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第1章 伏龍
第44話 内見
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ガンソさんの工房へ寄った明くる日の朝礼で畑の件について回答があった。
大学では貸し出せる畑を持っていなかった。
王国側は王領にすぐに貸し出せる畑が2haあり、一ヶ月過ぎて小麦の刈り取りが終われば追加で8ha貸し出せるとのこと。
更に公共事業の一環として雇い入れている、農業経験者を圃場での作業に貸出してくれるという好待遇だ。
まだ何を作るかも言っていないのに、司書長が一筆書いてくれたのかな?
俺が自ら畑に手を出すと何が起きるか分からないので、現地の知り合いを巻き込もうと思っている。
よく行く農家の気の良い三男坊のケンちゃん十九歳だ。
圃場管理責任者に押したい人物がいると伝えて問題ないか確認を取ってもらう。
パオラさんはケンちゃんに会ったことがあるからケンちゃんにお願いする旨を伝えた。
ケンちゃんの承諾は貰って無いけど畑を開墾して家を出なきゃいけないって言ってたし、丁度良いだろう。
ケンちゃんはパオラさんと、まともに目も合わせられ無いくらいやられてるから、パオラロケットをぶっ放せば撃墜は間違い無しだ。メロメロパンチでも良いかな。
植えるものは既に決まっている!
一ヶ月後じゃちょっと遅いからな。作付けの時期的にも丁度だ。
既に呼び出せるのも確認してあるから準備しておこう。結構な量になるからまめに出してストックだな。
俺が探している料理屋。兼野菜直売所の候補は大学保有の建物があったそうだ。
ここは大学での研究成果を販売し臨床データを得る為の販売所だったが今は使われていないみたいだ。
どうやら俺が使用している元薬草畑と同じプロジェクトだったみたいだな。
普通なら売りに出されるところだが、次回予算が下りるか分からないという理由で宙ぶらりんに残っていたそうだ。
王国の庇護があるから大学の所有物だと免税されるからね。
だから買ったもんは持ってても痛くも痒くも無いもんな。ただ管理だけはしっかりとしていたようだ。
使用料は月に銀貨五枚……五万ベルで一軒屋借りられたら破格だよね。
……早速だから内見に行こうかな。
打ち合わせの最後は延びていたエルフ達との勉強会の件だった。
五日後に顔合わせを兼ねた昼食会の打診を受けた。俺には五日後の予定も無いので了承してミーティングを終えた。
「パオラさん。時間がかかると思っていたうどんが、ある程度形になったので厨房には行かず、内見に行きたいと思いますがどうでしょうか?」
「オッケ~! 総務で鍵を貰ってくる。ノアくんはここで待っていて」
パオラさんはそう言うと駆け出した。
◇
しばらく街中を歩いて大学保有の店舗にたどり着いた。
通りに面した正面の入り口はアーチ状になっており、四角く真っ黒な両開きのドアが付いている。
レンガは赤茶色だが濃淡がありモザイク柄のようでとてもおしゃれだ。
ドアを中心に左右に大きめの四角い窓があり今は白い雨戸が閉まっている。
窓の上もアーチ状に組まれていて正面から見て良いアクセントになっている。
そこは二階建ての建物で、一階の天井くらいの高さに木製の真っ白なひさしが付いていた。
なんだか、薬草店というよりもケーキ屋とかカフェみたいな建物だな。。。
それと思っていたより結構でかい。
三十坪くらいはあるかな? 鍵を開けて中に入ってみる。
店内は木製の棚が壁側に備え付けられていて、陳列用の大きなテーブルが置いてあった。
左手奥にトイレが二箇所設置されている。
そして、右端には二階へ上がる階段が有った。
そこには、階段下のスペースを利用したパントリー兼倉庫が備え付けられている。
パントリーとくっつく様にL字のカウンタ-が設置され中に二口の魔道コンロが置かれていた。
何の目的で建てたんだろう? 中までカフェみたいだな。
あるいはキッチンに余裕のある、こじゃれたラーメン店とか?
薬草をここで調合できるように魔道コンロまで付けたのかな? う~ん。
「コンロが小さいけれど。直ぐにでもレストラン始められそうな家ね」
「広すぎて使い切れないような?」
「あら、狭いより良いじゃない」
設備を除いた床面積が四十~四十五畳ぐらいかな。
俺の畑の野菜じゃ賄いきれなくないか? 張りぼての壁でもつけて狭くするかな?
しかも、ここって立地も申し分無いじゃないか。街中で競合店もないし中間層の住宅地も近い。
普通に借りたら月二〇~三〇万ベルするんじゃないか?
この優良物件は絶対に高値で売れただろう、売らなかった奴は阿保だ。
おかげで助かったが。。。
――二階に上がる。
二階には八畳ほどの部屋が六部屋あり一階と同じ左奥にトイレが二箇所据えられていた。
トイレの隣はちょっとした物置が付いていた。
物置の中に水タンクがあり、ここに水を溜めると位置エネルギーでトイレやキッチンから水が出る仕組みのようだ。
「本当にここを銀貨五枚で借りて良いんですかね?」
「大丈夫じゃない? 今まで何年も何の価値も生まなかった訳だし。来月からプラスになる分ましね。ここ以外にも先送り案件がいくつか見つかったらしいわ。重い腰を上げて不良資産の整理に動き出すそうよ」
「それじゃあ。遠慮なく。場所も確保できたので孤児院でリクルート活動しましょうか」
「リクルート? の意味は分からないけど。どこかに仕事が決まる前に話だけでもしておかないとね」
「あっ! そういえば先生が陛下からの賞与の押付け……んんっん、渡し先にノアくんを狙っているから覚悟したほうが良いわよ。きっと逃げられないからね?」
「ひょぇ~! 勘弁してもらえないですかね?」
パオラさんは良い笑顔で首を横に振った。
大学では貸し出せる畑を持っていなかった。
王国側は王領にすぐに貸し出せる畑が2haあり、一ヶ月過ぎて小麦の刈り取りが終われば追加で8ha貸し出せるとのこと。
更に公共事業の一環として雇い入れている、農業経験者を圃場での作業に貸出してくれるという好待遇だ。
まだ何を作るかも言っていないのに、司書長が一筆書いてくれたのかな?
俺が自ら畑に手を出すと何が起きるか分からないので、現地の知り合いを巻き込もうと思っている。
よく行く農家の気の良い三男坊のケンちゃん十九歳だ。
圃場管理責任者に押したい人物がいると伝えて問題ないか確認を取ってもらう。
パオラさんはケンちゃんに会ったことがあるからケンちゃんにお願いする旨を伝えた。
ケンちゃんの承諾は貰って無いけど畑を開墾して家を出なきゃいけないって言ってたし、丁度良いだろう。
ケンちゃんはパオラさんと、まともに目も合わせられ無いくらいやられてるから、パオラロケットをぶっ放せば撃墜は間違い無しだ。メロメロパンチでも良いかな。
植えるものは既に決まっている!
一ヶ月後じゃちょっと遅いからな。作付けの時期的にも丁度だ。
既に呼び出せるのも確認してあるから準備しておこう。結構な量になるからまめに出してストックだな。
俺が探している料理屋。兼野菜直売所の候補は大学保有の建物があったそうだ。
ここは大学での研究成果を販売し臨床データを得る為の販売所だったが今は使われていないみたいだ。
どうやら俺が使用している元薬草畑と同じプロジェクトだったみたいだな。
普通なら売りに出されるところだが、次回予算が下りるか分からないという理由で宙ぶらりんに残っていたそうだ。
王国の庇護があるから大学の所有物だと免税されるからね。
だから買ったもんは持ってても痛くも痒くも無いもんな。ただ管理だけはしっかりとしていたようだ。
使用料は月に銀貨五枚……五万ベルで一軒屋借りられたら破格だよね。
……早速だから内見に行こうかな。
打ち合わせの最後は延びていたエルフ達との勉強会の件だった。
五日後に顔合わせを兼ねた昼食会の打診を受けた。俺には五日後の予定も無いので了承してミーティングを終えた。
「パオラさん。時間がかかると思っていたうどんが、ある程度形になったので厨房には行かず、内見に行きたいと思いますがどうでしょうか?」
「オッケ~! 総務で鍵を貰ってくる。ノアくんはここで待っていて」
パオラさんはそう言うと駆け出した。
◇
しばらく街中を歩いて大学保有の店舗にたどり着いた。
通りに面した正面の入り口はアーチ状になっており、四角く真っ黒な両開きのドアが付いている。
レンガは赤茶色だが濃淡がありモザイク柄のようでとてもおしゃれだ。
ドアを中心に左右に大きめの四角い窓があり今は白い雨戸が閉まっている。
窓の上もアーチ状に組まれていて正面から見て良いアクセントになっている。
そこは二階建ての建物で、一階の天井くらいの高さに木製の真っ白なひさしが付いていた。
なんだか、薬草店というよりもケーキ屋とかカフェみたいな建物だな。。。
それと思っていたより結構でかい。
三十坪くらいはあるかな? 鍵を開けて中に入ってみる。
店内は木製の棚が壁側に備え付けられていて、陳列用の大きなテーブルが置いてあった。
左手奥にトイレが二箇所設置されている。
そして、右端には二階へ上がる階段が有った。
そこには、階段下のスペースを利用したパントリー兼倉庫が備え付けられている。
パントリーとくっつく様にL字のカウンタ-が設置され中に二口の魔道コンロが置かれていた。
何の目的で建てたんだろう? 中までカフェみたいだな。
あるいはキッチンに余裕のある、こじゃれたラーメン店とか?
薬草をここで調合できるように魔道コンロまで付けたのかな? う~ん。
「コンロが小さいけれど。直ぐにでもレストラン始められそうな家ね」
「広すぎて使い切れないような?」
「あら、狭いより良いじゃない」
設備を除いた床面積が四十~四十五畳ぐらいかな。
俺の畑の野菜じゃ賄いきれなくないか? 張りぼての壁でもつけて狭くするかな?
しかも、ここって立地も申し分無いじゃないか。街中で競合店もないし中間層の住宅地も近い。
普通に借りたら月二〇~三〇万ベルするんじゃないか?
この優良物件は絶対に高値で売れただろう、売らなかった奴は阿保だ。
おかげで助かったが。。。
――二階に上がる。
二階には八畳ほどの部屋が六部屋あり一階と同じ左奥にトイレが二箇所据えられていた。
トイレの隣はちょっとした物置が付いていた。
物置の中に水タンクがあり、ここに水を溜めると位置エネルギーでトイレやキッチンから水が出る仕組みのようだ。
「本当にここを銀貨五枚で借りて良いんですかね?」
「大丈夫じゃない? 今まで何年も何の価値も生まなかった訳だし。来月からプラスになる分ましね。ここ以外にも先送り案件がいくつか見つかったらしいわ。重い腰を上げて不良資産の整理に動き出すそうよ」
「それじゃあ。遠慮なく。場所も確保できたので孤児院でリクルート活動しましょうか」
「リクルート? の意味は分からないけど。どこかに仕事が決まる前に話だけでもしておかないとね」
「あっ! そういえば先生が陛下からの賞与の押付け……んんっん、渡し先にノアくんを狙っているから覚悟したほうが良いわよ。きっと逃げられないからね?」
「ひょぇ~! 勘弁してもらえないですかね?」
パオラさんは良い笑顔で首を横に振った。
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