騎士不適合の魔法譚

gagaga

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第一章

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 異世界にて産声を上げた。

 僕はここに産まれたのだと。


「おんぎゃああああああああああああ! おんぎゃああああああああ!!」

 声を大にして叫ぶ。

 産まれたんだって!




 ***

「異世界、ですか?」

 僕はよくわからない場所にたゆたっていた。宇宙遊泳のビデオで見たように、その場でくるくるりと回る。不思議な気分。

「そうなんだよね~。ごめんね~」

 かるーい感じでそれを教えてくれる目の前の男性は神様。
 お約束だよね。

「君が死んでしまったのは僕のせい。だからほら、お詫びに転生で特典つけちゃうから」

 なんで、どうしてって疑問は出てきたけど、ふわーっとどこかへ行ってしまう。たぶん、僕自身が死を受け入れてしまっているからだろう。
 神様に、ほいっとお気軽に渡された板をかるーい気持ちで受け取った。

「公園でサッカーしていたらバイクが乱入してきて、それに驚いて田んぼに逃げたらそこに小隕石が落下。僕には直撃しなくて、でもその着地時の衝撃で吹っ飛ばされて隣の田んぼに頭から垂直落下」

 死に様はまさに伝説のスケキヨ。
 そして数々の心ない写真撮影により、僕の体は隕石の落下痕とともに全世界へと発信された。

「わーい、僕ってば超有名人ー」
「そうだね~、ごめんね~。でもその有名税の分だけ能力付けてくれていいから~」

 そう言うことらしい。
 だったらまぁ、それを受け入れてもいいかってなった。

「隕石は人がいない所に落としたつもりだったんだ~。それでもあの写真はないよね~、あんな辱めはないよね~」

 隕石の件はしょうがないと思う。神様でさえコントロールできなかった偶然ってこわいなって考えただけ。
 自分の写真については見てないけど、生前最後の写真としては悪いものではないと思う。どの道あの時点ではもう死んでただろし。

 さてさて、そんな過ぎ去った過去よりも未来だ。

「これは、こう?」

 ササッとタブレットをイジるように表面を撫でる。
 すると出てくる。


 ハロー ワールド



 うん、よく分からんけど神様の世界にもいろいろあるんだと知った。

「そうそう、君がいく世界は剣と魔法の世界ブリトスだよ~」
「剣と魔法の世界!?」

 それはとても、ファンタジーな響きだ。
 もうそれを聞いた時点でワクワクが止まらない。ドキドキも止まらない。いや、心臓はもう止まってたっけ、てへ。

「異世界と言えば魔法! なら俺を魔法の天才にしてください!」
「あ、うん。それなら石板いじって自分で調整してね~」

 チャチャッと石板の上を指でなぞりつつ、書いてある内容を見る。

「これは、いわゆるステータス表?」
「そうそう~。生まれ変わる時の才能の素質ってヤツだね~」

 大区分が肉体関係、魔法関係の二つ。まずそこにポイントを割り振っていく形となっている。

 その下に肉体関係なら筋力、器用、素早さなどなど、様々にある。

 魔法関係だと精神、抵抗、精度に、なんでか絶倫なんて項目がある。これ、肉体関係じゃないんですか?

「その言葉でナニを想像しているのかは分かるけど~、それって意味は『仲間内の中で飛び抜けてすごい』って意味だからね~」

 飛び抜けてすごい。そうだったのか。
 しかしそうなると、今度はそれの効能がよく分からない。すごいって言われても、「何が?」ってなるよね。

「それはね~、同じ種類の仲間が多ければ多いほど強くなるって、一種の精神感応系の能力だね~」
「つまり僕が魔法使いなら、魔法使いの仲間が多ければ多いほど強くなるんですか?」
「正解~」

 パチパチパチと拍手してくれる。
 いやー、照れますなー。

「ファンタジーなら魔法は外せないね。それと英雄なら友達たくさんでパワーアップもいいよね!」

 チャチャっと魔法関連に極振りしていく。
 身体強化魔法なんてのもあるし、これも取っておく。

「基本に忠実で、とにかく魔法魔法、あんど魔法!」

 精神、抵抗、精度それぞれに極振り。
 絶倫ほかのスキルも振っていく。でも火属性特化みたいなのは遠慮する。

「魔法を使えるなら色々したいし、特定の属性に特化するよりも万能でいたい!」

 そうして振り続けていくも、ポイントが余る。
 これは困った。困ったので属性関連も全部チェックを入れていくも、なお余る。

「元々ポイントが多かったのに、肉体に何も振ってないんですねぇ」
「極振り派ですから!」

 それに、一度魔法関連に振ってしまうと肉体側のポイント消費が増える。魔法極振りをした影響か、肉体関係を強化するのにものすごいポイントを要求されているのだ。それでもちょっと伸ばす分には足りなくはないけど、チョロっとしか伸びない。ポイントの無駄にも思えてちゅうちょしてしまった。

 何事も中途半端はよくないのだ。やるなら徹底的に、そう、徹底的になのだ。石板の上の未来の僕のステータスにそう言われているようで、僕も思わずそうだよねって頷いた。


 使うかどうかも分からない魔法も全部取って、気品とか商才とか経営とか土木建築とか魔法に関係あるの? ってスキルも次々と取っていく。それも魔法関連側に項目があるんだから、きっと何か深い関係があるんだろうなー。

 魔法関連の全ての項目にポイントを割り振り終わったけど、やっぱりポイントが余った。

「ううーん、これはどうしたものかー」
「テコでも肉体関連には振らないんですね~」

 そうなんですーと返してから、僕はハタと気付く。

「あれ、僕自身の元々の才能って、上限を上げられる?」

 大区分してある肉体と魔法。
 それとその下の細かな項目にしか注目していなかったけど、大区分のさらに上、僕本体そのものにもポイントが割り振れるのが分かった。

 割り振ってみると、僕の能力の上限値が上がっていく。肉体側も引きずられて上がっているけど、魔法関連も同時に上がっているのでノーカンにした。

「わー、これはすごい」

 思わず残ったポイントを全部つぎ込んだ。ちょうどピッタリでカンストした。

 これで魔法関連はカンストだ! ポイントも使い切った! とってもきもちいい!

「そこに気付くとはさすがですね~。それはいわゆるレベル上限突破ですよ~」
「おおー」

 それはなんとココロオドル言葉なんだろう。エンジョイしたくなるー!

「でも上限を取り払っただけなので、経験を積まなければなりませんよ~。そして定常以上に突破したレベルは、レベルが上がりにくいんでお勧めしていないんですよね~」

 そうだったのかー。

「それでも上限突破した分は最初に底上げされますからね~。ポイントが余っているのであれば使ってしまったのは正解だと思いますよ~。普通はそこまでポイントが多くないけど、さすが一年間ずっと話題をもぎ取り続けた話題の写真の主だね~」

 ありがとう、心ない写真撮影をしてくれた人たち。あなたたちのお陰で、僕の次の人生はチートまっしぐらです。ビバ、チート!

「では振り終わったら終了を押してください~。はい、そうです。これで君の才能の素質が決まりました~」
「わーい!」
「でもこれ、素質だからね~。努力しなきゃ結局は意味ないよ?」

 ありゃま。それは残念。
 産まれた時からチート チーター チーテストかと思ったけど、どうやら勉強したり訓練したりしなきゃ身に付かないのかー。

「赤ん坊がそんな力持ってたら、母体が危ないですからね~。そうでなくても子供は力のコントロールが出来ないでしょうし~」

 そりゃそうかー。
 肉体チートの転生者赤ちゃんが蹴った足でお母さんのお腹を突き破ったらひどいもんねー。産まれる前に死んでいた状態だー。

「あとは、これが本当の私からの特典ですね~。なんと、小さめの国ではありますが、公爵家の三男として転生させてあげます~」
「おお~、公爵家! 公爵家?」
「その国で三番目に偉いおうちです~」

 三番目! それはすごい! その三男だと、ちょっとすごいくらい?

「平民を思えばものすごくえらいですよ~。将来は一つの都市の領主様でしょうね~。それではよい人生を~」

 わーい、やったー!
 スキルの補正もあるし、きっとなんとかなるよね!
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