彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

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おまけ 2人のその後

友人と出かけます 3

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 「マカロン、マカロン」と歌いながら歩く友人はご機嫌で、小さな子供のように可愛らしかった。

 私も、気持ちは友人と同じように高まっていたが、そんなに歌い出すほどのことは出来ない。

 友人は、昔から、自分の感情に直球で、素直にそれを表現する人だった。
 そんな友人のことは、少し、羨ましかった。

 けれど、友人のその素直さは、悪く言い換えれば、おおっぴらな欲求の表現は、学生時代、支持する人と嫌がる人に二分された。

 特に、友人は所謂イケメンと分類されるような顔の良い男には目がなく、更に彼女の顔もイケメンに相手をされても違和感のない程には高く評価される顔立ちだったので、それも、彼女の評価を二つに割った。

 私は、友人を支持している側の人間ではあったけれど、そこまで公に彼女を庇いたてたこともなければ、特に私はどう、という態度を取っていたわけでもない。

 しかしその態度は友人に好ましく映っていたらしく、彼女は私と親しくするようになった。

 それから友人は歌が上手い、「マカロン」を繰り返しているだけなのに、声は力強く元気で、堂々としていて、人混みの中で歌っているのに違和感を感じない。

 ……羨ましい。
 音痴の私がこんな大衆の中で歌いながら進む、なんて公開処刑のようなものである。

 道行く人も、大して私たちを気に留めていない。

 平日の昼間からのんびりと歩いているような人たちなので、誰もが心の中では彼女のように陽気に歌っているのかもしれない。

 そのうちに、目当ての店についた。
 私が髪を切った日に、彼にお土産としてくるみのクッキーと、八個入りのマカロンを買ったお店だ。
 マカロンが非常に美味でした。

 こんなに日を空けないうちにまた食べられるなんて!と胸が高鳴る。

「ここが、マカロンの……うーん、うん?うんうん」

 友人は、店に到着すると、何やらスマホと店を見比べていた。
 何だろう、食べログとかそんなのを見ているのだろうか。

 首を傾げる私に、友人は気にしないで、と目を細めて笑った。

「私さあ、昔からイケメン好きだったじゃん?まだ変わってないんだ」

 マカロンと、何か関係があるのだろうか。

 話の前後の繋がりが謎であることも、友人の気分屋を考えればそんなに不思議なことではない。

 私と久しぶりに会って、昔のことを思い出しているのかもしれない。
 そう考えて私は、はあ、そうですか、と適当な相槌をして、店に足を踏み入れた。

 「いらっしゃいませ」と声をかけてくれたのは、先日と同じお婆さんだった。
 あの日と変わらずにこにこの笑顔で話しかけられて、私はなんだか嬉しかった。

 私のことを覚えてくれていたようで、私とお婆さんは一言二言、言葉をを交わした。

「たんと食べて、丈夫に元気になってねぇ」
「……?はい、たくさん食べます」

 ……今日、出会い頭に友人にも病人のようだ、と言われたけれど、そんなに私は身体が弱そうに見えているのだろうか。

 しかし、食べることを咎められない、むしろ推奨されるのはなんとなく気分がいい。
 これで気兼ねなくお菓子を買えるというものである。
 
 今日は、この間買えなかった、別の種類のマカロンが食べたいなあ。
 そう思いながら、マカロンが売ってある一角をぐるぐる回る。

 マカロンの種類が充実していて、嬉しい。
 友人も、香水売り場での様子とは打って変わって、大人しく私の後ろをついて回り、私が、これが美味しいのだあれが食べてみたいのだと言うのを時折相槌を打ちながら黙って聞いていた。

 しかし、私もマカロンを前にしてずっと喋っていられるわけではない。
 そのうちに、黙って熱心に商品を見比べていた。

 コーヒー味。
 先日は買わなかったが、今日はどうしよう。
 私はコーヒーが飲めないのだが、マカロンなら美味しく頂けたりするのだろうか。
 コーヒー牛乳なら好きだけれど。

 イチゴ味。
 イチゴは可愛いし、美味しいし、食べられる気しかしないのだが、コーヒー味よりやはりイチゴ味の方が安パイだろうか。
 もちろんイチゴ牛乳も好きだ。

 悩む私の隣に、誰かが並んだ。
 友人だろうか、それとも、新しく入って来たお客さんだろうか。
 
 私は、一歩横に距離を取ろうとして、聞き覚えのある声がしてはっと隣の人を見上げた。

「こんにちは。お買い物ですか」

 イケメン店員さんだった。
 私は内心ぎょっとした。
 
 彼はイケメン店員さんに会わないように言っていなかったっけ。
 
 いや、「あの店には絶対に行くな」「店の近くも通るな」という約束は守ったのだから、不可抗力だ。仕方ない。
 仕方ないことだったから、デッドエンドには行きませんように。

 私は現実逃避をするように祈りを捧げた。
 誰に祈ればいいんだろう。
 デッドエンドの神とかっていたりするのかな。
 最早単純に彼に祈った方が早い気もするが。

「あ、はい」

 ひとまず、私は出来るだけ短い単語で返事をした。

 この状況では、店員と客、という状況とはっきり言いきれるものでもないし、それなのに親しくしていたとしたら、今度こそ彼の逆鱗ポイントに触れてしまうのではないかとハラハラする。

「こんなに頻繁に外出されて、お身体の方は大丈夫ですか?」

 あれれ、また身体のことか。
 今日はやたら弱そうだなんだと言われる日だ。

 私は曖昧に笑って、頷いておいた。
 わざわざ説明して間違いを指摘するのも、彼の怒りに触れないか恐ろしい。

 私がはっきり物を言わないことを、イケメン店員さんはどう解釈したのか、気遣わし気な視線を私に送ってよこした。

「そういえば、マッサージの方はどうでしたか。上手く、いきましたか?」

 そう尋ねられ、私はこっくりと頷いた。

 そういえば、コツを書いてもらった紙をなくしてしまったことを思い出す。

 あのことについて触れられないといいなあ。
 なくして下手なマッサージをしました、とも言い辛い。
 イケメン店員さんが何も言及せずに早急にこの場を去りますように。

「お教えしたコツが、役に立っていたなら嬉しいですが」

 早速触れられてしまった!
 私は動揺した。
 視線を彷徨わせる。
 結局俯いて、マカロンの成分表示を見た。
 ブドウ糖。

「いえ、あの、はい、や、役に立って」
「……もしかして、なくされたりしました?」

 私は嘘をつくのが下手なのかもしれない。
 態度があまりに不自然だったのだろうか、何故かすぐにばれてしまった。

「もう一度、お書きしましょうか」
「ええ、と、いえ、コツがなくても、先日、その、上手くいきましたので……大丈夫です。お気遣いなく」

 イケメン店員さんの厚意は有り難いが、断っておく。

 彼と危うくはさみエンドを迎えそうになってしまってからまだ日も浅いので、イケメン店員さんからすれば私と彼のことなんて関係ない話で申し訳ないのだがつい警戒してしまう。

 しかし、イケメン店員さんは、「ご遠慮なさらず」とメモ紙を取り出すと、さらさらとペンを走らせた。
 
 困ったことになった。
 目の前で書いてもらったものを、断ってもいいのだろうか。

 ハンドマッサージのコツを書いてあるのを、連絡先が書いてあるわけでもないのに「彼氏がいるので」なんて断ったらあまりに自意識過剰だろうか。

 イケメン店員さんは、書き終わったメモを私に差し出した。
 
 見覚えのある、綺麗な字が並んでいる。

 受け取るべきなのか、どうしよう、と私が手を空中にあげかけて迷っているところを、イケメン店員さんが持っているメモ書きが、横から搔っ攫われた。

「わー、マッサージのコツ?私最近マッサージするよ~貰っていい?」

 私の後ろで話を聞いていたらしかった、友人だった。









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