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第6章  罪咎

第37話  隠札

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 エステラが邂逅を望んだ人物は分の悪い絶対絶命の闘いの最中さなかだ。

 二人の運命が交わるのかは、まだ誰も分からない。

 ついて来ると言ったクラーラはいつものように安全領域の屋敷で待機だ。

 保管場所は背中の小さなバックの中。

 エステラはクラーラの言葉を回想する。

『スティ姉が師匠って呼ぶ人がいるかもしれないの? 何でも出来る凄い人なんでしょ? あたしも会ってみたいな。そうすると、あたしは孫弟子になるのかな?』

『そう。何でも知っていて、何でも出来る凄い人が、私の師匠。きっとララも気に入るわ』

 そう言って柔らかく笑ったエステラを、クラーラは憧れるような嬉しいような瞳で見つめる。

 遠い日のエステラも同じ色の瞳で父を見つめた。

 そこは彼女が目指したもの。精一杯に手を伸ばし望んだ場所だ。

 決意の瞳でエステラは誓う。

 彼に逢ったら伝えると決めていた、ある言葉だ。その事を親友の二人には伝えて応援されている。

 彼にとっては気にも留めないその言葉は、彼女にとってはとても大切な変化になる。

(――逢えるといいな)

 エステラは期待を胸に目的地を目指した。





 ジョシュアさんのバッシュから力を逃すように飛び転がり、飛行魔法の併用で何とか立ち上がる。

 始めから本気の俺は、ジョシュアさんを殺傷しかねない攻撃を重ねているが、やはり、それすら届かない。

 だから、もう腹を決めた。

 エルフの元で研鑽の日々。調べた神器には制限がかけられている。暴走を抑える為とかその力で壊れない為とか制約するには当然だが理由があった。

 そして、それが技術である以上。俺はいつでも“脱獄”する路を模索する。

 もう止まれないぜ。ポシャる事の決定した、時間限定のオーバード暴走ライブだ。

 神器のレプリカ。アンキーレのリミテッドを外す。これで届かなきゃもうアレしかない。

 そして、『増昇くん』の出力を最大にした。

 一瞬脳に痛みが走り。時間がゆっくりと流れる。

 高速思考の中で取っておきの霊薬をあおる。身体能力をブーストさせる『超越くん』だ。

 これは出し渋った訳ではなく。使えば必ず最後は動けなくなる。

 神器が先か、俺が壊れるのが先かのチキンレース。同時爆発の危険すらある。

 時間もないが、機会もそうは得られないだろう。

 ――物は試しだ。一度は右手に賭けてみるか。リングのカルマ免疫の力。神武かみたけさんを救った、その可能性に
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