女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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84.アーサーside

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「殿下!陛下が多恵様の捜索を7刻で中止することをお決めになりました!」
「分かった…例の者の行方は?」
「まだ連絡はありません」

陛下のご決断は納得できる。夜半に騎士団が動いていると国民や貴族に不安を煽る恐れがある。今は6刻半を超えたところだ。7刻までに私を欺いた輩を捕まえたい。多恵様の行方が分からなくなって直ぐ、王都の城門全てに騎士を置き身元の確認をしている。恐らく輩は王都から出れずに王都の何処かに潜んでいる筈。その輩を捕まえれば何かしら分かるはずだ!
いつもの俺ならあの程度の情報で狼狽える事は無い。冷静に状況を判断し指示を出して対処できた。しかし多恵様の事になると冷静さをかいてしまい、頭より体が先に動いてしまった。デュークに殴られ今は冷静に判断できる。
それより捜索しているトーイからも手掛かりなどの連絡もない。祭りが終わり人気が無くなったのと、同じようなスカーフ巻いた女性ばかりで目撃情報が乏しい。早く保護せねば今の時期夜半は冷える。あのか細い多恵殿は一晩持たないだろう。誰か善良な者が保護してくれていればいいのだが…

どんどん気が滅入っていたら、けたたましい音と共にデュークが扉を開けて入って来た。

「殿下!例の輩を王都端の倉庫で発見!今リック達が騎士棟に連行中です」
「よくやった!私も直ぐに騎士棟に向かう」

騎士棟の地下には牢獄と尋問部屋がある。尋問部屋で私にデマを流した者を尋問する。するとデュークが付き添いを志願した

「殿下。冷静に尋問ください。白を切られ時間がかかると多恵様発見に時間がかかります」
「分かっている。お前の一発で冷静になったから大丈夫だ」

殴られた頬を撫でながらデュークを見た。すると頭を下げたデュークは

「多恵様救出後に如何なる処分もお受けいたします」
「いや!この一発は私には必要だった故、不問とする。ありがとう」
「殿下・・・」

気持ちを切り替え尋問室の扉を開けると、目の前の椅子に男が座っている。浅黒い肌をしやたら眼光が鋭いこの男こそ私に騙した男だ。先に尋問していたマーカスとリックは殺気立っている。ここは私が冷静に対応せねば… 

「何か分かったか?」
「この者の身元を示すものは所持していませんでした。しかしチャイラ島で信仰されている“ブンタ教”のブレスレットを身に着けている事から恐らくチャイラ人と思われます。他の3人も同じブレスレットを身に着けておりました」

またチャイラがやらかした。溜息を吐きその男を睨むと目を逸らし太々しい態度を取る。尋問したマーカス曰く、多恵殿の行方は知らないと言う。
無意識に男の前に立った私は、気が付くと男の胸倉を掴んでいた。

「殿下冷静に!」
「多恵殿をどこにやった?!私が王子だからだと舐めない方がいい。チャイラとは国交が無い。お前たちに何かあっても分からない…存分にアルディアの恐ろしさを知ればいい」

すると男は上擦った声で

「俺らは攫っていない本当だ!俺らはバスグルの奴らに依頼されただけだ。バスグルの王が乙女に興味を持ったらしく、接触のチャンスを作って欲しいと言われた。あんたに乙女が迷子だと言えば捜しに行き見つけるだろう。乙女が分かればバスグルの奴が勝手に攫うなり接触なりする。後の事は俺らは知らない」

バスグルだと!⁈第4女神アリアの箱庭のバスグル共和国。王の力が強く閉鎖的な国で他国との交流を嫌っているのではなかったのか⁈なぜ今になって接近してきたのだ。これは調べる必要がありそうだ。

「バスグルの者はどうした!」

「あんたが乙女を探しに行った時点で報酬を受け取りその場で別れ後は知らん。きっとあんたをつけて乙女の見つけようとしていたんだろうな。しかしあんた王子だけあって超人気者だな。
あそこまでパニックになるなんてバスグルの奴らも予測してなかっただろう。結局乙女は行方知れずか… 恐らくバスグルの奴らも何もできず仕舞いさ。早く乙女が見つかるといいな。俺らは乙女には恨みつらみはないからな」

この男からこれ以上は効き出せそうになく

「リック!画師を呼べ。バスグルの奴の似顔絵を描かせる」
「御意!」

こいつらを締上げれば多恵殿の居場所が分かると思っていたのに…振りだしに戻った。
もうすぐ7刻だ。何も出来ないのか…
苛立ちが増し頭に血が昇るのを感じていたら、遠くから階段を駆け下りる足音がする。直ぐに息を切らせてトーイが駆け込んで来た。

「兄上、よろしいか!隣でお話があります!」

何か動きがあったようだ。デュークにこの場を任し隣の尋問室に移動する。

「兄上、今城の正門にモーブルの騎士2名がグリード王弟殿下の急ぎの書状を持ってきました。
急ぎ故私が確認した所、モーブル国境の村キラスの宿にて多恵殿を保護されているとの事。そしてキラスの森を夜半に超えるのは危険な為、明日グリード王弟殿下と10名の騎士でこちらに向かうと書かれていました。また使いの騎士の宿泊の願いと明日早朝使いの騎士に多恵殿の着替えを預けてほしいと。兄上ならグリード王弟殿下の筆跡がお分かりになるでしょう。本物か確認頂きたい」

トーイが差し出した封筒は確かにモーブル王国公式の物だ。慎重に内容と筆跡を確認する。間違いないグリード王弟殿下だ。
多恵殿の無事が分かり一気に力が抜ける。目の前のトーイは少し涙目だ。多恵殿の行方が分からなくなった時は自分を責めていた。

「トーイは陛下に報告。私はモーブルの騎士に状況を聞こう。騎士を私の執務室に」

トーイはまだ駆けて出ていく。安心したら足に震えが来た。マーカスが椅子を用意してくれ、倒れ込むように座る。

「情けないな…安心したら震えが来た」
「殿下。我々も同じです。私は殿下がいらっしゃらなかったらきっと泣いています。多恵様が無事でよかった」

一息吐き立ち上がる。そうだ落ち着いている場合ではない!モーブルの騎士に状況を聞かなければ。

愛しい人の無事が分かり俺の視界にやっと色が戻って来た。多恵殿が居ないと俺の世界は色が無くなるようだ。夜半の庭園がこんなにも美しく感じるのは多恵殿がこの世界にいてくれるからだろう…

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