騎士不適合の魔法譚

gagaga

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第三章

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 ――魔法学院カインズ、事務室。

「講師の件、お引き受け下さって感謝します」
「あ、ああ……」

 まぁ待て。
 待ってくれ。
 頭を下げる事務員を両手で制し、俺はこめかみを押さえる。

 まず最初に解消しなければならない疑問がある。


 なんでこの学院、俺の名前なんだよ!?

 意味分かんねーよ!?
 ホワイ!?

 天狐姉妹は別の場所で調べ物をしてもらっているので、ここには俺一人で来ている。
 よって、この思いを吐き出す事も出来ずに心を固く閉ざし、その結果、顔から表情が抜け落ちていくのが自分でも分かった。

「二等級冒険者であり、凄腕の魔法使い。成功者であるカイ殿であれば彼らにきっと新たな道を指し示して下さるでしょう」

 しかも事務員の言葉からは、問題児を押し付けられそうな予感しか沸かない。
 意味分からん。

 意味分からんぞ、マッケイーーン!
 お前、簡単なお仕事だとか抜かしてたよなぁ!?
 俺の 簡単 とお前の 簡単 、あまりにも違いすぎないかー!?

 心の中で絶叫するも顔には出さず、大人しく事務員の言葉の続きを聞く。

「授業のコマについては後日お知らせします。内容についての簡単なレポートをお出し頂いたうえで、こちらで検討し、時間割に組み込ませて頂きます」

 授業概要書はあとでもよかったのか。
 はやり過ぎた。
 昨晩のうちに作成してしまった。ガッデム!

「もうある」

 仕方がないので既に用意済みの授業概要書をポイっと渡す。

「おお、すでにできているとは、さすが『即決のカイ』殿」

 その二つ名、ここでも広まってんの?
 イヤだ、今から気が滅入る。

「急ぎ内容を吟味し、受講者をつのらせていただきます。まずはこの場で軽く確認をさせてください」

 そう一言断ってから書類を確認し始めるが、それならその二つ名で呼んでもいいか最初に断って欲しかった。
 無論、俺はそんなのお断りするんだけどな。

 はぁ。

 温泉の為にそんな言葉も我慢して、事務員が読むのを黙って見守る。


 ペラリ、ペラリ……。
 ブルブルブル……。

 なんだ?
 書類を呼んでいた事務員がふるえ出したぞ。
 西〇カナでも脳内で流れているのか?

 ふるえていた事務員が唐突に立ち上がった!
 そしてテーブルに手をついて俺の方へと乗り出す。

「カ、カイ殿……。これは、本当にこの内容で授業をして下さるのですか!?」
「お、おう。近い、近いから。ぶん殴るぞコノヤロウ!」
「ハッ! 失礼しました! しかしこれは、画期的ですね! さすがです! マッケイン副理事があなたをお呼びした理由がよく分かりました!」

 あいつ、ここでも幹部、それも副理事なんてやっているのか。手が広すぎる。
 マッケインのさわやかな笑みを思い出し、その裏に隠された苦労人としての顔に同情などせずグッバイアディオス、記憶から消去する。気が滅入っているのにあのヤロウの顔など思い出したくはない。

「ほかの副理事の方は冒険者を招き入れることを反対なさっていたのですが、やはりマッケイン副理事は正しかった!」

 そう言うや、事務員は部屋を出て走り去っていった。

 この状況で俺おいて走り去るなんて何を考えているのか。
 本当に誰かに会いたくてふるえてたのか。
 あるいはトイレか。

 わずかでも心配して損した。もしくは、心配すべきは頭の方だったかもしれない。

「用事は済んだし、行くか」

 さて、この後は天狐姉妹と図書館だ。



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