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第6章  罪咎

第1話  鳶鷹

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 その日、五歳の誕生日を迎えた少年は、父親に手を引かれて教会へと向かった。

 付き添いの父と共に職業の啓示を受けに来たのだ。

 職業啓示の部屋の中に司祭と少年、父親が控える。

 そして、司祭の祝詞のりとで、少年の体から淡い光が零れた。

 司祭は啓示された職業を見て驚いたように慄いた。

 少年が啓示された職業は――賢者。

 王国の有史以来二人目の職業だ。

 父親は息子を左手で抱き上げその場で回る。

「すごいじゃないかっ! シルビィー。やっぱり母さんの子だなっ! 俺に似なくてよかった。トンビが鷹だっ!」

 父親は司祭への挨拶もそこそこに家へと急ぐ。

 少年を背負って、飛ぶような速さだ。

 動きは機敏だが、右足の動きがぎこちない。

 すれ違う人達へ気安く挨拶を交わし、上機嫌な笑みで立ち止まらずにひた走る。

 家に着くとドアを開けて、中の女性へ声をかける。

「聞いてくれっ! シルビィーの職業が賢者だったっ! 自慢の息子だっ! トンビが鷹だっ!」

 家に居た女性は、光と影しか映らない瞳でそちらを見ると、父親に近づきゆっくりと足を踏んだ。

 耐久の高い父親は、それに痛みを感じないが、言わんとすることを理解して詫びの言葉を紡ぐ。

「君の優秀さが、受け継がれたのだ。トンビは勿論、俺の事だよ」

 女性の踏み足に更に力がこもる。

「私達の子供だから、シルビィーは優しくて賢いのですよ。子供の前で親が自分を卑下してはいけません」

 浮かれていた父親は、バツが悪そうに頭をかいた。

 女性は少年の様子に気付き声をかける。

「シルビィー。どうしたの? 元気が無いわね」

 少年は、浮かない顔でそれに答えた。

「僕。――狩人がよかった」

「――狩人も立派な職業よ。でも、あなたは賢者と神様から啓示されたの。それを受け入れて、これからの人生を励まないとね」

「そうだぞ。シルビィー。賢者なんて、望んでもなれない凄い職業だ。人の為になる人生を歩め。だからって、自分が特別だなんて勘違いはするなよ。人は一人一人がかけがえのない存在なのだからな」

 そう言って父親は、左手を少年の頭にポンとのせた。

 父親と同じ、狩人になれる日を思い描いていた少年は、いじけた様にそっぽを向いた。

 父親の生業なりわいは狩人。


 名を――――ジョシュアという。
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