時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは

文字の大きさ
66 / 137

66.予知夢?

しおりを挟む
いつもより早く起きて身支度を急ぐ。行きと違い今日中に王都まで移動するので朝は早い。3時には出発する。
朝食は途中休憩で頂く為、料理長がサンドイッチを用意してくれるそうだ。遠足みたいでわくわくする。1日中馬車なのでマタニティードレスの様なゆったりしたワンピースに着替えエントランスに向かう。

「へっ⁈」

エントランスには早朝なのにビッシリ使用人さんが並んでいて思わず後ずさりする。アレックスさんが笑顔できて腰に手を当て皆さんの前に出る。最前列にはケイン様とマニュラ様で一歩下がってエリックさんがいる。皆さんの視線が集中して恥ずかしくて嫌な汗が出てくる。

「春香。道中気を付けて。ここは春香の家だからいつでも帰っておいで。私も王都に行くときは会いに行こう」
「私の可愛い娘。母はここで待っているわ」
「ハルカ。ランの子供が生まれたら連絡するよ。会いに来いよ!」
「ありがとうございます。皆さんお世話になりました。また近い内に遊びに来ます。お元気で!」

頭を下げてお辞儀する。

出発を急ぐのでアレックスさんに乗車を急かされ乗り込んだ。窓から手を振り早々に出発した。今回は バーミリオン侯爵領まではコールマン侯爵家騎士団が護衛してくれ、そこからは王都から来た王宮騎士団が護衛してくれる。

馬車ではずっとアレックスさんがくっついている。恥ずかしくて少し離れるとまた距離を詰められの繰り返しで、根負けしてアレックスさんに抱っこされている。半時間程走り小川沿いの草原で休息&朝食を頂く。騎士さん達がてきっぱきとタープとシートを用意してくれシートにクッションを置いてくれゆったりと座る。騎士さん達と朝食を食べ馬達を休憩させる。何もない草原だけど風が気持ちよくてリラックスする。隣で遠くを見つめるアレックスさん。変な感覚に少しドキドキしていたら出発の時間になりまた馬車に乗り王都をめざす。 いつもよりスピードが出ているので揺れる。思ったより体にダメージが…
アレックスさんがクッションを体の周りに置いてくれる。どの位走っただろう。やっと男爵領とバーミリオン侯爵領の境の街に着いた。宿で昼食を食べ部屋で少し休む。ここでコールマン侯爵家の騎士団の皆さんとはお別れだ。お礼を言いお別れした。
ここからは王宮騎士団に護衛してもらい王都を目指す。
バーミリオン侯爵領は広く綺麗な草原を馬車は進む。長い馬車移動をし日が落ち始め辺りが暗くなって来た。もう直ぐバーミリオン侯爵領を抜け王都に入るらしい。するとアレックスさんが 

「春香!見てごらん!」

窓から外を見たら遠くに王城が見えて来た。

「帰って来たんだ…」と感動する。
「町屋敷に向かう。今日は疲れているから町屋敷で休み。明日登城する。公爵もミハイル殿も屋敷に来ている筈だ。嬉しいか?」
「うん!」

目を細め優しく微笑むアレックスさんに照れてしまう。まだ激甘のアレックスさんに慣れない。慣れる日は来るのだろうか…

町屋敷の大門が見えて来た。1か月ぶりで緊張する。
「開門!」騎士さんの大声が響く。大きな音と共に大門が開き馬車は屋敷内に入って行く。
窓から見ていたら屋敷入口に沢山の人がいる。
馬が嘶き馬車が止まり扉が開くと先にアレックスさんが降りて手を差し伸べてくれる。
屋敷前にレイモンド父様、アビー母様とミハイルさん、クリスさんと屋敷の皆さんが出迎えてくれた。どうしよ!ちっちゃい子じゃないのに、恥ずかしくて思わずアレックスさんの後ろに隠れてしまった!いい歳した大人なのに自分が情けない…

「春香」

アレックスさんが優しく声をかけてくれ挨拶するように促す。多分真っ赤な顔をして皆さんの前に進み出て頭を下げて挨拶する。

「ただいま帰りました」

柔らかい花の匂いがしてアビー母様に抱きしめられる。

「やっと帰って来たわ。私の可愛い娘ちゃん。皆待っていたわよ。あらあら!少し合わない間に幼くなったの?恥ずかしがって…父様にもご挨拶して!」

アビー母様を見上げると横にレイモンド父様が居てアビー母様と私を抱きしめ

「お帰り。体は辛くないか?声の事も聞いている。無理はしない様に…愛らしい春香の声を聞かせてくれ」
「父様ご心配かけました」

気のせいか少し涙目の父様。迎えてくれる人が居るのがこんなに幸せな事なんだと実感する。

「さぁ…アレックス殿もお疲れでしょう。食事を用意していますからお入り下さい。ミハイル。春香ちゃんをお願いね」

皆さん気を使い屋敷に入って行った。ミハイルさんと残され緊張する。
ミハイルさんは私の少し前で止まり見つめている。ミハイルさんの戸惑いを感じこの距離がもどかしい…

「くしゅん!」

日が暮れて肌寒くなって来てくしゃみが出た!

『恥ずかしい!!』

なんでこのタイミングで出るの!

「ハル。抱きしめていいか?」
「うん…」

ミハイルさんは赤ちゃんを抱くように優しく抱きしめる。久しぶりのミハイルさんの高めの体温と香りに心が満たされて行く。

『大丈夫!震えないし怖く無い』

ミハイルさんの胸元に顔を埋めてすりすりする。心地よくてずっとこうして居たい。

「ハル。俺が怖く無いのか?」
「ミハイルさんは私を守ってくれる人だって分かったからもう怖く無い。でもね…まだ急に触れられると体が強張る事があるから、そこは配慮して欲しいです」
「よかった…一生ハルに触れられないかと思ったよ。俺はハルを傷つけないし全てのものから守るよ。だから俺を受け入れてくれ」

後方で足音がして振り返ろうとすると私の頭を抱え込むミハイルさん。

「ミハイル殿。春香は疲れている積もる話あるだろうが、とりあえず休ませてくれ」
「アレックスさん大丈夫だよ」
「明日は陛下との謁見もある早く休んだ方がいい。クリス、春香をレイモンド様の所へ」

気が付くとクリスさんが来ていた。

「畏まりました。春香様どうぞこちらへ」

ミハイルさんは腕を解きクリスさんがエスコートしてくれる。

「二人は?」
「ハル、すぐ行くから先に行ってくれ」

不穏な空気にこの場に残ろうとしたらクリスさんが小声で

「心配は要りません。揉める事は無いでしょう。さぁ風邪をひきますよ」

半ば強引にクリスさんに連行される。確かに喧嘩しそうな雰囲気ではないけど少し心配だ。
サロンで温かいお茶を頂きレイモンド父様とアビー母様と話をしてたらミハイルさんとアレックスさんが帰って来た。険悪な雰囲気は無くて一先ず安心する。何を話していたのか心配で思わずまじまじと2人を見ているとアレックスさんが

「春香。心配するな。喧嘩などしていないよ」

アレックスさんの言葉に安心してミハイルさんを見ると微笑んでくれる。

「さぁ!料理長が春香ちゃんの好きなものを沢山作ってくれたわ!皆で食事にしましょう」

母様の呼びかけで皆で食堂に向かい楽しく食事をとる。アビー母様のお酒のピッチがいつも以上に早くて心配して見ていたら、その様子を微笑ましく見ているレイモンド父様。本当に父様は母様が好きなのが分かる。私もあんな仲睦まじい夫婦になれればいいなぁ…

『んっ?夫?』

ミハイルさんとアレックスさんが目に入り赤面する。ここに残るなら夫はミハイルさん?アレックスさん?陛下が言ったみたいに“一妻多夫”で夫は二人?

『あっ!忘れていた!ローランド殿下もだ。だから3人⁈』

想像をして一気に頬に熱を持つ。するとミハイルさんとアレックスさんが同時に席を立ち私も元に駆け寄り心配そうに

「ハル!」「春香!」

どうやら顔が赤くなった私が熱を出したのかと心配し駆け付けた様だ。
大丈夫と何度言っても二人は引き下がらず、結局二人に付き添われ自室に戻る事になった。
扉前でお礼を言うと2人は交代で抱きしめてミハイルさんは頬に、アレックスさんは額に口付けて部屋に戻って行った。また照れて汗をかいて1か月ぶりの自室に入る。部屋は綺麗に整えられエリスさんが掃除してくれていたようだ。浴槽にお湯を張りゆっくり湯浴みをし、座りっぱなしで凝り固まった体を解す。湯上がり肌触りのいい夜着に着替え戸締りをしてベッドに入った。

「あ~小さいベッド最高!このこじんまりしたサイズ感安心するわ」
ベッドの潜り込んだら帰って来たと実感し今晩はいい夢が見れそうだ!

「おやすみなさい!」


あれ…あれは誰?
あのシルエットは…ミハイルさん?その横は誰?綺麗な桜色の髪の背の高い女性。後ろ姿で顔は分からない。

『ミハイルさん?』
『…』

ミハイルさんは聞こえているはずなのに返事もしてくれない。隣りの女性がミハイルさんの手を引っ張りどんどん離れて行く。慌てて走ろうとしたら地面から蔓が出て来て足に絡み付く。

『ミハイルさん!待って』
『…』

振り返ってこっちを見たのに無反応。何で!悲しくて涙が出て来る。手を伸ばしたらまた蔓が伸びて腕に絡む。謎の女性は振り返り

『○#$☆…のくせに』
『何?待って!』

2人はどんどん離れていく!



「春香ちゃん‼︎」
「へ?アビー母様?」

目の前に私の手を握ったアビー母様がいる。あれ?

「春香ちゃん。夢見が悪かったのね…可哀想にこんなに泣いて!夢であってもうちの娘を泣かすなんて許せないわ!」
「何で母様がここに?」

ベッドサイドの時計を見たら5時を過ぎている。寝過ぎだ!

「起きて来ないから心配して見に来たのよ。疲れているのね…起きれる?」
「すみません。大丈夫です。早く用意しないと今日は王城に行くんですよね⁉︎」
「時間は決まってないから慌てなくていいわよ。まずは湯浴みしてさっぱりしなさい」

自分を見たらすごい寝汗!慌てて起きて浴室に行く。

「春香ちゃん。慌てなくていいから、身支度出来たら食堂に来てね」
「はぁ~い!」

久しぶりに夢を見た。凄い嫌な夢だった。おかしい…明晰夢を見れるから悪夢はコントロール出来るはずなのに…
凄く嫌な予感がしてきた。明け方に見る夢は予知夢だと聞いたことがある。あの夢に出て来た女性と関わる事になるのだろうか…

胸騒ぎがしたがとりあえず早く身支度して朝食を食べないと…

この時はあまり深く考えて無かったが、やっぱりこの夢は予知夢になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。 その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

処理中です...