無数の色欲

詩晴海 こてこ

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下町の娼男 ※

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勇者がやっと魔王を倒したのはつい先日
それから世界中は昼夜どんちゃん騒ぎでここ下町も例外ではない
だがシオンにそんな事は心底どうでもよかった

数年前、勇者一行と魔物の戦いに巻き込まれて両親を失ってからシオンは天涯孤独だった
その日を生きるために身体を売って生計を立てていたシオンにとって勇者が勝とうが負けようが、そんな生活は変わらない

今日も客を探しに薄汚れた酒場へ行く

端のテーブルでビールをのみながら声を掛けられるのを待っていると場違いな青年が酒場に入って来た
シオンと大して変わらない背丈、一つか二つ歳下なのだろう。おどおどしていて可愛いと思った
なんか面白そう。そのくらいの気持ちで声をかけたのに

「一緒に飲んでもいい?」

俯いた青年の顔を覗きながらあざとく訊く

「頬を染めちゃって、可愛いね」

「い、いえ。お兄さんこそ…」

持っていたグラスを青年のグラスにちょんとくっつけて乾杯する
実のない会話をしているとだんだん酒場が混んで騒がしくなって来た

「ねぇ…2人になれる場所に行かない?」

誘いの意味を理解していないと言うポカンと空いた口が可愛くて吹き出してしまう

「あ、行きます!行きたいです!」

「良かったぁ、断られたらどうしようかと思ってた」

それは本心だった。シオンにとってお金はどうでもよくなっていて、今夜はこの青年以外考えられなかった
無垢で純粋な彼を自分で染めて汚したい、青年が“男”になる瞬間が見たい
初めて「この人に抱かれたい」と心が叫ぶ

酒場を出て直ぐ近くの路地裏に引き摺り込む、酒が回って判断が鈍る。早く欲しいと胸が早鐘を打つ
ちゅっとキスをして反応を伺う、戸惑いはしても拒みはしない
その時相手の方が少し身長が高い事に気付く

ちゅ、んっ、んちゅ、ん!ふ、ぁ…

何度か軽いキスを繰り返すと相手も応えてくれた、次第に蝕むようなキスへ変わり呼吸が荒くなって行く
シオンは相手の顔を挟むように両手で耳を包みリップ音を響かせる
相手も応えるように右手を腰に左手でシオンの後頭部を抑えさらに深く口付ける

壁に挟まれて逃げ場が無くなる、その時ゾクゾクと腰が抜けると相手は脚の間に太ももを入れ支えてくれた
それがシオンの熱い欲に当たり、心地良い刺激で甘い声が漏れる

「あっ、あん、ダメッ。俺…我慢出来なくなっちゃう…」

シオンの生理的な涙をみて青年が息を飲む

「ねぇ、挿入いれても…良い?ここが、寂しいの…」

シオンは自分の下腹部を撫でながら上目遣いで問う。彼の妖艶さに戸惑い一歩後退る青年を逃すまいとシオンは腕を掴んでまたキスをする、今度は舌を入れて歯をなぞるように舐めたあと舌を絡め取り丁寧に吸う

お互いの唾液を交換する間に慣れた手つきで相手のベルトに手をかけ前を開けると青年の欲もとても熱く硬くなっている事に気付いて、シオン嬉しい涙を流す
唇が離れたあと2人は肩で息をしていた、続けてシオンもズボンを下ろし壁に手を当てお尻を突き出す、服の裾を捲り上げ「来て…」と囁く

お互い名前も知らないのに早く一つになりたくて蕾が疼く

「初めてなの?大丈夫、俺が気持ち良くしてあげるから…挿入いれて…」

ドキドキと心臓の音がうるさい、興奮の熱で目眩がする。自分から求めるのがこんなに恥ずかしいなんてシオンは知らなかった
「おねがい」消えそうな声でこぼすと相手に強く抱き締められ

「ごめん」

耳元で言われた言葉の意味が解らなくて唖然とする。青年の声が震えていたから
青年は着ていた丈の長い上着を脱ぎ肩に掛けてくれる「ごめんなさい」ともう一度言ってから彼は逃げるように去っていった

独りにされて虚しいのに、上着についた彼の香りが心地良くて、さっきまでの出来事が夢のようで、下半身の疼きがおさまりそうにない…

シオンはその場にへたり込み、青年の香りに包まれながら蕾に指を差し込み自慰を始める

ん、ぅん…

一本、二本と指を増やして抜き差しするが良いところに届かなくてもどかしい
上着を口元まで持ってきて深く息を吸い込む、さっきまで一緒にいた彼を想い目頭が熱くなる

ふっ、うぅ…ん、ぅぐ…ぐす…んぁ

大粒の涙が頬を伝う、悲しい…こんな浅ましい恋が実なんて端から期待していない。だからせめて思い出が欲しくて、彼と出会えたこの夜が嘘じゃないと身体で覚えて居たかったのに…
中を擦る指の動きが早く雑になって行く

うぅ…うっぐっ…んぅ、ふぅ…ぁ、イヤァ…

イキたいのにイケなくて涙が次から次へと溢れ出す、もう片方の手で上着の裾を掴んで自身を包み上下に動かす

あっ、ふぁ、あぁ…んっっ

愛しい彼の上着を白濁液せいしで汚す。空になった身と心を埋めるように上着を抱き締めて肺一杯に彼の匂いを嗅ぐ
恋を知った日にそれを失ったシオンはひとしきり泣いてから帰路についた

「名前、訊いておけば良かったなぁ…」

その夜の想いと名前も知らない青年の上着を大事に大事にしまいながらシオンは朝焼けに目を細めて呟く




















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