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79.押しかけ?

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ハンナ王女は向かいの席に座り静かに微笑むが、反対に不気味に感じ表情を上手く作れない。

「初めての外交でお疲れではありませんか?」
「お気遣いありがとうございます。正直、もう部屋に帰りたいです」
「うふふ…正直なお方ですね。私も本来はこの様な堅苦しい場は苦手で部屋に帰りたいですわ」
「王女様でもですか?」
「王女という立場ですがまだ未熟ですから」

平民の私に話を合わせてくれているのだろう。堅苦しく無くて話しやすい。
この後少し世間話をしてリラックスしてきたらハンナ王女はお茶を一口飲み表情を変えた。

『キタ~~!何をぶっ込まれるのだろう⁈』

「私の姉は御存じですね⁈」
「はい。お会いした事はありませんが」
「私が出国直前に姉の従者から数名のお付の者を連れ、レイシャルに渡った事が報告をされました。ご存じの通り姉はシュナイダー公爵家のミハイル殿との縁を望み求婚してきました。その事で女王である母と喧嘩になり廃嫡を申し出てレイシャルに渡ったようです」
「へっ?」

ハンナ王女が言うにはアンリ王女に求婚していたジャン王太子が、ゴラスの王女を娶らなくても王に就き、ジャン王太子との婚姻の必要が無くなったと確信し、これでミハイルさんが求婚を断る理由が無くなったと思いミハイルさんの元へ押しかけた様だ。

ミハイルさんが女神の加護を受けている事を知らないからジャン王太子の件が無くなれは、自分を選んでくれると思っているのだろう。

『っという事は…』

私の表情を見たハンナ王女は溜息を吐き静かに

「恐らく今頃シュナイダー公爵家に無理やり滞在しミハイル殿にアプローチしていると思われます」
「・・・」

多分、私今口を開けて間抜けな顔をしていると思う。後ろに控えるジョシュさんの表情が曇り険しい顔をしている。するとハンナ王女はジョシュさんをみて申し訳なさそうに…

「姉は生まれながら女神の様に美しくテクルスの花嫁だと持て囃され自由に振舞い努力を怠った。姉上が女王になると私は必然的にヴェルディアに嫁ぐ事になるため厳しく育てられました。しかし姉には女王になる素質が無く私が女王になる事になったのです。私は女王になるのが嫌なのでは無いのです。王家に生まれた者として責務を真っ当するまでです。ただ王女として生まれたのに、なんでも自分の望みが叶うと思い自由奔放な姉に嫌悪感を抱いています。ジャン陛下もご立派でお優しいお方。伴侶となるには素敵なお方です。それをあの様に毛嫌いなんて…」
「そうですね。ちょっと熊さんだけど情の深い素敵なお方です」
「熊?」 

後ろでジョシュさんは笑いメリージェーンさんは咳払いして明らかに怒っています。多分後で反省部屋行き決定です。

「報告ではミハイル殿は春香様に求婚されていると聞き及んでいます。この様な話をして申し訳ないのですが早めにお知らせした方がいいかと思いお時間を頂きました。姉はいつも思い通りに行かないと直ぐに“廃嫡し好きに生きます”と言うのですが、今回は本気の様で信頼をおく侍女や騎士を連れてレイシャルに渡っています。
嫌な予感がしてならないのです。姉の勝手な行動でレイシャルとの友好関係にヒビが入らないか心配でなりません」

そう言い頭を下げるハンナ王女に焦り

「…でもまだアンリ王女殿下がやらかすと決まった訳では無いし、その大丈夫だと思います多分…」

この前見た夢を思い出し一気にテンショアが下がる。あれは予知夢だったのだろうか⁈
目の前に申し訳無さそうな表情をしたハンナ王女が目に入り慌てて笑顔をつくる。すると王女は

「春香様は心配では無いのですか? 婚約者フィアンセが他に女性に言い寄られて」
「…心配ですよ…でもミハイルさんを信じます」
「まぁ!」

ハンナ王女は頬を染め両手を頬に当て乙女しています。ハンナ王女には惚気に聞こえたかもしれないが、実は自分に言い聞かせている。ミハイルさんは大丈夫!信用できるって!

「そう想える殿方がいらっしゃる春香様が羨ましい。私は女王になる為に殿方に気を向ける事も無くここまで来ました。正直殿方とどの様に愛を育めばいいか分からず、今度のつき合わせでも上手くお相手と話せるか心配で…」
「分かります。元々私も人見知りな上に男性と話すのも苦手なんですよ」
「そうは見えませんわ!」
「レイシャルの男性は誠意と優しさをもって接してくれ、会話が苦手な私に合わせて下さる。きっとハンナ王女殿下も気を遣わず話せる素敵な男性と出会えますよ」

そう言ってジョシュさんを見たら

『!!』

なんて顔しいてるの?優しい眼差しをハンナ王女に向けて“惚れてます”全開だ。向けられているハンナ王女も満更でもなく頬を染めてジョシュさんをチラ見している。

『う…ん甘酸っぱいなぁ!』

ハンナ王女の恋愛の相談にのっていたらローランド殿下とアレックスさんが戻って来た。

「ハンナ殿下。春香と気が合うようですね」
「はい。とても楽しく出来ればお友達になっていただきたいわ」
「そんな恐れ多い!」
「春香!私の妃になれば身分の差は気にならないよ」
「え…と…」
「春香様はおモテになるのですね」

ローランド殿下を交えて少し歓談してハンナ王女と別れた。別れ際ローランド殿下がハンナ王女にジョシュさんを紹介していて珍しく緊張しているジョシュさん。メリージェーンさんとニヤニヤしながらその様子を見ていて、この後2人ジョシュさんを冷やかそうと密かに話した。

晩餐会も終わりやっと部屋に戻れる。疲れたが足取り軽く殿下とアレックスさんに部屋に送ってもらう。部屋にはまた面会を願う手紙が山積みになっていて殿下が眉を顰める。どうせ応じないならもう読まなくていいんじゃなぃ?
疲れたので湯あみを済ませ早めに寝室に行き、ジョシュさやメリージェーンさんにも休んでもらった。そしてベッドに入り今日あった事が頭をよぎる。

「アンリ王女か…ミハイルさん大丈夫かなぁ…ミハイルさんよりアビー母様が吠えていそうで怖いな…」

そんな事を考えながら眠りについた。

翌朝…いや昼前に目覚めた。時計とみると5時半だった!完全寝すぎだ。慌ててガウンを羽織り部屋の方へ行くとそこには殿下とアレックスさんが居た。

「良かった。昼からまた他国の代表と会談があり夕方まで戻って来れない。だからその前に春香の顔を見たかったんだよ」
「ごめんなさい。寝すぎました」
「春香はよく頑張っていた。ゆっくりすればいい」
「春香⁈昼食は一緒できるかなぁ?」
「勿論喜んで」

侍女さんに身支度を促され着替えと薄化粧をして部屋に戻るとテーブルに食事が用意されていた。
私の希望でジョシュさんとメリージェーンさんも一緒に食べる。ローランド殿下が来た時点でジョシュさんとメリージェーンさんは遠慮したけど、殿下は私が望んだ事だからと許可してくれた。5人でテーブルを囲み楽しく食事をする。
すると殿下からアンリ王女の話が出た。殿下もアンリ王女がレイシャルに入国した報告を受けているらしい。

「ヴェルディアに向かう船で受けた手紙では、まだシュナイダー公爵家には行っていない様だが、恐らくミハイルに会いに行くだろう。春香心配かぃ?」
「う…ん。心配:3で信頼:5でアビー母様が暴れてないかの心配:2って感じです」

真剣に言ったのに何故か皆が笑い出した。するとジョシュさんが

「母上が暴れる心配は5位心配した方がいいよ!春香ちゃん」
「そうですね。叔母さまは元々我儘なアンリ王女殿下に苦言を呈していましたからね。恐らくアンリ王女殿下は叔母さまが天敵のはずです」
「あまり揉めて欲しくないな…」

この後メリージェーンさんに心配され、皆んなに気を遣わせたくなくて”大丈夫”と答えた。
アンリ王女が女神くらい綺麗なら、男性の10人中9人は王女を選ぶだろう。残りの1人は特殊趣味の方でその方に選ばれるかも疑問の域だ。私の空元気を見透かしている殿下とアレックスさんは優しい眼差しをくれ頬と額にキスをくれた。

この後殿下とアレックスさは会談に向かい私はのんびりし1日部屋で過ごす。夕方になり殿下とアレックスさんが戻って来た。そして殿下から明日の予定が伝えられた。
明日の昼食はリリアン様と共にし、リリアン様の案内で王都を散策する事になった。
リリアン様のお惚気も聞けて胸ドキし少し気持ちが浮上する。
あとレイトン殿下とジャン陛下の面会はまだ調整中で帰国直前になるらしい。

殿下は各国の代表と会談で疲れているのに、暇な私の為に話し相手をしてくれる。殿下と話すのは楽しい。ちょこちょこ激甘なセリフにまだ慣れなくて焦るけどね。皆んなの優しさを感じ胸の奥がぽかぽかしている。

実は少し前からここに残ってもいいと思いだしている。まだ3人も夫を迎える事に抵抗はあるが、3人とも好きだと思う…たぶんね…
このヴェルディア訪問中に答えをだそうと思っている…けど今のところ

『3人と結婚する:3、帰る:2、結婚は分からないが残る:5』

ってな感じだ。叔母達がどうしてるか知れたら決心も着くんだけど…私がいなくても幸せでいて欲しいなぁ。
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