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67.女騎士
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「なんで?」
「春香が来るのを待っていられなくて迎えに来たんだよ」
今ローランド殿下の腕の中にいます。身支度を整えて朝食を食べる為に食堂に向かっていたらクリスさんに会い何故か食堂に行かず応接室に連れていかれ、入室するなり殿下に抱きしめられた。
ローランド殿下の腕の中で状況が分からないが、ミハイルさんとアレックスさんの声がする。
「春香。もう声も問題ないようだね。どうやらアレクも春香の騎士だったんだね。アレクから聞いたよ」
「えっと…まずはご心配おかけしました。皆さんのおかげで無事話せるようになりました」
殿下は私の頭に頬を乗せてすりすりして
「はぁ…春香の愛らしい声が聞けて幸せだよ…朝食未だだよね。ここに用意してもらおう」
「はい。ですが取りあえずミハイルさんとアレックスさんに朝の挨拶をしたいので離していただけますか?」
やっと殿下に開放してもらいミハイルさんとアレックスさんにご挨拶します。
少しするとエリスさんが朝食を運んできてくれた。お三方は優雅にお茶を飲みその横で朝食を頂いています。
『それにしても3人は美形だよね…私一人だけ場違いだわ…』そんな事を考えながら食べていたら
「春香。アレクから報告があったがアレクから心を受け取ったらしいね」
「うっぐ!ごほごほ!急に何ですか!」
いきなり言われてむせてしまう。何故か2人とも反応が無く戸惑っていると
「本当は我々は春香を自分だけの妻にしたんだ。しかしそれは叶わな。それ以前に春香がこの国に留まってくれなければ意味がない。春香を留める事が出来る者が居ればこの際誰でもいいんだ。今回のコールマン領で春香とアレクとの距離が縮まったと聞いている。そこでアレクに確認したら春香に想いを告げたと聞く。ミハイルも私もアレクを認めているんだ。春香が3人の誰を選んでも幸せにするだろう。出来るならば三人の想いを受け止めて欲しいのが本音だがね」
するとミハイルさんが目の前で跪き手を取って
「今の殿下の話は俺達が勝手に話合い決めた話で強制するものでは無い。ハルは自分が思うままでいいんだ」
「私…」
「俺らは生涯春香しか目に入らないから急く事はない」
「「「へ⁈」」」
またアレックスさんの無自覚の激甘な言葉セリフだ。ミハイルさんは苦笑し殿下は大笑い。
「”愛”は人を変えるんだなぁ!ミハイル其方もアレク位愛を囁かないと春香に振り向いて貰えないぞ」
眉間に皺を寄せて難しい顔をするミハイルさん。思わず
「ミハイルさんは2人の時な甘々なお言葉を下さいますよ!」
「「!!」」
殿下とアレックスさんは驚いた顔をしミハイルさんは狼狽えて
「ハル。恥ずかしいやめてくれ」
「私が知らない間に2人は春香に愛を囁いていたんだな!私も精進しなければ春香に愛想尽かされる!」
「「「あっはぁぁ!」」」
今!凄く満たされて胸がぽわぽわする。素敵な男性に愛されているし恵まれている。気が付いたら涙が出ていた。
「「春香!」」「ハル」
「違う!悲しいんじゃないの!嬉し泣きです」
この後3人にぎゅうぎゅうに抱き締められた。
そこに様子を見に来たレイモンド父様が抱き潰されそうな私に驚愕し、3人を蹴散らし私を抱え込んだ。嬉し泣きしている私を見て3人が泣かせたと勘違いしたレイモンド父様は殺気立つ。慌てて父様に事情を説明するとポケットからハンカチを出して涙を拭ってくれる。
この後、アビー母様が来るまで父様は私を離してくれず、3人からクレームを受けていた。
そして直ぐ部屋に来た母様に男性陣は怒られ登城準備を始めた。部屋に戻り桜色のドレスに着替えて玄関に向かう。玄関前に馬車が停まっていて前に殿下とレイモンド父様とアレックスさんがいた。
何か揉めている様だ。どんどんヒートアップしている。どうやら誰が私と座るかで揉めている。皆さん忘れていませんか⁈陛下が待ってますよ!
結局ローランド殿下が父様とアレックスさんは帰り私と帰るのだから、行きは譲る様に命じ2人が折れた。
殿下がずっと私の手を握りずっとベタベタしてくる。前に座る父様とアレックスさんの表情が怖い。
早く着いて!
気不味い雰囲気のまま城に着いた。
殿下のエスコートで馬車を降りると宰相様がいて陛下の元に案内してくださる。
城の奥にある謁見の間に着くと陛下と騎士さんと文官さんが数名いた。騎士の先頭にジョシュさんが居て、嬉しくて思わず手を振ると王子スマイルを返してくれた。
ローランド殿下のエスコートで陛下の前に行くと陛下は優しくハグして頭を撫でる。そして陛下の前に殿下と並んで立つと陛下が話し始められる。
「春香。この度の其方の働きによりヴェルディアと友好を結べ感謝している。褒美として何かして欲しい事や欲しい物はないか?」
「ありがとうございます。私の出来ることをしただけで大した事はしておりません。それに皆さんに良くしていただいていますので必要ありません」
マジ要りません。だってまだ帰るかもしれないし…
「しかしだなぁ!今回の事で光石の輸入が増えレイシャルは光に溢れ民が豊かになり…」
「陛下。春香は奥ゆかしく謙虚なのです。無理強いはいけません。春香も今で無くていい。何かあれば私に言ってくれればいいよ」
褒美とか反対に怖い。本当に皆さんに良くしていただいているので不満はないもん。
すると陛下は咳払いをし座り直し
「昨晩ヴェルディアからガウスター王のご逝去の知らせが入った。ヴェルディアは今日国葬をし6日後に新王の戴冠式行われる。我がレイシャルにも招待状が届いており、儂の代わりにローランドが参加する。先日ジャン王太子来国の際にここにいる春香嬢が王太子の手助けをし、ジャン王太子が感謝されておった。その時の礼も兼ねて春香も招待されておる。春香。ローランドとヴェルディアへ行ってもらいたい。護衛にジョシュと精鋭部隊をつける故安心するといい」
「はい。ありがとうございます」
「出発は3日後。シュナイダー公爵領の港から出港し5日間の滞在とする」
こうして正式に私のヴェルディア行きが決まった。
殿下のエスコートで陛下の執務室に移動して、詳しい説明を受ける事になる。執務室でお茶をいただいていると陛下がお見えになった。ラフな服に着替えられ着席されると早速ヴェルディア訪問についての説明が始まる。
「今回、アレックスはローランドの護衛に付き春香にはジョシュが付く。そして侍女を兼ねて女騎士を春香に付ける」
そうすると宰相様が扉を開けると一人の女性が入って来た。あれ?知っている…
「メリージェーンさん⁈」
「はい。春香様の護衛が出来光栄にございます」
そう!騎士服を纏ったアビー母様の姪のメリージェーンさんだった。びっくりしていたらメリージェーンさんは私の前に来て優しく抱きしめ。
「私が盾となり貴女を守ります」
アビー母様と似ていていい香りがするし背が高く安心感がある。しかしある事に気付く
「でも!メリージェーンさんは伯爵家のご嫡男と婚約中ではなのですか?」
「それは私が説明しよう」
陛下が静かに話し出した。どうやらまた色々あるらしく私に取り入ろうとする者が多いそうだ。騎士では同行できない場所もある為女性騎士をつける事になった。しかしレイシャルには女性騎士は少なくどうしようか考えていたら、アビー母様がメリージェーンさんを推薦した。母様の家系は代々ゴラス王家の騎士をしていて母様もゴラスにいた時は王女の護衛騎士をしていた。お姉さんの娘さんのメリージェーンさんも婚約するまで王宮騎士団で騎士をしていたそうだ。
「今回のヴェルディア訪問にあたり陛下より命受け婚約者も快諾下さりお受けした次第です。暫く訓練していなかったので、ここ数日叔母さまに訓練して頂きました。叔母さまの代わりにこの剣で春香様をお守りいたします」
「えっと…よろしくお願いします。あの…年も近いし出来れば“様”はやめてください。呼び捨てでお願いします」
「しかし…」
「春香ちゃんは謙虚なんだよ。メリージェーン春香ちゃんの希望通りにしてあげてよ」
ここでジョシュさんが助け舟を出してくれ上手く話がまとまった。
「あの…陛下質問してもいいですか?」
「許そう。何だ?」
「また物騒な事が起きているんですか?」
「ふむ…」
この後近隣諸国との確執について話をされた。どうやらヴェルディア前王はワンマンで敵をつくりやすい人でヴェルディアは孤立していたらしい。
しかしヴェルディアは鉱物多く有し他国は取引したく色々手を尽くしていたそうだ。そこに王の逝去で友好的なジャン王太子に王が代わる。
チャンスとばかりにヴェルディアと交渉する為に多くの国の代表がヴェルディアに集まる。
そこで問題が…レイシャルに潜んでいる密偵がジャン王太子をテクルスが召喚した乙女が手助けした事が知れ、今回の王の交代も乙女が嚙んでると見ていて乙女との接触を目論んでいる。
「つまり、春香に接触したい者が多いという事だ」
『うわぁ…ご遠慮したい』こっそり行ってそっと帰って来たい。
「その中でもアフルガン帝国はヴェルディアが多く産出する“冷石”取引を切望している。彼らは粗暴な者が多く強引な気質な者が多く厄介だ」
「“冷石”って?」
どうやら“光石”と同じ様な鉱石で“冷気”を蓄積する鉱物。冷蔵や熱気を冷やす役目をする。レイシャルは年中温暖な気候なので冷石は冷蔵にしか使用しない。しかしアフルガンは気温が高い国で冷蔵の他に空調にも使われ多く消費する。しかし冷石を採掘する国が少なく困っている様だ。
「へぇ…」
後で殿下に聞いたらヴェルディアではほかに暖石や水石なども多く採掘されているそうだ。鉱物名を聞いただけで用途が分かる。この世界にはガスや電気が無いのに案外生活水準が高いから不思議だった。鉱石があるおかげで生活に不便はない。ちなみにレイシャルは水石は多く取れるらしく水に困ったことが無いらしい。そしていつも何処かでこの鉱石の取引で揉めているそうだ。それを聞くと益々行くのが嫌になって来た。表情が曇った私に殿下が
「春香は式典だけ出席すれば後は自由だ。観光してもいいし嫌なら部屋に閉じこもってもいいよ」
「本当に?」
殿下がそう言ってくれて少し安心する。外交とか言って連れまわされるのは嫌だし、人見知りには拷問の様なものだもん。
この後、殿下にコールマン領であった事を改めて聞かれ、まだ長く話せないからゆっくり話しコールマン家の皆さんと殿下に感謝を述べた。反対に陛下からはヴェルディアと友好を結ぶ手助けをした事を感謝された。
こうして陛下への報告も終わり町屋敷に戻る事になる。殿下とはここでお別れです。
馬車まで移動すると名残惜しそうに殿下が抱きしめてくる。何度か背中を叩き終わりを告げるけどさらに強く抱きしめられる。ちょっとイラッとして…
「殿下!抱擁が長いです…皆さんお待ちですから離して下さい。また3日後に会えるでしょう!」
「もう少しこのまま。春香を堪能したい…ぶっ!!」
殿下はレベル5のアレックスさんに引き離され不満げな顔をしている。
「殿下いい加減にして下さい。春香が嫌がっている」
アレックスさんが殿下を諫めている間にジョシュさんが馬車にエスコートしてくれやっと馬車に乗り帰る事が出来た。
交流を持つために今日からメリージェーンさんが町屋敷に泊まる。話し相手が増えて嬉しい。屋敷に戻るとミハイルさんが迎えてくれた。
馬車を降りてアレックスさんと話していると、少し前でミハイルさんとメリージェーンさをが話をしている。その様子に今朝の夢を思い出した。
確か夢の女性はメリージェーンさん位の背丈で…
「・・・」思い出したらブルーになって来た。
「春香?」
「ごめんなさい。ぼーとしていて。アレックスさん桜色の髪の女性ってゴラスだったら普通にいるの?」
「…いきなりなぜそんな事を言い出すんだ」
「夢で出て来たから気になっただけ」
「居るが・・・」
何故か言い淀むアレックスさん。するとアビー母様が来てメリージェーンさんと私の手を取り
「疲れたでしょう!お茶にしましょう!」
と強引に連行される。結局桜色の髪の女性の情報を得れず、この後美味しい茶菓子ですっかり忘れてしまう。
「春香が来るのを待っていられなくて迎えに来たんだよ」
今ローランド殿下の腕の中にいます。身支度を整えて朝食を食べる為に食堂に向かっていたらクリスさんに会い何故か食堂に行かず応接室に連れていかれ、入室するなり殿下に抱きしめられた。
ローランド殿下の腕の中で状況が分からないが、ミハイルさんとアレックスさんの声がする。
「春香。もう声も問題ないようだね。どうやらアレクも春香の騎士だったんだね。アレクから聞いたよ」
「えっと…まずはご心配おかけしました。皆さんのおかげで無事話せるようになりました」
殿下は私の頭に頬を乗せてすりすりして
「はぁ…春香の愛らしい声が聞けて幸せだよ…朝食未だだよね。ここに用意してもらおう」
「はい。ですが取りあえずミハイルさんとアレックスさんに朝の挨拶をしたいので離していただけますか?」
やっと殿下に開放してもらいミハイルさんとアレックスさんにご挨拶します。
少しするとエリスさんが朝食を運んできてくれた。お三方は優雅にお茶を飲みその横で朝食を頂いています。
『それにしても3人は美形だよね…私一人だけ場違いだわ…』そんな事を考えながら食べていたら
「春香。アレクから報告があったがアレクから心を受け取ったらしいね」
「うっぐ!ごほごほ!急に何ですか!」
いきなり言われてむせてしまう。何故か2人とも反応が無く戸惑っていると
「本当は我々は春香を自分だけの妻にしたんだ。しかしそれは叶わな。それ以前に春香がこの国に留まってくれなければ意味がない。春香を留める事が出来る者が居ればこの際誰でもいいんだ。今回のコールマン領で春香とアレクとの距離が縮まったと聞いている。そこでアレクに確認したら春香に想いを告げたと聞く。ミハイルも私もアレクを認めているんだ。春香が3人の誰を選んでも幸せにするだろう。出来るならば三人の想いを受け止めて欲しいのが本音だがね」
するとミハイルさんが目の前で跪き手を取って
「今の殿下の話は俺達が勝手に話合い決めた話で強制するものでは無い。ハルは自分が思うままでいいんだ」
「私…」
「俺らは生涯春香しか目に入らないから急く事はない」
「「「へ⁈」」」
またアレックスさんの無自覚の激甘な言葉セリフだ。ミハイルさんは苦笑し殿下は大笑い。
「”愛”は人を変えるんだなぁ!ミハイル其方もアレク位愛を囁かないと春香に振り向いて貰えないぞ」
眉間に皺を寄せて難しい顔をするミハイルさん。思わず
「ミハイルさんは2人の時な甘々なお言葉を下さいますよ!」
「「!!」」
殿下とアレックスさんは驚いた顔をしミハイルさんは狼狽えて
「ハル。恥ずかしいやめてくれ」
「私が知らない間に2人は春香に愛を囁いていたんだな!私も精進しなければ春香に愛想尽かされる!」
「「「あっはぁぁ!」」」
今!凄く満たされて胸がぽわぽわする。素敵な男性に愛されているし恵まれている。気が付いたら涙が出ていた。
「「春香!」」「ハル」
「違う!悲しいんじゃないの!嬉し泣きです」
この後3人にぎゅうぎゅうに抱き締められた。
そこに様子を見に来たレイモンド父様が抱き潰されそうな私に驚愕し、3人を蹴散らし私を抱え込んだ。嬉し泣きしている私を見て3人が泣かせたと勘違いしたレイモンド父様は殺気立つ。慌てて父様に事情を説明するとポケットからハンカチを出して涙を拭ってくれる。
この後、アビー母様が来るまで父様は私を離してくれず、3人からクレームを受けていた。
そして直ぐ部屋に来た母様に男性陣は怒られ登城準備を始めた。部屋に戻り桜色のドレスに着替えて玄関に向かう。玄関前に馬車が停まっていて前に殿下とレイモンド父様とアレックスさんがいた。
何か揉めている様だ。どんどんヒートアップしている。どうやら誰が私と座るかで揉めている。皆さん忘れていませんか⁈陛下が待ってますよ!
結局ローランド殿下が父様とアレックスさんは帰り私と帰るのだから、行きは譲る様に命じ2人が折れた。
殿下がずっと私の手を握りずっとベタベタしてくる。前に座る父様とアレックスさんの表情が怖い。
早く着いて!
気不味い雰囲気のまま城に着いた。
殿下のエスコートで馬車を降りると宰相様がいて陛下の元に案内してくださる。
城の奥にある謁見の間に着くと陛下と騎士さんと文官さんが数名いた。騎士の先頭にジョシュさんが居て、嬉しくて思わず手を振ると王子スマイルを返してくれた。
ローランド殿下のエスコートで陛下の前に行くと陛下は優しくハグして頭を撫でる。そして陛下の前に殿下と並んで立つと陛下が話し始められる。
「春香。この度の其方の働きによりヴェルディアと友好を結べ感謝している。褒美として何かして欲しい事や欲しい物はないか?」
「ありがとうございます。私の出来ることをしただけで大した事はしておりません。それに皆さんに良くしていただいていますので必要ありません」
マジ要りません。だってまだ帰るかもしれないし…
「しかしだなぁ!今回の事で光石の輸入が増えレイシャルは光に溢れ民が豊かになり…」
「陛下。春香は奥ゆかしく謙虚なのです。無理強いはいけません。春香も今で無くていい。何かあれば私に言ってくれればいいよ」
褒美とか反対に怖い。本当に皆さんに良くしていただいているので不満はないもん。
すると陛下は咳払いをし座り直し
「昨晩ヴェルディアからガウスター王のご逝去の知らせが入った。ヴェルディアは今日国葬をし6日後に新王の戴冠式行われる。我がレイシャルにも招待状が届いており、儂の代わりにローランドが参加する。先日ジャン王太子来国の際にここにいる春香嬢が王太子の手助けをし、ジャン王太子が感謝されておった。その時の礼も兼ねて春香も招待されておる。春香。ローランドとヴェルディアへ行ってもらいたい。護衛にジョシュと精鋭部隊をつける故安心するといい」
「はい。ありがとうございます」
「出発は3日後。シュナイダー公爵領の港から出港し5日間の滞在とする」
こうして正式に私のヴェルディア行きが決まった。
殿下のエスコートで陛下の執務室に移動して、詳しい説明を受ける事になる。執務室でお茶をいただいていると陛下がお見えになった。ラフな服に着替えられ着席されると早速ヴェルディア訪問についての説明が始まる。
「今回、アレックスはローランドの護衛に付き春香にはジョシュが付く。そして侍女を兼ねて女騎士を春香に付ける」
そうすると宰相様が扉を開けると一人の女性が入って来た。あれ?知っている…
「メリージェーンさん⁈」
「はい。春香様の護衛が出来光栄にございます」
そう!騎士服を纏ったアビー母様の姪のメリージェーンさんだった。びっくりしていたらメリージェーンさんは私の前に来て優しく抱きしめ。
「私が盾となり貴女を守ります」
アビー母様と似ていていい香りがするし背が高く安心感がある。しかしある事に気付く
「でも!メリージェーンさんは伯爵家のご嫡男と婚約中ではなのですか?」
「それは私が説明しよう」
陛下が静かに話し出した。どうやらまた色々あるらしく私に取り入ろうとする者が多いそうだ。騎士では同行できない場所もある為女性騎士をつける事になった。しかしレイシャルには女性騎士は少なくどうしようか考えていたら、アビー母様がメリージェーンさんを推薦した。母様の家系は代々ゴラス王家の騎士をしていて母様もゴラスにいた時は王女の護衛騎士をしていた。お姉さんの娘さんのメリージェーンさんも婚約するまで王宮騎士団で騎士をしていたそうだ。
「今回のヴェルディア訪問にあたり陛下より命受け婚約者も快諾下さりお受けした次第です。暫く訓練していなかったので、ここ数日叔母さまに訓練して頂きました。叔母さまの代わりにこの剣で春香様をお守りいたします」
「えっと…よろしくお願いします。あの…年も近いし出来れば“様”はやめてください。呼び捨てでお願いします」
「しかし…」
「春香ちゃんは謙虚なんだよ。メリージェーン春香ちゃんの希望通りにしてあげてよ」
ここでジョシュさんが助け舟を出してくれ上手く話がまとまった。
「あの…陛下質問してもいいですか?」
「許そう。何だ?」
「また物騒な事が起きているんですか?」
「ふむ…」
この後近隣諸国との確執について話をされた。どうやらヴェルディア前王はワンマンで敵をつくりやすい人でヴェルディアは孤立していたらしい。
しかしヴェルディアは鉱物多く有し他国は取引したく色々手を尽くしていたそうだ。そこに王の逝去で友好的なジャン王太子に王が代わる。
チャンスとばかりにヴェルディアと交渉する為に多くの国の代表がヴェルディアに集まる。
そこで問題が…レイシャルに潜んでいる密偵がジャン王太子をテクルスが召喚した乙女が手助けした事が知れ、今回の王の交代も乙女が嚙んでると見ていて乙女との接触を目論んでいる。
「つまり、春香に接触したい者が多いという事だ」
『うわぁ…ご遠慮したい』こっそり行ってそっと帰って来たい。
「その中でもアフルガン帝国はヴェルディアが多く産出する“冷石”取引を切望している。彼らは粗暴な者が多く強引な気質な者が多く厄介だ」
「“冷石”って?」
どうやら“光石”と同じ様な鉱石で“冷気”を蓄積する鉱物。冷蔵や熱気を冷やす役目をする。レイシャルは年中温暖な気候なので冷石は冷蔵にしか使用しない。しかしアフルガンは気温が高い国で冷蔵の他に空調にも使われ多く消費する。しかし冷石を採掘する国が少なく困っている様だ。
「へぇ…」
後で殿下に聞いたらヴェルディアではほかに暖石や水石なども多く採掘されているそうだ。鉱物名を聞いただけで用途が分かる。この世界にはガスや電気が無いのに案外生活水準が高いから不思議だった。鉱石があるおかげで生活に不便はない。ちなみにレイシャルは水石は多く取れるらしく水に困ったことが無いらしい。そしていつも何処かでこの鉱石の取引で揉めているそうだ。それを聞くと益々行くのが嫌になって来た。表情が曇った私に殿下が
「春香は式典だけ出席すれば後は自由だ。観光してもいいし嫌なら部屋に閉じこもってもいいよ」
「本当に?」
殿下がそう言ってくれて少し安心する。外交とか言って連れまわされるのは嫌だし、人見知りには拷問の様なものだもん。
この後、殿下にコールマン領であった事を改めて聞かれ、まだ長く話せないからゆっくり話しコールマン家の皆さんと殿下に感謝を述べた。反対に陛下からはヴェルディアと友好を結ぶ手助けをした事を感謝された。
こうして陛下への報告も終わり町屋敷に戻る事になる。殿下とはここでお別れです。
馬車まで移動すると名残惜しそうに殿下が抱きしめてくる。何度か背中を叩き終わりを告げるけどさらに強く抱きしめられる。ちょっとイラッとして…
「殿下!抱擁が長いです…皆さんお待ちですから離して下さい。また3日後に会えるでしょう!」
「もう少しこのまま。春香を堪能したい…ぶっ!!」
殿下はレベル5のアレックスさんに引き離され不満げな顔をしている。
「殿下いい加減にして下さい。春香が嫌がっている」
アレックスさんが殿下を諫めている間にジョシュさんが馬車にエスコートしてくれやっと馬車に乗り帰る事が出来た。
交流を持つために今日からメリージェーンさんが町屋敷に泊まる。話し相手が増えて嬉しい。屋敷に戻るとミハイルさんが迎えてくれた。
馬車を降りてアレックスさんと話していると、少し前でミハイルさんとメリージェーンさをが話をしている。その様子に今朝の夢を思い出した。
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「・・・」思い出したらブルーになって来た。
「春香?」
「ごめんなさい。ぼーとしていて。アレックスさん桜色の髪の女性ってゴラスだったら普通にいるの?」
「…いきなりなぜそんな事を言い出すんだ」
「夢で出て来たから気になっただけ」
「居るが・・・」
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