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100.回想2《ローランドside》
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やっと春香に会えた。目の前に座る春香は緊張しているのか、そわそわ辺りを見渡している。私の頭の中は春香に触れたい衝動に駆られ必死に抑える。
すると春香がシュナイダー公爵家のジョシュが付き添うはずだが居ないと心配して聞いてくる。春香から他の男の名が出ただけでも嫉妬にかられる。
「別室で待機している。彼がいると口説けないからね」
思わず本音が出てしまう。加護を受け完璧王子と言われた私はここにはいない… 今の私は春香の気を引くのに必死だ…
『挨拶も出来たので帰りたい』
と言い出す春香に少し苛立ちを感じながら席を立って手袋を外し手を握る。痛みどころか気持ちいい温かさしか感じない。気が付くと手を引き抱きしめて春香の頬を両手で包み口付けようとし…
“バン!”
勢いよく扉が開き誰か入って来た。
「うっ!」
春香は私を突き飛ばし腕の中から離れていく…その先は…
ミハイルだ!何故だ!春香がミハイルに抱き付き、ミハイルも愛おしそうに抱きしめている。取り戻したくて手を伸ばすと春香を抱え込んだミハイルが
「春香が怯えている。触れないでいただきたい!」
そして視界の隅に父上が入り
「ローランドどういう事か説明をしなさい」
「陛下!私はやっと見つけた『迷い人』に会っていたのです。春香は私の唯一だ」
私の迷い人だ!何がいけないのか理解できない。だが…春香がミハイルの腕の中で泣いている。そして陛下から女性を泣かしてはならんと叱責されるが、全く意味が分からない。何故だ春香は迷い人で私の運命の相手なのだ。春香もそうだろう…
春香を落ち着かす意味も含め、話し合いをする為に陛下の執務室に移動する。足元が覚束ない春香をミハイルが抱き上げる。その様子を羨望の眼差しで見る。
『何故、私の腕に居ないんだ…』
先程から理解出来ないことが続き困惑している。何故春香は私に好意を向け無いんだ!
理解ができないまま陛下の執務室に着く。春香はミハイルとジョシュに挟まれ座り、やっと落ち着いた様だ。ミハイルが春香の手を握ると春香はミハイルに微笑む。その様子に嫉妬している私がいる。
陛下が春香にレイシャルに来た経緯を聞くと、なんと春香は“迷い人”では無いというのだ。それに帰り方が分かれば直ぐに帰ると言う。
そしてもし帰れない時は平民と付き合わせし、平民として暮らしたいと言い王族は嫌だと言い切った。これまで望まれる事があっても拒否された事ない私は愕然とする。
女性なら誰しも私の妃になりたいのではないのか! 陛下が懇願しても春香ははっきり断る。
すると宰相のモーリスが私に
「王子の立場をつかわず一人の男として求婚を」
と言う。一人の男?分からない…
更に春香は貴族も嫌だという。という事はミハイルも除外だ。奴と状況は同じだ!ミハイルより逢瀬を多く繰り返す内にきっと心をくれるだろう。何も分かっていない私は安易にそう考えていた。
「図書館での事は聞いていましたが…まさか侍女を身を呈して守るなんて春香は勇敢だ。普通の令嬢は侍女を助ける事なんてしないぞ」
「ハルは優しいんだよ」
「今思えば私は最低の男だったよ。春香が王子は嫌だと言うのが今なら理解出るよ」
そう、加護を受け完璧王子と言われ、何でもそつなくこなし女性からは秋波を送られてい来た私は、誰もが私を愛してくれると思っていた。そんな私を春香は初めは受け入れてくれなかった。
そして春香が帰りたいと叫び倒れた時に、春香の気持を知った。着の身着のまま裸足でこの国から出て行こうとした。私はずっと迷い人を恋うばかりで、春香自身を見ていなかった。所詮私は独りよがりだったんだ。そんな私に春香が心を向けてくれる訳ない。
春香は心の底から”帰りたい”と願い、テクルスがそれに応えアレックスが啓示を受けてテクルスの使いとなった。
春香はショックが大きかった様で、その日の記憶を無くした。これには私も生まれて初めて罪悪感を感じ落ち込んだ。
春香が静養中に自分を見つめ直し、春香を知り王子では無い”ローランド”を見てもらえる様に春香に向き合っていった。
徐々に春香も笑顔を向けてくれる様になっていく。春香が言葉を失った時には春香の言葉を唯一分かる私は、春香に寄り添う事で春香との距離が縮まり、“迷い人”ではなく春香という女性を愛するようになった。
今はここで春香を信じて待つしかない。春香は優しく人の為に我慢する所がある。周りを気にせずに己の気持と向き合ったら帰るかもしれない…
春香を思うと胸が苦しい…こんな感情は初めてだ。
『春香…今の春香の心に私は居るのだろうか…』
クリスが言うには時空の狭間のリミットは最長で明日の夕刻らしい。今晩は長い夜になりそうだ。
重く息苦しいこの部屋で待つしか無く、苦々しい顔をしたミハイルが視界に入る。
ミハイルの顔を見ていたらある事を思い付く
「ミハイル。春香がこの世界に来た時の話を聞いた事がない。其方が春香を保護した時の話を聞かせてくれ。夜は長いのだいいだろう⁈」
少し考えたミハイルは静かに話しだした。
すると春香がシュナイダー公爵家のジョシュが付き添うはずだが居ないと心配して聞いてくる。春香から他の男の名が出ただけでも嫉妬にかられる。
「別室で待機している。彼がいると口説けないからね」
思わず本音が出てしまう。加護を受け完璧王子と言われた私はここにはいない… 今の私は春香の気を引くのに必死だ…
『挨拶も出来たので帰りたい』
と言い出す春香に少し苛立ちを感じながら席を立って手袋を外し手を握る。痛みどころか気持ちいい温かさしか感じない。気が付くと手を引き抱きしめて春香の頬を両手で包み口付けようとし…
“バン!”
勢いよく扉が開き誰か入って来た。
「うっ!」
春香は私を突き飛ばし腕の中から離れていく…その先は…
ミハイルだ!何故だ!春香がミハイルに抱き付き、ミハイルも愛おしそうに抱きしめている。取り戻したくて手を伸ばすと春香を抱え込んだミハイルが
「春香が怯えている。触れないでいただきたい!」
そして視界の隅に父上が入り
「ローランドどういう事か説明をしなさい」
「陛下!私はやっと見つけた『迷い人』に会っていたのです。春香は私の唯一だ」
私の迷い人だ!何がいけないのか理解できない。だが…春香がミハイルの腕の中で泣いている。そして陛下から女性を泣かしてはならんと叱責されるが、全く意味が分からない。何故だ春香は迷い人で私の運命の相手なのだ。春香もそうだろう…
春香を落ち着かす意味も含め、話し合いをする為に陛下の執務室に移動する。足元が覚束ない春香をミハイルが抱き上げる。その様子を羨望の眼差しで見る。
『何故、私の腕に居ないんだ…』
先程から理解出来ないことが続き困惑している。何故春香は私に好意を向け無いんだ!
理解ができないまま陛下の執務室に着く。春香はミハイルとジョシュに挟まれ座り、やっと落ち着いた様だ。ミハイルが春香の手を握ると春香はミハイルに微笑む。その様子に嫉妬している私がいる。
陛下が春香にレイシャルに来た経緯を聞くと、なんと春香は“迷い人”では無いというのだ。それに帰り方が分かれば直ぐに帰ると言う。
そしてもし帰れない時は平民と付き合わせし、平民として暮らしたいと言い王族は嫌だと言い切った。これまで望まれる事があっても拒否された事ない私は愕然とする。
女性なら誰しも私の妃になりたいのではないのか! 陛下が懇願しても春香ははっきり断る。
すると宰相のモーリスが私に
「王子の立場をつかわず一人の男として求婚を」
と言う。一人の男?分からない…
更に春香は貴族も嫌だという。という事はミハイルも除外だ。奴と状況は同じだ!ミハイルより逢瀬を多く繰り返す内にきっと心をくれるだろう。何も分かっていない私は安易にそう考えていた。
「図書館での事は聞いていましたが…まさか侍女を身を呈して守るなんて春香は勇敢だ。普通の令嬢は侍女を助ける事なんてしないぞ」
「ハルは優しいんだよ」
「今思えば私は最低の男だったよ。春香が王子は嫌だと言うのが今なら理解出るよ」
そう、加護を受け完璧王子と言われ、何でもそつなくこなし女性からは秋波を送られてい来た私は、誰もが私を愛してくれると思っていた。そんな私を春香は初めは受け入れてくれなかった。
そして春香が帰りたいと叫び倒れた時に、春香の気持を知った。着の身着のまま裸足でこの国から出て行こうとした。私はずっと迷い人を恋うばかりで、春香自身を見ていなかった。所詮私は独りよがりだったんだ。そんな私に春香が心を向けてくれる訳ない。
春香は心の底から”帰りたい”と願い、テクルスがそれに応えアレックスが啓示を受けてテクルスの使いとなった。
春香はショックが大きかった様で、その日の記憶を無くした。これには私も生まれて初めて罪悪感を感じ落ち込んだ。
春香が静養中に自分を見つめ直し、春香を知り王子では無い”ローランド”を見てもらえる様に春香に向き合っていった。
徐々に春香も笑顔を向けてくれる様になっていく。春香が言葉を失った時には春香の言葉を唯一分かる私は、春香に寄り添う事で春香との距離が縮まり、“迷い人”ではなく春香という女性を愛するようになった。
今はここで春香を信じて待つしかない。春香は優しく人の為に我慢する所がある。周りを気にせずに己の気持と向き合ったら帰るかもしれない…
春香を思うと胸が苦しい…こんな感情は初めてだ。
『春香…今の春香の心に私は居るのだろうか…』
クリスが言うには時空の狭間のリミットは最長で明日の夕刻らしい。今晩は長い夜になりそうだ。
重く息苦しいこの部屋で待つしか無く、苦々しい顔をしたミハイルが視界に入る。
ミハイルの顔を見ていたらある事を思い付く
「ミハイル。春香がこの世界に来た時の話を聞いた事がない。其方が春香を保護した時の話を聞かせてくれ。夜は長いのだいいだろう⁈」
少し考えたミハイルは静かに話しだした。
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