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第6章  罪咎

第86話  泰然

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(――ツンツク!)

 俺の心の叫びに答えはない。ちくしょう! 想定が甘かったか? 偵察も兼ねて森の中を進んでもらったが。

 一瞬目にしたのは白いドラゴン。開けた空間に入った瞬間に、存在しなかった圧倒的な気配が出現した。

 まさかあのツンツクが逃げられないとは、視界のリンクは切れているが、生存は感じ取れるのが救いだ。

 俺は森の上空へと急ぐ。隣には心配そうなオナイギが速度を合わせてついてくる。

 俺の焦りに合わせてチャムとカロが飛び出てきたが、相手を刺激しないように胸に戻ってもらった。モルトは俺の肩に手をかけて口を一文字に結んで同伴している。

 ツンツクが消えた場所の上空付近についたが、下に開けた空間は見えない。俺はゆっくりと地上を目指して降下した。


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 エステラは言われた通り、辺りを警戒し待機している。

「スティ姉。行かなくていいの?」

 クラーラがそう問いかける。

「――取り敢えずは言われた通りここで待つ。ララもトゥエもトラも安全を確保する必要がある。でも一時間経って戻らなければ探しにゆく」

 寝ていた子狼。トゥエアルが起きてきて鼻を鳴らす。日に日に育ち既に中型犬の大きさになっている。

 エステラがエサと水を用意すると凄い勢いで食べ出した。クラーラがその頭を撫でる。

「トゥエちゃん。美味しい? いっぱい食べてね」

 その様子を眺めたエステラは眼差しを強くして森を見つめた。再会からの一ヶ月で自分が出来ることは示したつもりだった。だが、また安全な場所に残されて守られた。

(焦らず。少しずつ。むしろ一定の信用をされたからこの場所を任された)

 そうでなければ、避難を指示されていた筈だ。

 そう心に思う。もし、二人だけならノアは自分を連れていってくれただろうか。そう想像して否定的な気分になる。

(――ツンツクくんが襲われ逃げきれない場所にはまだ連れて行ってはくれない)

 隣に立つ。その志を強く誓い。少女はノアの安全を祈った。





 ゆっくりと降下すると緑の領域が忽然と消える。

 そして――――

 それから発せられる圧倒的な存在感。白い鱗は角度により虹色に輝き色を変える。緑の龍眼からは何の感情を読み取れない。

 隠蔽の幻惑が晴れたかのように現れた広い空間で小山程のドラゴンが泰然と坐していた。
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