269 / 403
第6章 罪咎
第9話 右腕
しおりを挟む
ボトヴィット自身が住み暮らし、知り合いも多いこの街。
今回予想されたスタンピードに際して彼はノアの協力を願った。
ガンソから止められていたが、心が行動を起こさせる。その結果。ノアに感知され、四人の注意人物の一人として『追跡くん』を付けられていた。
~~~
自分が迂闊にもノアに知られていた事とノアの言葉をヘルヴィへと伝える。
「――そう。……あなたの気持ちは良く分かる。私からもガンソへ伝えておく事にするわ」
「――はい。申し訳ありません」
通信の切れた執務室でヘルヴィは息を吐く。
そして、夫がいるはずの方向を見つめる。
(ボトヴィットの。……いえ。スタンピードに襲われる街に住む全てのドワーフの願いは叶うはず)
そして、ヘルヴィの希望もだ。それは絶界の弟子と自らの一門の共闘関係。
ガンソはひっそりと招待を受けた。
――――ダンテス公爵家。秘密の別荘に。
王国の右腕は動き出した。すれ違っていた点は、新たな線を描き始めた。出来上がる図形はまだ定まらない。
§
ノアはやることがあると伝え、この都市を後にした。一度戻ったら拠点を移すと言い残して。
王民事業体イーディセル。そのノルトライブ支所の執務室でイェルダは回想する。
その出発前の食事会の時の事を。
「――ノルトライブの拠点を買い取りたいですか?」
そう確認するイェルダへノアは答える。
「ええ。色々手を加えましたのでせっかくですから資産へ組み込みたいと思います」
「そうですか。寂しくなりますね」
零れるようにイェルダは漏らした。そして、気を取り直すと意思を込めて伝える。
「分かりました。管理は私達にお任せください。いつでも戻れるように毎日掃除を欠かしません」
「……いやぁ。自己管理する仕組みを組みましたので大丈夫です」
「遠慮なさらずに、お任せください」
「……防衛機能を持たせているので、下手に入られると危ないですよ? とりあえず、私の不動産だと保護してくれると助かります」
「――ノアさんがそうおっしゃるのならそうします」
「えぇ。お願いします。――それより料理が冷めてしまいます。頂きましょう」
「そうですね。それではノアさんの旅路の安寧を祈願して乾杯!」
ノルトライブ支所の食堂には関係者数十人が集まっている。その全員がグラスを掲げた。
テーブルの上には様々な料理が並ぶ。
一番目を引くのは、タマネギとニンジンのみじん切りと一緒に香味野菜を煮込んだ。真っ赤なトマトのソースが盛られた皿。
そして、その真っ赤なソース上に盛り付けられたキツネ色の丸いミートフライだ。中心には茹で玉子が入っており、付け合わせのサラダが彩を添えている。
サクサクの衣にナイフを入れると中から半熟の玉子がトロリと零れる。
ノアが書き上げたレシピ。――スコッチエッグだ。
その隣にはスフレオムレツ。メレンゲへ卵黄を優しく混ぜて焼いたそれは雲のような食感だ。
他にも色とりどりの料理が並ぶ、ビスマルクピザ。カルボナーラ。フレメンカエッグ。メネメン。エッグインクラウド。――料理の共通点は卵だ。
集まった人々は好きな物を食べ。酒を飲みノアへ挨拶に来る。
イェルダは全種類のコンプリートを目指して闘い出した。
今回予想されたスタンピードに際して彼はノアの協力を願った。
ガンソから止められていたが、心が行動を起こさせる。その結果。ノアに感知され、四人の注意人物の一人として『追跡くん』を付けられていた。
~~~
自分が迂闊にもノアに知られていた事とノアの言葉をヘルヴィへと伝える。
「――そう。……あなたの気持ちは良く分かる。私からもガンソへ伝えておく事にするわ」
「――はい。申し訳ありません」
通信の切れた執務室でヘルヴィは息を吐く。
そして、夫がいるはずの方向を見つめる。
(ボトヴィットの。……いえ。スタンピードに襲われる街に住む全てのドワーフの願いは叶うはず)
そして、ヘルヴィの希望もだ。それは絶界の弟子と自らの一門の共闘関係。
ガンソはひっそりと招待を受けた。
――――ダンテス公爵家。秘密の別荘に。
王国の右腕は動き出した。すれ違っていた点は、新たな線を描き始めた。出来上がる図形はまだ定まらない。
§
ノアはやることがあると伝え、この都市を後にした。一度戻ったら拠点を移すと言い残して。
王民事業体イーディセル。そのノルトライブ支所の執務室でイェルダは回想する。
その出発前の食事会の時の事を。
「――ノルトライブの拠点を買い取りたいですか?」
そう確認するイェルダへノアは答える。
「ええ。色々手を加えましたのでせっかくですから資産へ組み込みたいと思います」
「そうですか。寂しくなりますね」
零れるようにイェルダは漏らした。そして、気を取り直すと意思を込めて伝える。
「分かりました。管理は私達にお任せください。いつでも戻れるように毎日掃除を欠かしません」
「……いやぁ。自己管理する仕組みを組みましたので大丈夫です」
「遠慮なさらずに、お任せください」
「……防衛機能を持たせているので、下手に入られると危ないですよ? とりあえず、私の不動産だと保護してくれると助かります」
「――ノアさんがそうおっしゃるのならそうします」
「えぇ。お願いします。――それより料理が冷めてしまいます。頂きましょう」
「そうですね。それではノアさんの旅路の安寧を祈願して乾杯!」
ノルトライブ支所の食堂には関係者数十人が集まっている。その全員がグラスを掲げた。
テーブルの上には様々な料理が並ぶ。
一番目を引くのは、タマネギとニンジンのみじん切りと一緒に香味野菜を煮込んだ。真っ赤なトマトのソースが盛られた皿。
そして、その真っ赤なソース上に盛り付けられたキツネ色の丸いミートフライだ。中心には茹で玉子が入っており、付け合わせのサラダが彩を添えている。
サクサクの衣にナイフを入れると中から半熟の玉子がトロリと零れる。
ノアが書き上げたレシピ。――スコッチエッグだ。
その隣にはスフレオムレツ。メレンゲへ卵黄を優しく混ぜて焼いたそれは雲のような食感だ。
他にも色とりどりの料理が並ぶ、ビスマルクピザ。カルボナーラ。フレメンカエッグ。メネメン。エッグインクラウド。――料理の共通点は卵だ。
集まった人々は好きな物を食べ。酒を飲みノアへ挨拶に来る。
イェルダは全種類のコンプリートを目指して闘い出した。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる