秘密の仕事

桃香

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5.やりがい【子供時代】

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大山けんとは、ワクワクしていた。

さあて、どうやって料理をしようかなあ…

昨日の夜は寝れなかった。

あまり、やり過ぎても問題が大きくなるし、加減は必要だ。

だけど、加減はあまりしたくないなあと考えていた。

ただ、一つ決まっている事がある。


ターゲットはあけみ1人。

取巻きの男子達は、やらない。

何故なら、あけみを潰せば、とりあえず男子達は何もしないというのが、大山けんとの読みだった。


次の日。


稲本まなは休んでいた。

「僕の言う事を聞いてくれたのかなあ…ふふふ」

大山けんとはやる気に燃えた。

昼休みになり、あけみが騒いでいる。

「男子ー集合!!!」

5人ぐらいが周りに集まる。

さすがにクラス中の男子が集まる訳ではない。残りの男子は傍観者だ。

「今日さあーまなが休んでるじゃん。家に行ってさ、お見舞いしない?ははははは」

笑い方はいつも下品だ。

「お見舞い?珍しいね?心配してるの?」

1人の男子が聞いた。

「はあ????心配なんかしてる訳ないじゃん!!!」

「えっ?」

「誰かさあーカエルを殺してきてよー」

「カエル?何で?」

「手ぶらじゃ失礼じゃなーいー。だから、カエル顔のまなにぴったりなカエルをプレゼントするの」

あけみの顔は悪役そのものの顔だ。
可愛い顔も目が濁っているから、気持ち悪い。

「うっっ…イヤだよ…」

流石の取巻き男子もカエル殺しは嫌なようだ。

「あけみさん。今の会話聞いていたんだけど…」

大山けんとは声をかけた。

「何よ?何か文句でもあるの?」

大山けんとに声をかけられ、動揺が隠せない。前回も話したが、大山けんとはクラスでも浮いているし、みんなが近づけられない存在だからだ。

「あけみさんと2人きりになるなら、、、
カエル殺しは僕がやってあげる」

耳元で囁いた。

「えっ?マジで?」

クラスで浮いてる存在でもかなりのイケメンに言われたら、あけみは急に乙女になった。

「あっ…ありがとう。じゃ、2人きりね…放課後、下駄箱で待っていて」


「もちろんだよ。嬉しいなあ」


放課後、僕たちは土手の河原にいた。
カエルを探しに。

「いないなあー。カエル…」

「いるよ!絶対に!あいつに渡すんだから!」


「それにしても、どうしてあけみさんは、まなさんを目の敵にしてるの?」

「えっ?理由なんてないよ!ただそこにいるから」

「理由もなしの為に、カエルは殺されるのか?」

「はあ?カエルだよ??雨の日によく死んでるじゃん!轢かれて」

大山けんとはワクワクした、こんな腐った奴がいるなんて楽しいじゃかっ!!!と。


その時、雨が降ってきた。

「あー!雨が降ったきたから、今日は帰ろうかっ?カエルはまた明日でも…」


あけみが言いかけた時

バン!!!!!


大山けんとがあけみを四つん這いに押し倒した。

「…っっ」


「あけみさん。良くないなぁ。初志貫徹だよ。カエルがいないなら、君がカエルになればいいんじゃない?」

「何を言ってるの?どっどっいてよ!!!」


「僕からしたらカエルの命も君の命も一緒なんだよ。ケロケロだっけ?カエルの鳴き声。
君もいつも毎日毎日同じ事やってるよね?
いじめだっけ?!だっせー!まじウケる!
カエル以下だよね?君の命!」


あけみの顔がどんどん青ざめいていく。

「こんな事して、ただじゃ済まないよ…
先生に言うから!!!!」


「まじウケる!!あけみ!お前は馬鹿だあ。
先生が君の言う事を信じるとでも?」


「えっ?」


「君がやってきた事は全部動画に撮ってあります。全部…だよ。はあ、、これを警察や学校に提出する事も可能です。さあーどうする??」


大山けんとは自分でも分かっていた。
顔のニヤケがとまらない。

「やめてよ…どうしたら良い?」

あけみは震えて震えて、大山けんとの目が見られない。

「そうだなあ…殺しはしたくない」


「こっ殺し!?!?ウソでしょう…」


「だから、したくないって言ってるだろう。命は大事にしないとね。だから、君と取引をしようかなあ…いいか?」

あけみはうなずいた。

「稲本まなをいじめるな。絶対に。わかったか?いじめないなら、この動画はどこにも流出しない」


「はっはい…」


大山けんとは実験をしてみたかったのだ。

こんな生ぬるい取引でも、あけみはやり通すか?それとも、やはり、まなをいじめるのかっ?人間と言う生き物を、あけみという生き物を試してみたかったのだ。


次の日。


稲本まなは出席していた。


あけみは震えていながらも昨日までの威勢はなくなっていた。

大山けんとは思った。

「小学生だからか?案外簡単だった。こんなもんかっ」と。


休憩時間に稲本まなが、近づいてきた。

「大山君。ありがとう」

大山けんと、人生で初めて礼を言われた。

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