時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは

文字の大きさ
47 / 137

47.両思い?

しおりを挟む
「春香嬢はもっと食べて膨よかにならないと、いいお子は産めませんぞ」

品のいいグリズリーがずっと話しかけてくるし、今の発言は私の世界じゃセクハラだからね!
ずっと苦笑いの私を心配そうに向いに座るアレックスさんが見ている。しかしアレックスさん人の心配している場合では無く、ポロリ令嬢がすり寄って来てるよ! お互い言いたい事が分かったようで思わず笑ってしまう。

「ハル。無理して食べなくていいよ」

私達の視線に気づいたミハイルさんが明らかにやきもち中だ。今日は晩餐だからテーブルマナー通りフルコースが出てくる。他の方に比べて量は少なくしてくれているが、やっぱり頑張っても魚止まり。もうお腹がいっぱいだ。手が止まると次の料理か運ばれてくる。

『お肉は無理…ってあれ?デザートだ』

思わず給仕さんを見たら

「アレックス様からのご指示でございます」

やっぱりアレックスさんの気遣いだ。お礼は言えないから、目が合った的に小さくお辞儀した。
アレックスさんは手で口元を隠して横を向いてしまった。

「おぃ!そこの給仕もの!春香嬢になぜ肉が出てないんだ肉を持ってこい。春香嬢には体力をつけてもらわないと!」
「殿下。私は小食なのでもうこれ以上食べれません。それを知っている給仕さんが配慮して下さったのです。なので給仕さんを責めないって下さい」
「そうか!すっすまない」

案外素直な殿下でちょっとびっくりした。
皆さんはまだ食事中だ。私は早く終わりゆっくりお茶を飲みながらまったりしている。
凄い肉な塊を食べ終えた満腹のグリズリーは楽しそうに話しかけてくる。でもちゃんと話してみると俺様気質だけど、国や国民を考えている普通に王太子だった。

会食が終わり一旦休憩室に移動し、ホール準備までお腹を休めます。
ミハイルさんががっつり私について周りを威嚇している。まるで大型犬がおもちゃを必死に守っているみたいだ。そんな風に思っていたらミハイルさんの頭にケモ耳が見えた気がして一人で笑っていたら、ミハイルさんは目を細めて私を見ている。

従僕さんが呼びに来てホールに移動します。
入場し暫く歓談していたら音楽が流れてコールマン侯爵様とマニュラ夫人がファーストダンスを踊ります。正式な舞踏会では無いので、侯爵様の後は自由にダンスできる。ミハイルは私の手を引きフロアー中央に行き踊り出す。

色んな人と踊ったけどミハイルさんは安心して身を預けられる。

「ハル。他は見ないで俺だけ見て…」

ミハイルさんの眼差しと手は優しく温かい。

「早くシュナイダー邸に帰りたい」
「あと少しだ」
「ん?」

さっきまであんなに穏やかだったミハイルさんの顔が曇る。音楽が終わり向き合い挨拶すると背後から大きな声をかけられて心臓が止まるかと思った。
振り返るとジャン王太子が手を差し出している。

「春香嬢!次は俺とだ」

一瞬躊躇したら強引に手を取られ腰に腕をまわされ、腰をホールドされ踊り始める。
はっきり言ってこれば”ダンス”じゃない!熊が木の棒を振り回して遊んでいるみたい!
ターンの時は足が床に着いてないどころか、ダンス始まってほぼ宙に浮いている。

「あの!殿下!もっと優しくゆっくり踊って下さい!」
「あっ!すまない。春香嬢は軽過ぎて加減が分からん」

やっと足は着いたけど、でもやっばり振り回されている。『あと少し…あと少し…』と自分にいい聞かせて最後まで踊り切った。只今遠い目をして頑張った自分を褒めている最中だ。
ふと上座の席に座っているミハイルさんとジュシュさんが目に入る。
ポロリ令嬢が体をくねくねしながらミハイルさんとジョシュさんに擦り寄っている。

『ムカ!』なんか腹立つ。イライラしてたら背後から呼ばれて振り返るとアレックスさんが手を差し出してダンスに誘ってくれた。

「喜んで…」

アレックスさんの手に私の手を重ねる。
音楽が変わりアレックスさんのリードで踊りだす。
不機嫌な私をアレックスさんは何も言わずに優しい眼差しで見つめている。

「私…早くシュナイダー邸に帰りたい。ジャン王太子もポロリ令嬢リリアンも疲れるから何かイヤ…」

アレックスさんはミハイルさん達を見てくすりと笑い。

悋気やきもちか…」
「そんなんじゃ…」
「俺がリリアン嬢と親密にしていたら、同じ様に妬いてくれるのか?」
「えっ?」

思わずアレックスさん見ると眉間の皺もなく穏やかな表情。私がアレックスさんにやきもち?
暫く見つめていたら

「いや!今のは忘れてくれ…」
「あっはい…」

どうしょう…ドキドキが止まらない!
きっと今日のアレックスさんはいつもと違う正装姿だからだと自分に言い聞かす。見つめるアレックスさんの視線から逃げる様に視線を外すと王太子が目に着いた。

『ん?殿下のあんな穏やかな表情初めて見た。誰を見ているんだろう⁈』

王太子の視線を辿るとその先にポロリ令嬢だ。
王太子のあの表情は見た事ある。あの視線は好きな人に送るもの。ミハイルさんやローランド殿下から送られるそれと同じだ。

『ジャン王太子はリリアン様を?』

よく見るとリリアン様はミハイルさんにボディタッチしているけど、チラチラ王太子を見ている。
えっ!もしかして両思いなの?
思わぬ発見にまるっとアレックスさんを忘れていて慌ててアレックスさんを見た。
溜息を吐いたアレックスさんがぽつりと

「春香も気付い様だな」
「アレックスさん。あの2人…」
「王族は時に国の為に己の望みが叶わない事がある」

音楽が終わり向かい合い礼をしてダンスを終えた。
アレックスさんがテラスにエスコートし、王太子から庇ってくれた。
気付いてしまうと気になる。好き合っているのに叶わないなんて納得できない!
テラスの椅子に座り果実水を飲んでいたら、アレックスさんが小さく笑い

「お前らしいなぁ…」
「何がですか?」
「何とかしてやりたいんだろ?」
「へ?」

アレックスさんに見透かされと驚いてまじまじ見ていたら、向こうから足早にミハイルさんが来る。
あの顔は怒っている。恐らくアレックスさんと2人でいるからだ。

「アレックスさん!ありがとうございました。ちょっとミハイルさんのヤキモチを鎮めて来ます」

立ってミハイルさんの元に向かう。

「○☆△□…」

アレックスさんが何か言ったけど聞こえなかった。
って言うか聞かない方がいいと何故か思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。 その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

処理中です...