22時までだから遅くなっちゃった」



山里さんはいつも遅くまでバイトをしているようだ。



「大丈夫。いくらでも待てるよ!」



侑也は嬉しそうにLINEを返す。



「じゃあもう少しだけ待ってて。お風呂入ってくるから」



山里さんからのLINEに侑也は「うん。わかった。」とだけ返信した。その夜2人は遅くまでLINEをしていた。



侑也はそのやり取りの中で「山里さんが卒業後は美容師の専門学校に行くこと」、「バイト先について」など、色々と聞き出した。気が付くとすでに夜中の2時前。山里さんからLINEの返信は来なくなった。



「寝ちゃったか」



侑也はスマホをベッドの脇に投げると今日一日のことを思い出してニヤニヤしていた。彼はもっと山里さんのことが知りたかった。数時間LINEのやり取りはしたもののそれだけでは物足りなかった。



彼は次の日も朝から山里さんとLINEのやり取りをしていた。日曜日だから遊びに行けばいいのに彼は山里さんとのLINEのことしか頭に無かった。



この日も山里さんは夕方からバイトで、再び22時半頃に「ただいま」のLINEがり、そこから2人はまた夜遅くまでLINEを楽しんだ。次の日、学校で侑也とマサシは土日にあった出来事について話していた。



「土曜日にやっと山里さんの連絡先をゲットできたんだよ!メッチャ嬉しくて日曜日はずっとLINEしてた」



笑顔を見せながらそう語る侑也。



「良かったな!でな、お前がもし良いんなら今日俺と俺の彼女とお前と山里さんでダブルデートしない?」



マサシのその言葉を聞いた侑也は驚いた。



「お前彼女いたの?しかもダブルデートって・・・お前の彼女もしかして1コ上?」



目を見開いて聞いてくる侑也に「そうだよ」とマサシが勝ち誇った笑みを浮かべている。



「お前いつの間に彼女いたんだよ!言ってくれないから全然わかんないよ」



「まぁそういうことだから。今日は放課後空けとけよ!」



そう言うとマサシは教室に戻っていった。マサシが去ったあと、侑也はいきなり強い緊張感に襲われた。



「山里さんとデートができる。これはヤバイ。一大事だ。」



憧れの山里さんとLINEができるようになったかと思えば、その2日後にはデート。あまりに出来過ぎた展開に興奮と喜びを感じながら一日の授業が終わるのを彼は待った。そして、ついに放課後。



「行こうぜ」



マサシがニヤニヤしながら侑也に肩を組んでくる。一緒に下駄箱に行くとそこにはマサシの彼女と山里さんが一緒にいた。その瞬間侑也はとてつもない緊張と喜びに襲われた。



「山里さんがこんな目の前にいる。かわいい。かわいい!」



そんなことを考えながら侑也は「初めまして」と緊張した様子で言う。それに対して山里さんも「初めまして」と笑顔で返してくれた。マサシは「緊張しすぎ」と侑也をからかってくるが彼にはマサシの言葉が全く入ってこなかった。



ここから4人は2対2に別れて近くのファーストフード店まで歩いた。侑也の隣には夢にまで見た山里さんがいる。



侑也は一生懸命何かを話していたが、緊張と喜びのあまり自分が何を話しているのかわかっていない。なんとか冷静を装うも「緊張してるのバレバレ」と言わんばかりの笑顔を見せながら山里さんは彼の話を聞いてあげていた。



ファーストフード店に着いた4人はここから1時間ほど色々な話をした。その話の中でマサシの彼女は1コ上で山里さんとは友達同士。名前は「原田さん」ということを知った。どうやら侑也と同じ中学だったらしい。



ファーストフード店について1時間が経った頃、「そろそろ行くわ」とマサシと原田さんが席を立つ。



「送ってあげれば?」



マサシは意味深な笑顔を浮かべながら侑也に言った。侑也はマサシのほうを向いて「うん」と一言返す。そして彼は山里さんを家まで送ってあげることになった。



「一目惚れした相手とこんなすぐに仲良くなれて、家まで送ってあげられる。これはもう彼氏そのものじゃないか!」



侑也は心躍る気持ちを抑えながら山里さんの家の方向を聞き、2人は歩き始めた。山里さんも女子の中では背が高いほうだが、侑也も男子の中では背が高い。並んでみると全然自分よりも山里さんが小さいことに気付いた。



「山里さん大きいと思ってたけど、並んだら俺より全然小さいね。」



「侑也くん何㎝あるの?」



「177㎝だよ」



「それは私より10㎝以上大きいよ」



2人はそんな他愛もない会話をしながら歩いた。すると、山里さんが「私ね・・・」と口を開く。



「私ね。前の彼氏に浮気されちゃったんだ」



それを聞いた侑也は突然真顔になる。



「だから正直男の人あんま信用できないんだよね。」



この言葉は侑也の心に深く刺さった。



「じゃあ俺のことをそれだけ信用してくれてるってこと?」



侑也は気になって山里さんに聞いた。



「そういうこと♪でも、まだ全部が全部信用してるわけじゃないよ。」



こちらを振り返りながら笑顔で言う山里さんに侑也は「大切にしなきゃ」と心に誓った。
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