転生彼女は王子に夢中! -俺はフォローをする脇役-

gagaga

文字の大きさ
6 / 6
第一章

6.犯獣を発見

しおりを挟む
 早速森へと入り、大熊を探す。
 村人から告げられた場所へと向かえば、一時間ほど進んだ先にその爪痕はあった。
 まるで暴風が通った後のような崩壊具合で、あちこちに血痕が浮かんでいる。

「犠牲になったのは、鹿か……」

 恐らくこの辺りに巣を構えていたのだろう。
 それらしい跡がうかがえた。

「木の幹に付けられた三本線の跡、間違いなく大熊ですわ。それも間違いなく三メートル級」
「三メートルか……」

 大熊には大きく分けて三種類ある。
 まずは子供。それでも一メートルはあり、村人が素手で勝つなど絶対に不可能な存在。
 武装した並の騎士ならばタイマンで勝てるが、ある程度の苦戦は免れない。
 次に若い個体。二メートルほど。大半の大熊はこのサイズで、どこが大熊なのかと思わせる。
 しかし武装した並の騎士ならば三人掛かりで相手をしなければ死者を出すほどの難敵だ。

「そして今回の三メートル級は、十人規模の騎士隊でなければ対処出来ませんね。我々だけでどうにかできるのでしょうか」
「アレク様よぉ、そりゃ大丈夫でしょ、なんたってウチにはボンがいるんだから!」
「そうなのかい? ボナンティス君と言えば、剣は平凡、魔法も平凡との噂で、とても戦力が高いとは思えないのですが……」

 アレク様の言う事は正しい。
 剣の申し子デイジーと比較するまでもなく、俺の剣は平凡だ。
 魔法にしても基本を押さえているだけで強くもなく弱くもない。
 そんな俺にも誇るべき武力はあるが、今は語るべき時ではないだろう。実戦となればいやでも目にするから。

 なお、アレク様呼びは本人からの強い希望だ。アルカス家長男ではなく、あくまでいち農民としてこの場にいるのだからとの主張故だ。
 ちなみに彼の武装は皮鎧に量産品の剣と、傭兵連中が良く使っている装備そのままだ。
 よかった、王位継承者にのみ与えられると言われてる黄金の鎧をまとってこなくて。
 その代わり防御力は天と地ほどの差があるから、その点は十分に注意しなければならない。

 森を更に進む事一時間。
 途中、休憩を一度挟んだが特に何もなく。

「ところで……」
「なんですか、アレク様」
「様もいらないんですけどね。まぁいいです。ところで従者の彼はどうしてあんなにも大量に武器を担いでいるのですか? 鎧を着ていないですが、彼も戦うのですか?」

 世話係の男は巨大なバックパックに武器を満載している。その姿を見ての疑問だろう。
 そんな彼がアレク様に返答する。

「お気になさらずッ」

 もっと穏やかに敬意を込めて返答してくれと願わずにはいられないっ!

 どうやら俺がアレク様にバカにされたと認識している彼が、アレク様につっけんどんな態度を表しているのだ。
 元から口数が少ない彼だが、その様子も相まって大層不機嫌そうに見える。
 普段から自然体でもそう見える男が、不満を露わにしている。
 不敬、不敬だよ君ぃ!

 しかしそんな俺の訴えも彼らには届かない。
 もう一人、一見して穏やかそうなゴードンもちょいちょいアレク様を無視しているのだからたまらない。
 俺の胃が、たまらない。

「嫌われてしまったのでしょうか。これは申し訳ない事を言いましたね」
「こちらこそ真に申し訳ございません」

 アレク様に悪気はなかったように思う。
 真実、俺が弱いという噂があり、また、その噂は村長も認識していたのだと考えられる。
 つまり俺としてはそう言う情報が本当に出回っていると現場で直に触れれてむしろラッキーなのだが、付いてきている者たちにはそれが通用しない。

 嬉しいと思う。
 俺をけなされ、我が事のように怒ってくれるのは。

 しかしそれは空気を読んだうえで行って欲しい。
 だって相手、王位継承権四位だよ?
 王様にならずとも将来は宰相か摂政か、財務省長かと言われている重役確定のすごいお方だよ?
 騎士団長になるのでは、なんて噂もあるほどに文武に優れたお方ですよ?
 そんな方に悪い意味で目を付けられたら、デイジーの予言以前に俺の自滅による没落は免れないじゃないか。

「何でこんなにどの選択肢も闇へと続いているんだろうか……」

 そう呟かずにはいられない。
 はぁ、とため息を吐いた所、ゴードンから合図があった。
 手を横に差し出しての、停止の合図。今回の標的を発見したのだろう。急ぎ目の前の事態に集中する。

「ボン……」

 ゴードンがクイッと顎を突き出すポーズで先を見るよう促してくる。
 その指示の先を見れば、居た……。

 三メートルの巨体を横たわらせ、腹をかいている。
 一見して穏やかな寝ている熊という様子だが、口の周りには血が付き、爪には血のみならず食べ残したのであろう鹿の肉が備わっていた。
 おおかた、腹が膨れて眠くなったのだろう。フコー、フコーと鼻息を響かせながらの安眠中だ。
 この辺りには大熊よりも強い者はいない。寝込みを襲われても脅威になるような存在がないと自身も自覚しているのだろう。大層に緩んだご様子。

 その場所は日当たりもよく、昼寝をするにはうってつけの場所。
 広間になっていて、戦いやすそうで、こちらとしては都合がいい。

 世話係とアレク様に目線を送る。
 頷きが返ってきた所で、ゴードンと共に立ち上がる。

 さぁ、戦闘開始だ!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...