三味線声優 しゃみきちとももの物語

桃香

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48.試練 前編

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『もう、ダメなんじゃないかにゃ?』

たるは大きなため息をついた。

『たるちゃん。。どうしてそんな事を言うの?』

『だって、もう誰もいないにゃ』

たるはまた大きなため息をついて空を見上げました。
そこには夕暮れがとても綺麗に見えました。

『ももちゃん。。ごめんにゃ』

『わかった!いいよ。気にしないで。
誰も悪くないもん』

私は笑顔だったのか、涙顔だったのかも覚えてはいない。

......................

【現実】

「最近ライブもないから暇だね」

今日はいちこちゃんと合同練習の日。

「何かないかなあって。探してはいるんだけど、、、」


いちこちゃんも探してはくれてるみたいです。何件かあたってはみたもの、
アイドルライブで三味線オンリーは渋いから断れるし、カフェやバーになると急にレベルが上がって。。メールの返信すら無視される始末です。。

「世の中って厳しいよね!」

「ももちゃん!本当に厳しいよ!!」

「たるもね、同じ事を言ってたよ。。」

「ところで、ももちゃん!
じゅんきーは元気かな?」

「あっそうだね、、、」

あまり、体調が良くないみたいで、
それは多分魔物の力がこちらにも及んでいて
私達の心、いや私の心が負けてるからなんだろうなあ、、って。

「じゅんきーも頑張ってるから私もいちこちゃんも頑張らなきゃだね!」

「うん!」

でも、今日もライブのお断りのメール。
多分ノルマ7人だったから、厳しいと判断されたんだろうな。
これで何カ月も決まらないし。。

『トゥルントゥルン♪』

あっ電話だ!


「いちこちゃんごめんね。
事務所からだわあ」

「もしもし。はい!私です。。
あっそうですか。。。では失礼します。」

「どうしたの?」

「仕事の電話でね、イベントに出られるかもって。。」

「すっすごい!」

「いやいや、何人呼べますか?」

「あっ。。。」

「仕方がないよ。私達はまだこれからだもんね!」

「ももちゃん、、、」

「笑顔だよ!笑顔だよ!
誰もいなくても誰か見てくれてるよきっと」

「そうだね!」

「それじゃ、、今日は予定があるから
先に帰るね」

「うん!バイバイ」

私はいちこちゃんと別れました。
予定なんて、、嘘。
何もないんだけどもう疲れてました。

気がつけば、あの井の頭の公園のベンチに座ってた。

「どうしようかな。。じゅんきーに会いたいし。。このままじゃ。。」

その時!

夕暮れの空に亀裂が入り、
黒い2メートルもある影が私を覆いました。
遠くで、、いちこちゃんの声が聞こえてくる。


「ももちゃんー!」
いちこちゃんは心配で後をつけていたみたい。
「いちこちゃん、、」

でも声が出ない。。
どうやら闇に飲まれたのかも知れない。。

「ごめんね」

そして夕暮れの中に私は消えました。


続く








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