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95.謝罪文

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久しぶりに公爵家の町屋敷で皆さんと食事をする。またまたレイモンド父様とアビー母様の間に挟まれ食事の世話を受ける。
口腔内の傷も治りやっと病人食から卒業できた。今日は私の好きなポテトのポタージュとキッシュが出てテンションがあがる。
私以外の皆さん肉食獣だから気持ちいいくらいお肉を食べ、まるでフードファイターの様だ。すると父様が

「春香がいるといつもより食事が美味しく感じ食べて過ぎてしまった。明朝の訓練は私も参加しよう」
「アレックス殿も一緒になさい。当番騎士も参加するから」
「はい。春香に為に強くなる必要があるので…」
「・・・」

また無自覚の甘いセリフを言うアレックスさん。でも誰も反応しない。もしかして慣れてきたのか⁈そんな話をしていて思い立って

「アビー母様。私も参加したいです。今回の拉致の時も思いましたが私は非力過ぎます。護身術位は習得したいです」
「「「「必要ない」」」」
「へっ?」

声をそろえて拒否られた。

「ハルは鍛えなくていい。小さく柔らかいままでいいんだ」
「珍しくミハイル殿と意見が一致しましたね。俺が守るから必要ない」
「春香。訓練中に怪我をしたらどうするんだ!」
「春香ちゃんに怪我を負わせた騎士は大変な事になるわ。だからだめ!」

一斉に拒否され悲しくなってくる。すると控えていたクリスさんが

「春香様。でしたら見学だけしませんか?」
「はい。見学だけならいいよね⁈」
「いいわよ。でも大丈夫?朝が早いわよ!」
「頑張ります!」
「「だめだ!」」
「なんでよ!」

ミハイルさんとアレックスさんが反対し理由を聞いたら、他の騎士が私に気を取られ怪我をすると言う。

『いや…ないない!』

と心の中でツッコむ。
結局レイモンド父様の鶴の一声で見学はさせてもらえる事になった。実はこっそり端から訓練に混ざっちゃう作戦を計画中です。だって運動したもん!

食後は早目に部屋に戻る。だってアンリ王女の手紙を読みたいのだ。すり寄ってくる2人を巧みにかわしやっと部屋に着いた。ソファーに座り手紙を開封すると香水だろうか薔薇のいい匂いがする。流石だ女子力高し!
王女らしく丁寧な挨拶文で始まり謝罪の言葉が綴られている。そしてエリスさんに事が書かれていた。

『初めてエリスと会った時は没落寸前の子爵令嬢で困窮していたわ。あの子は身分は低いけど容姿は綺麗でしょう⁈ 私は見栄えがするから側に置いただけだった。しかし私の専属侍女になった事で、実姉に良縁か舞い込み実家を立て直すことが出来たそうよ。私は正直何もしていないし家臣の事なんて興味も無かったわ。しかしエリスは私を恩人だといい、まるで女神の扱いで少し怖いくらいだったわ。でも私は自分の事しか考えてなくてエリスの行き過ぎた言動も行動も注意もしなかった。そうしている内にエリスは恩人の邪魔をする春香が悪になり敵視する様になったね。
本来なら家臣の粗相は君主が責任を持たないといけないけど、本当に愚かな私は何とも思ってなかったわ』

エリスさんは純粋にアンリ王女の家臣としてアンリ王女の望みを叶えたかったんだ… エリスさんの言動が理解できて少し心が軽くなる。

「なんでここから字が小さいの⁈」

目を凝らさないと読めない。
「なになに…」

『私は昔から何をしても容姿しか褒められず、容姿だけが唯一の誇れる事にものになり、他に価値を見出せなかった。だから夫はこの世界で最も美しい殿方しかないと思っていたの。美しいローランド殿下は加護持ちで、夫婦関係を持てないのを聞き同じ位美しいと思ったの。今考えると失礼な話しよね。そして春香の温情でミハイルにも最後の求婚したら、ミハイルにを指摘されたわ。でもミハイルは優しく自分に好意を持ってくれた事に感謝した上で求婚を断った。ミハイルに”春香が来なければ私との未来はあったのか”聞いたら、はっきりと”無い”と言われたわ。
ミハイルは私に”失礼ながら王女は私を見ていない。愛しているのはご自分だけだ。それでは本当の愛は得れない”と言ったの。前の私なら激怒し不敬だとミハイルに罰を与えていたでしょう。しかしぐうの音も出なかったわ。本当に自分以外の人には全く関心が無かった。春香とミハイルの人柄に触れ自分の愚かさを知ったわ』

そうミハイルさんは不器用だが優しい人なのだ。ミハイルさんが褒められると嬉しい。テンションが上がってきたら、次の文が目に入り赤面する。

『そして負け惜しみでミハイルに”平凡な春香の何処がいいの⁈”と聞いたら惚気られたわ。聞いてる方が赤面する程にね。春香の話をするミハイルはとても柔らかい表情をし、恋をしている男の顔をしていたわ。私も相手を知り自分を相手に知ってもらったら本当の愛が得れるのかしら…』

アンリ王女の手紙は初めて会った時のような高飛車で傲慢な感じはなく好感が持てた。そして最後に更にちっちゃい字で…誰か!虫眼鏡持って来て!

『春香には借りがあるから友達になってあげますわ。王女と友達なんて名誉な事よ!感謝しなさい』

「ぷっ!ツンデレですやん!」

アンリ王女の可愛さが見えた気がした。きっと不器用で照れ屋なのかもしれない。口元を緩ませ読み進めると、また筆跡と文字の大きさが初めに戻り

家臣エリスが春香に失礼な発言をした事を、君主として謝罪を。春香の寛大な心をもって許していただきたい』

と書いてあった。

絶世の美女で王女だけどそれなり色々あるんだなぁ…手紙をしまいソファーに寝転がりぼんやり天井を見て

「春香…どうするんだい⁈」
「う…ん。ローランド殿下、ミハイルさん、アレックスさん。3人共素敵で私には勿体無いよ。でも好意を向けてもらえるのは嬉しい」
「なら残る?」
「に気持ちは動いてる」

と1人劇してみる。残るとして3人と結婚したら新居は?子供は?王妃になるの?
考えたら頭がクラクラする。考えるのをやめ明日に備えて今日は早く寝む事にした。
今の私の気持ちはここに残る方向に動いている。


翌朝、自然に目が覚めた。時計を見ると2時半過ぎだ。身支度したら時間ギリギリだ。急いで湯浴みをして動き易い服装にケイン父様に貰ったショールを羽織りエントランスに急ぐ。エントランスに続く階段を駆け降りていたら、エントランスにいたミハイルさんが私に気づき近付いてくる。そして後5、6段の所で見事につんのめる。

「ハル!」
「うっぁ!」

見事に落ちた!こういう時ってスローモーションになり周りがゆっくりになる。目の前に必死なミハイルさんが両手を広げている。

“ドサ!”

見事にミハイルさんの腕の中に落ちた。鍛えているミハイルさんは私を受け止めても全くぶれない。 
顔を上げたら悲壮な顔をしたミハイルさん。

「ごめんなっ…うっ!」

両手で頬を持たれて口付けてくるミハイルさん。長いキスに背中を叩く!
解放されたら…

「危ないじゃないか!」
「ごめんなさい!」
「痛い所は無いか⁈」
「うん。ありがとう」

安心したミハイルさんはやっと微笑んでくれた。あーやらかした!ミハイルさんでよかった。アレックスさんに見つかったら説教必至だ!

「春香…」
「ひっ!」

この声は…背後から冷気を感じミハイルさんに抱き付くと、背後から引っ張られダンスの様に手を持たれ半回転し目の前に怒っているアレックスさんが…
やっぱり説教が始まりレイモンド父様が来るまで続き半泣きになった。やっと説教が終わり只今落込み中。落ち込んでいたら父様が手を繋いでくれる。
そして一言

「次から気を付けなさい」
「ごめんなさい」
「アレックス殿は春香を本当に心配しているんだよ。さぁ仲直りしておいで」

そう言って繋いだ手をアレックスさんに差し出した。するとアレックスさんは手を引き抱きしめて

「すまん。言い過ぎた」
「私が悪いからいいの。私を心配してあえてキツく言ってくれたんだでしょ⁉︎ありがとう」
「つっ!」

みんな居るのに抱きしめてちゅーしてくる。自分が悪かったから嫌だと言えない。でも恥ずかしい!
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