1 / 6
第一章
1.事の始まりは、いつも突然に
しおりを挟む
俺の名は、ボナンティス=フォン=カルディアン。
15歳。
カルディアン伯爵家次期当主だ。
自慢ではないが、俺には可愛い可愛い、とても可愛い婚約者がいる。
その名は、デイジー。デイジー=フォン=コルネリウス。
通称、ディーだ。
俺と同い年で、コルネリウス子爵の次女。
茶髪茶眼で美人よりかわいい系の、俺の愛しい婚約者。
その彼女が、頭を打った。
地面に落ちていたバナナの皮を踏んだのだ。
それはもう、見事なまでの回転だった。
スッテンコロリンと……。
「ちょっとボン様! しっかりしておくれ!!」
「あ、ああ……、ばあやか。ディーは大丈夫だったか?」
ばあやは俺の家に使えるメイド長で、回復魔法が使える稀有な存在。
そのばあやが、彼女の頭を見てくれていた。
「彼女の、ディーの頭は大丈夫だったのか!?」
「えーと、その物言いだとお嬢の中身が残念だったかって話になるんじゃないのか?」
「ゴードンさん……」
ゴードンさんはうち専属の騎士だ。
父上に多大な恩があるとかで、金のない我が領地に格安で雇われてくれている誠の騎士。
最近は商会の運営が上手く行き、余所と変わらないお給金を出せているが、いずれは今までの分も支払いたいと思っている、そんな忠誠の騎士。
「ボン、また考えが余所にいってんぜ?」
「え? ああ……、そう、だな……」
現実を見よう。
まず、俺は今日、婚約者であるディーと久しぶりのデートだった。
お互い同じ学園に所属してるにも関わらず、あまり会えていない。それと言うのも、俺には仕事があるからだ。
ヒナギク商会。
俺の作った商会で、名前はデイジーの別名から。
愛する者の名を商会に付けるのは変わっているのだが、そんな事は俺の知った事じゃなかった。
今、近くにいられないのが苦しくて、せめて名前だけはと付けたもの。
とにかく、その商会の会長が俺なのだから、とかく忙しい。
人材不足に経験不足、領地のやり繰りも最近は口を出しているので、はっきり言って学園に行く暇がない。
そんな俺が、月に一度の楽しみである婚約者のデートに浮かれてしまったのも、無理はない話ではないだろうか。
「まさか、あんなところにバナナの皮が落ちているなんて……」
街の衛生面はしっかりとしている。何せここは王都だ。馬糞すら専用業者が即座に取り除くほどの徹底ぶりだ。
「そもそもバナナなんて、この辺じゃまず誰も手に入れられないだろ!!」
バナナはこの国の南に位置するマジカリア王国よりも更に南方の国で名産とされている果物で、高位貴族か王族しか口に出来ない高級品。
まかり間違っても、いくら皮だけとは言え歩道にポイ捨てされていていいような代物じゃない。
犯人は一体誰なんだ。
いや、それよりもどうして俺はアレに気付けなかったんだ!
苦悶する俺の肩に、ゴードンが手を乗せた。
「もしかしたら……、お嬢を暗殺しようとしてたのかもしれませんぜ?」
「そんなわけあるか」
少し落ち着いた。
「それよりも、デイジー様のお見舞いに行った方がよろしいのでは?」
ばあやの指摘も最もだ。
だが……、
「彼女に合わせる顔がない」
デートの途中で
「俺が君を守るから」
なんて格好つけた手前、何も守れなかった俺に出来るのは医者を用意する事だけだ。
デイジーは優しい。
今回の件も、目が覚めたら
「避けれなかった私が悪いのです。今度はしっかり避けた上で、三枚に卸して見せます」
と言うに違いない。
「それ、優しいんじゃなくて脳みそまで筋肉で出来ているだけなんじゃねーのか?」
「これゴードン! 余計な口を出すんじゃないよ!」
ゴードンとばあやがドツキ漫才をしているが、内容までは耳に届かない。
だがもしかすると、デイジーのすばらしさを語っているのかもな。
俺の部屋のドアがノックされる。
どうやら時間切れのようだ。
彼女の為に割けるわずかな余暇もここまで。
「ボン様、お辛いようでしたら予定を明日に変更しませんか? 今からでもデイジー様のおそばにいた方がよろしいかと思いますが」
「ありがとう、ばあや。でも俺には俺の、成すべき事があるんだ」
俺の成すべき事。
それは、次期領主である俺がこの領地を盛りたて、デイジーが胸を張って嫁げる土地に変える事。
その為ならば、俺はどんな苦渋でも飲み干して見せるよ。
そんな決意の裏で急速に物語が始まったのを俺は知らなかった。
15歳。
カルディアン伯爵家次期当主だ。
自慢ではないが、俺には可愛い可愛い、とても可愛い婚約者がいる。
その名は、デイジー。デイジー=フォン=コルネリウス。
通称、ディーだ。
俺と同い年で、コルネリウス子爵の次女。
茶髪茶眼で美人よりかわいい系の、俺の愛しい婚約者。
その彼女が、頭を打った。
地面に落ちていたバナナの皮を踏んだのだ。
それはもう、見事なまでの回転だった。
スッテンコロリンと……。
「ちょっとボン様! しっかりしておくれ!!」
「あ、ああ……、ばあやか。ディーは大丈夫だったか?」
ばあやは俺の家に使えるメイド長で、回復魔法が使える稀有な存在。
そのばあやが、彼女の頭を見てくれていた。
「彼女の、ディーの頭は大丈夫だったのか!?」
「えーと、その物言いだとお嬢の中身が残念だったかって話になるんじゃないのか?」
「ゴードンさん……」
ゴードンさんはうち専属の騎士だ。
父上に多大な恩があるとかで、金のない我が領地に格安で雇われてくれている誠の騎士。
最近は商会の運営が上手く行き、余所と変わらないお給金を出せているが、いずれは今までの分も支払いたいと思っている、そんな忠誠の騎士。
「ボン、また考えが余所にいってんぜ?」
「え? ああ……、そう、だな……」
現実を見よう。
まず、俺は今日、婚約者であるディーと久しぶりのデートだった。
お互い同じ学園に所属してるにも関わらず、あまり会えていない。それと言うのも、俺には仕事があるからだ。
ヒナギク商会。
俺の作った商会で、名前はデイジーの別名から。
愛する者の名を商会に付けるのは変わっているのだが、そんな事は俺の知った事じゃなかった。
今、近くにいられないのが苦しくて、せめて名前だけはと付けたもの。
とにかく、その商会の会長が俺なのだから、とかく忙しい。
人材不足に経験不足、領地のやり繰りも最近は口を出しているので、はっきり言って学園に行く暇がない。
そんな俺が、月に一度の楽しみである婚約者のデートに浮かれてしまったのも、無理はない話ではないだろうか。
「まさか、あんなところにバナナの皮が落ちているなんて……」
街の衛生面はしっかりとしている。何せここは王都だ。馬糞すら専用業者が即座に取り除くほどの徹底ぶりだ。
「そもそもバナナなんて、この辺じゃまず誰も手に入れられないだろ!!」
バナナはこの国の南に位置するマジカリア王国よりも更に南方の国で名産とされている果物で、高位貴族か王族しか口に出来ない高級品。
まかり間違っても、いくら皮だけとは言え歩道にポイ捨てされていていいような代物じゃない。
犯人は一体誰なんだ。
いや、それよりもどうして俺はアレに気付けなかったんだ!
苦悶する俺の肩に、ゴードンが手を乗せた。
「もしかしたら……、お嬢を暗殺しようとしてたのかもしれませんぜ?」
「そんなわけあるか」
少し落ち着いた。
「それよりも、デイジー様のお見舞いに行った方がよろしいのでは?」
ばあやの指摘も最もだ。
だが……、
「彼女に合わせる顔がない」
デートの途中で
「俺が君を守るから」
なんて格好つけた手前、何も守れなかった俺に出来るのは医者を用意する事だけだ。
デイジーは優しい。
今回の件も、目が覚めたら
「避けれなかった私が悪いのです。今度はしっかり避けた上で、三枚に卸して見せます」
と言うに違いない。
「それ、優しいんじゃなくて脳みそまで筋肉で出来ているだけなんじゃねーのか?」
「これゴードン! 余計な口を出すんじゃないよ!」
ゴードンとばあやがドツキ漫才をしているが、内容までは耳に届かない。
だがもしかすると、デイジーのすばらしさを語っているのかもな。
俺の部屋のドアがノックされる。
どうやら時間切れのようだ。
彼女の為に割けるわずかな余暇もここまで。
「ボン様、お辛いようでしたら予定を明日に変更しませんか? 今からでもデイジー様のおそばにいた方がよろしいかと思いますが」
「ありがとう、ばあや。でも俺には俺の、成すべき事があるんだ」
俺の成すべき事。
それは、次期領主である俺がこの領地を盛りたて、デイジーが胸を張って嫁げる土地に変える事。
その為ならば、俺はどんな苦渋でも飲み干して見せるよ。
そんな決意の裏で急速に物語が始まったのを俺は知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる