キミの箱庭を求めて

詩晴海 こてこ

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第二章

これから 7

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カフェの看板に左から緑、白、赤の3色が塗られた上にポップな文字でミャッツカフェと書かれて可愛い肉球が散りばめられていた
戸を押して中に入ると心地いい鈴の音が鳴る

benvenutoいらっしゃ~い

すぐに元気な女性の声が聞こえた

「おみゃあ1人~?カウンター席でもいいかにゃ~?」

愛想がいいとは言い難く、女性はニヤニヤと近づいてくる

「はい、あのこれを持ってきました」

クマゴロウさんから貰った紙を渡すが「にゃ~?、はにゃはにゃ」と興味なさそうに受け取ってエプロンのポケットに乱暴にしまう
女性にカウンター席を案内される、一応一番端の席に腰かけると入口から死角になってるところに小さなステージがあることに気付く
そこで20代半ばの男性がリュートを引きながら不思議な歌を口ずさんでいた。まだオープンしていないのにリハーサルでもしているのだろうか?不思議に見ていると女性に声を掛けられる

bardo吟遊詩人が気ににゃ~の?」

「ちょっと聴いてただけです。…あ、注文は…ミネストローネでお願いします」

女性はメニューを渡してもずっと隣に立っていたので直ぐに注文する。貸切状態で気まずい
にゃ~と間の抜けた返事をしてキッチンへ姿を消す
食事が来るまでゆっくり聴いていようと思い身体を吟遊詩人へ向ける

『彼は行くよ 鹿毛かげの背に乗って 旗もサーベルも割いて 彼は行く アタバキの音に呼ばれて 死の谷へ駆けて行く 戦場の活気に誘われ 愛と友と、自由を求めて』

「にゃ~いminestroneミネストローネだにゃ」

聴き入っていたら食事が運ばれてきた。背後から急に声を掛けられて思わず立ち上がる
恥ずかしくてポケットから金貨を取り出して値段を訊きながら誤魔化す

「ありがとうございます、いくらになりますか?」

「にゃ~に?お会計は後でもいいにゃ~よ?」

「いえ、彼の歌代もと思って…」

「にゃ~にゃ、minestroneミネストローネは2Gにゃ~。タークの歌は適当でいにゃ~?」

「ありがとうございます、では」

振り向いて床に置いてあった帽子に2Gを入れようとした時、背後から肩に腕を回されて抱き寄せられいい香りがして思わずドキリとしてしまう

「じゃあさ~、オレに食事を奢ってよ~。そしたら歌の代金にもなるし?オレの腹も膨れる!一石二鳥~?」

「あ、えっと、それで良ければ?」

「本当ぉ?ありがと~、じゃあシエラ~!オレにはpizzaピッツァを!」

タークと呼ばれた彼もとてもいい発音で注文していた、女性と同じ出身なのだろうか
その昼食を共にして、どういう流れかクリスさんの家へ一緒に行くことになった









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