時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは

文字の大きさ
68 / 137

68.愛称

しおりを挟む
庭で草むしりしながらメリージェーンさんの訓練を見ている。木刀を振るメリージェーンさんはカッコいい!流石アビー母様の姪っ子だ。メリージェーンさんは背も高くスタイル抜群だ。バケツに入った雑草を持ちアビー母様とメリージェーンさんを見ていたら持っていたバケツを誰かが取った。横を見るとミハイルさんがバケツを持ってくれている。

「大丈夫。自分で運ぶから」
「ハルは重い物は持たなくていい」

皆んな過保護で私が何かしていると誰かしら手伝いに来る。運動不足だからせっせと動いているのに!

「運動不足解の為に家事してるのに手伝ってもらったら意味がないです!」
「何度も言うがハルは痩せすぎだ。もっと膨よかなっていい」
「だからって動かないとぷにぷにの締まりの無い体になるじゃないですか!」
「抱き心地良くて…あっいや!変な意味では無くてだなぁ!」
「ミハイルさんのエッチ!」

ミハイルさんを放置してアビー母様とメリージェーンさんの元に行き、私も木刀の扱い方を教えて欲しいとお願いする。少し二の腕や背中を引き締めたい。

「…」結局木刀の扱いは教えてもらえなかった。

「春香ちゃんはそのままが一番かわいいから何もしなくていいの」
「でも、動かないから締まりがなくてぷにぷになんですよ!母様の様に引き締まった格好いい体になりたい!」

するとメリージェーンさんが汗を拭きながら

「春香さんの背格好で私たちの様に引き締めるとバランスが悪いですよ。私はその女性らしい体は羨ましいけど…」
「うっ!でも運動不足はやっぱり体に良くないから」
「ならば散歩相手に犬でも飼う?」

どうやら鍛えるのは駄目みたいだが運動はいいみたい。そういえば領地の屋敷に居る時は暇だとワンダと走っていたなぁ…ワンダ元気かな⁈
母様は父様に相談してくれるそうだ。ワンダみたいな大型犬もいいけど、柴犬あたりの中型犬もいいかもしれない

ヴェルディアの出発まで町屋敷でのんびり過ごしている。あと2日後にはヴェルディアに行く事になる。はぁ…正直しんどい…
それにヴェルディアから帰ったらミハイルさんとの婚約解消するかを決め、付き合わせに参加するかもしくは帰るかを決めないといけない。
これに関しても気持ちがまだ揺らいでいて決めれていない。忙しいのを言い訳にしている。

「春香ちゃんそろそろ屋敷に戻ってね!」
「はぁ~い」

取りあえず今は先送りにして今は自分をお休みしよう。

その日の夕食時ミハイルさんが驚くことを言い出した。

「ハル。明日朝一に領地の港町に行くよ。俺と2人で」
「へ?何で?」
「先に行き殿下達とは現地で落ち合う」
「でも…」

急展開で頭が付いて行かない。あたふたしているとレイモンド父様が

「ずっとミハイルは春香と離れていたからね。そこに来てまたヴェルディアに数日行くとなると、また時間が取れない。春香も婚約解消するかの決断が近いんだ。ミハイルとゆっくり向き合うといい」

どうやら父様の許しが出ているようだ。アレックスさんをみたらレベル2だが反対はしていないみたい。まずは私とミハイルさんと公爵家の騎士数名で明日朝一領地の屋敷に向かいその日は屋敷で泊まる。翌日朝一で港町に向かいデートしてその日の夕方に来る殿下達と合流する事になった。

後で母様に聞いたがミハイルさんが父様に直談判したそうだ。コールマン領でアレックスさんと殿下と長く過ごし、自分には私と過ごす時間が少ない。もうすぐ付き合わせの時期も来るから、その前に向き合う時間が欲しいと…
確かにミハイルさんとデートもしていない。殿下とアレックスさんとはコールマン領の街でデートらしい事は確かにしたんだよね…トラブル付だけど。
港町ってなんだか楽しいそう。海が見れるのかなぁ⁈スケジュール的には大変なはずなのにわくわくする。

「じゃ!早速荷物を…」
「ハル大丈夫だ。エリスに頼んであるから何も心配いらないし、必要な物は港町でも十分揃えれるよ」
「はぁ…い」

またまた私の知らない間に色々決まっていて準備も出来ている。こうゆう事は事前に知らせて欲しいのが本心なんだけど…皆さんの顔を見ていたら言い出せなかった。
食後の後にアレックスさんがお茶に誘ってくれた。一瞬ミハイルさんが眉を顰めたが何も言わないので応じる。サロンに行くと隣に座り手を握って来る。

「何かありましたか?」
「いや、ミハイル殿の気持も分かるから納得したのだが…初めてなのだこんな気持ちは…これを悋気やきもちと言うのだなぁ…」

びっくりしてアレックスさんの顔をまじまじと見る。この人普段から甘い雰囲気が無いから偶に繰り出す激甘なセリフに驚くことが多い。

「しかし、春香はそろそろどうするか決断しなければならないから丁度いいのかもしれない…と今一生懸命自分に言い聞かせているんだ」
「アレックスさん…」
「春香。俺はお前に想いを告げている。”さん”呼びは距離を感じるからやめてくれ。“アレク”と呼んで欲しい。俺を愛称で呼ぶのは殿下だけだ。…いやまだ居た!母上だ。しかし親だから…。それはいい!春香は俺の特別だから呼んで欲しんだ」

突然のお願いリクエストに苦笑いし

「えっと…多分急には無理で…頑張ってみます」
「あぁぁ…でも今一度呼んでみてくれないか!」
「いっ今ですか⁈」

一気に全身から汗が噴き出す。目の前のアレックスさんは色気たっぷりな微笑みで私を見ている。緊張で挙動不審になる私…これはスルー&パスは出来なさそうだ。『よし!!』腹をくくる!

「あ…あれく?」
「あぁぁ…今最高に幸せな気分だ。春香抱きしめていいか?」
「うっうん」

アレックスさんはふんわりと優しく抱きしめる。私の顔が丁度アレックスさん胸にくる。するとアレックスさんが強く抱きしめた。
耳がアレックスさんの胸に押し当たる。

『!!』

アレックスさんの鼓動は早くつられて私もドキドキしてきた。

「明日ミハイル殿と出かけても春香の心の中に俺を置いてくれ…」
「うん」

暫く抱きしめられていたら背後から咳払いが聞こえ次にアレックスさんの舌打ちが聞こえる。

「春香様。明日の出発はお早いのでそろそろお部屋にお戻り下さい」
「はい。んっ?あれ?」
アレックスさんは腕を解いてくれない。

「アレックスさん?そろそろ戻るので…」
「春香。もう忘れたのか?」
「へ?」

そうアレックスさんは愛称呼びをご所望なのだ。でもやめて!クリスさんの前で恥ずかしいよ。
実は私の記憶が飛んだあの日からアレックスさんとクリスさんは明らかに仲が悪くなった。記憶の無い私には理由が分からない。聞いても2人共教えてくれないのだ。

「・・・あ・・れく 部屋に戻るから離して…」
「分かった」

アレックスさんは腕を緩め頬に口付け立ち上がっると、クリスさんが手を差し出したが、それをアレックスさんが払う。

「レイモンド様から春香様を部屋まで送るよう仰せつかっています。アレックス様はお部屋にお戻りを…」

あ…雰囲気が悪いよ…誰か!

そこにメリージェーン様が通りかかった。やった救世主発見!

「メリージェーンさん。一緒に部屋に戻って下さい!」
「えっ?あっはい。構いませんが…」

2人におやすみの挨拶とお辞儀をしてメリージェーンさんの腕にしがみ付く。
部屋へ続く廊下を歩きながらメリージェーンさんに謝り静かな廊下を話しながら歩いていたら直ぐに部屋に着いた。メリージェーンさんにお礼を言い部屋に入る。ソファーに座りリラックスしながら、あの二人が仲直りする方法は無いのか色々考えたが思い浮かばない。記憶が戻れば解決策も見つかるのだろうか⁈
そんな事を考えていたら11時になっていた。早く湯浴みをして寝ないと朝は3時半出発だ。急いで就寝準備をしベッドに潜り込んで寝んだ。


翌朝早く起きて身支度をしていたらエリスさんが来た。

「今日はこのワンピースをお召ください」

ハイウエストで少しボリュームのあるクリーム色のロングワンピースだ。着替えて食堂に行くとレイモンド父様とアビー母様がいて一緒に朝食を頂く。
食べ終わりお茶を飲んでいたら父様に呼ばれた。父様の席に行くと見た事ある皮袋を渡された。嫌な予感が…

「えっと…これって…」
「お小遣いだよ。港町は他国の品を扱う店が多い。買い物を楽しむにはいい街だ。好きなものを買って来るといい。足りなくなったらミハイルに言えばいい」

めっちゃ重い!中を見るのが怖いけど確認しないと…お礼を言ってそっと袋を開けたら…

『ひぇ!』

皮袋いっぱいに金ぴかの金貨が入っている。こんなの怖くて持ち歩けないよ…半泣きになりながら

「父様…こんな大金怖くて持ち歩けません!この1/10で十分です」
「春香ちゃん!ならばミハイルに持ってもらいなさい。領地でミハイルに手を出す馬鹿者はいないから」

色々断る理由を述べたが結局断り切れずいただく事に…本当にお2人とも過保護だ。お小遣いは領地の屋敷と町屋敷の皆さんのお土産に使う事にしよっと! すると食堂にミハイルさんが迎えにきた。
ミハイルさんに急かされ用意をし今馬車の前にいる。父様、母様とアレックスさんとメリージェーンさん。そしてクリスさんをはじめ屋敷の使用人の皆さんが見送りに集まってくれた。
皆さんにご挨拶し出発します。

ミハイルさんは上機嫌で私の横で私を抱きかかえています。元々無口なミハイルさんだからあまり会話は無いけど居心地はいいので苦にならない。
高めのミハイルさんの体温でやっぱり眠くなって来た。
目がしょぼしょぼしてきた私に寝てていいというミハイルさん。これで安心して寝れるわ…
この後直ぐに寝てしまった。しかしこのうたた寝の夢見が悪く嫌な思いをする事になる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。 その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...