農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪

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第1章  伏龍

第41話  赤色

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「ノアくんこれからどうするの?」

「明日の錬金術の講義に備えて教材を読み込もうと思っていたんですが、うどんが順調なのでメイリンさんの店に寄って、許可が下りていればガンソさんの工房へ行きたいと思います」

 メイリンさんの「らっしゃい!」を聞いた後、ガンソさんがいつでも来て良いと了承したそうなので早速伺う。

 ガンソさんの鍛冶工房は職人街の立派な工房でお弟子さんを十名抱える大所帯だった。

 作業する音が響く中、ガンソさんは椅子に腰かけて指導をしていた。

「よく来たなパオラちゃん! 坊主! 何かあったか?」

「こんにちは。ガンソさん。少し時間宜しいですか?」

「おう! なんでぇ」

「実は作ってもらいたい物があるんです。これを見てもらえますか?」

 そう言って俺は事前に用意しておいた道具をアイテムボックスから出す。

 ひとつは麺キリカッター16号。

 もうひとつはイタリア製のピカピカの手動式パスタマシーン。

 そしてボニーのミートミンサー。
 
「ガンソさん。これなんですが同じ物を作れますか?」

「なんだこりゃ? 原物があって作れねぇとは言わねぇが見た事ねぇ道具だな」

「ノアくんまた変なの出して!」

 俺は道具の使い方を一通り説明してみせた。

 生地が残ってると良かったんだけど全部使ってしまった。

 ミンサーはひき肉を作る器械だ。近々使う予定だ。
 
「小麦の新しい喰い方ね? 旨いのかそれ?」

「あたしは何度か食べてるよ。うどんはさっきも食べたけど美味しいわ」

「ほう? まぁ。見た限り王国では見た事のねぇ器械だな。売りに出すのか?」

「いえ。自分で使おうかと。この国で作ってもらえれば、故障とかメンテナンスとかが安心ですからね」

 俺だけが持ってる特別な器械じゃなく、誰でも買える器械にしたいんだ。

「そうかじゃぁ。特許は取らなくてもいいか」

「トッキョってどう言う意味ですか?」

 特許はもちろん知ってるが、共通語の特許は初めて聞いた単語だったんだ。

 この世界って古代真聖語という超文明が消えていった世界だから妙なところが高度なんだよね。

 肖像権とか著作権とか知的財産への保護の概念は無いのに、製品販売に関する特許の権利はしっかりとあった。

 内容は特許の保有期間は十年間で利益の30%から特許保有者が任意に指定できる。

 特許使用料を払わず製造、販売した違反者は罰則を受ける。

 内容は未納分の利益を徴収され、五年間は白い板に黒く書かれた特許違反の看板を掲げて商売をしなければいけない。

 実質的な廃業に陥る為に店を構える商人で特許料を払わない者はいない。

 登録料は一件につき金貨一枚で魔道具も含まれる。

 要点はこんなところかな? 

 取り敢えず今は売るつもりも無いので特許は取らない事にした。

 まぁ。さっきの麺切機とパスタマシーンは前座だ

 本命の――――これを取り出すっ!

「ガンソさん。これも作れるか見てもらえますか?」

「っっ! ちょっ……ちょっと! ノアくん! その赤いの何よ!」

「なんだ……こりゃ?」

 この世界の素材で出来るかどうかは分からないが、出来たら特許申請しようかな?

 特許にガンソさんが名前貸してくれると、俺が目立たなくて助かるけど。

「ここ一ヶ月くらい猫かぶってたの? 今まで大人しくしていたのに! 何で急にポンポン、ポンポン新しいもの出すの! これがなんなのかちゃんと説明しなさい!」

 錬金召喚を覚えたから色々と事が進みやすくなった。パオラさんはそう言うが、地球の産物の作成は元から計画していた。

 それよりも、今までは共通語の習得を優先していたまでだ。

 怒るパオラさんをなだめ、ガンソさんにお礼を言って学舎へ帰った。

 今日は予習でじっくり錬金術の本を読み込まないと。

 ――赤いの?

 三倍どころの話じゃないぜ? ニシッシ!
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