農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪

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第6章  罪咎

第98話  終章Ⅲ ~種は移る~

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 漏れる出る悲鳴を上げたビビアナ達を、いつもの事かと呆れた様子でアルバロは眺める。彼に届いた手紙にはノアと無事に合流出来たこと。そしてこれからゆっくり旅をしながら辺境都市を目指すことが書かれていた。

 色白のっぽのクレトが話しかけてきた。

「――心配していたけど。やっとノア君に逢えたみたいだね。ノア君の近くなら安心だね」

「そうか? 逆にノアに巻き込まれて、大変な思いをしなければいいけどな」

 クレトが弱ったように笑う。その顔は巻き込まれない訳ないよねと言っていた。

 ノアから届いた最新の写真には美しい拝像と花畑が映っていた。それを見たエルフ達は、大いにはしゃぎ。特にイーディセルは何か画策を開始したらしい。

 王都にいないノアがこの一波乱の原因だ。

「巻き込まれても楽しいじゃない」

 そう言ってクレトは人の良い顔で笑う。つられてアルバロも笑った。


§


 醸造部門トップの一角。ヘイモが醤油を卸しに裏口から入って来た。漂う良い香りに鼻をひくひくさせる。

「ネビル。こんち。醤油持ってきたよ」

 フードコートの調理場で仁王立ちするのはネビル。ネストの代表だ。

「すまんがいつもの処に置いてくれ」

 開店前のバックキッチンは仕込みの真最中で大勢が忙しそうに動き回っている。今ではスタッフも習熟が上がりネビルが味のチェックをすることも少なくなった。

 ネビルは大鍋を睨む。

 ノアが作り出したこの集合総合娯楽施設はいつも盛況だ。そして、建設計画者特権という訳の分からない権利を行使して舞台で英雄の物語を上演している。

 その舞台も大人気でフードコートのかき入れ時には席が埋まり溢れるほどだ。

 濃いグレーの髪を短く整え。キャップを被ったヘイモが尋ねる。

「もう出来る?」

「あぁ。出来た。今日も食べてゆくか?」

「やったー! 今日は醤油ラーメンにしようかな」

 このフードコートの目玉料理。ネスリングスでも提供されない。特別なラーメンだ。

 王都は河と湖を近くに擁し、広大な森で猪豚を放し飼いにしている。近くにダンジョンこそないが、その為に猪豚の肉は比較的手にしやすい。

 そして養鶏により鶏肉も安く手に入るようになった。

 ここで食べられるラーメン。処分されていた猪豚の骨を使ったトンコツ。鶏ガラと魚介スープを合わせた醤油ラーメンが二枚看板だ。

 バルサタールもよく孫を連れて食べにくる。ちゃっかりしたヘイモは出来上がる時間を見計らってやって来たのだ。

 一瞬。厨房が静かになる。――賄いでラーメンを食べられるのは交代制だ。本日の栄冠に輝いた数名が静かに列をなす。

 ネストのスタッフでも貴重な料理だ。

 ネビルの職業はいつの間にか花板になっていた。
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