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第一章 最初の街 アジンタ
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……。
閑話休題。
サリエラの話に戻ろう。
サリエラは冒険者ランクがDとなった。これも予定通り、想定通りだ。
元々彼の場合、実力が伴わなかった訳ではない。単に神様からそうならないように誘導されていただけだ。その理由も、今なら分かる。
今のこの結果、二人にとって最優のこの結果を導き出すためにタイミングを調整されていたのだ。
まったく、神様ってヤツは……。
「さぁ、こちらは準備出来ましたよ」
馬車に荷物を載せ終えたリグーロが俺に声をかけてくる。
その声に応える為、俺は考え事を途中でやめて手を軽く挙げた。
「おう、分かった。では、そろそろ行くか?」
「そうだね。あちらにはケンもいるし、足りない物は向こうで買いそろえればいいよ。彼なら色々と融通してくれるだろうからね。それに、この街に帰ってくるだけなら半日で戻れるからね」
そうだな。
……。
そうだった、ケンたちの事をすっかり忘れていた。ネタ晴らしもしていなかったな。
……、まぁ、いいか。
「ダンジョンコアを破壊してからこの辺りに魔物がいなくなったので私一人でも戻ってこれます。だから、大丈夫ですよ」
……、ん? リグーロが妙な事を言い出したぞ。
「待って待ってリグ! 一人でなんて危ない事をしないで!」
「サリエラ、私はこれでも神官であり、あなたと同じDランクの冒険者ですよ。だから平和になったこの周辺なら一人で出歩いても大丈夫です! 私は、あなたの側にいられるほどに強くなりました!」
何と言う自信過剰。今までの思慮深かったリグーロはどこへ行ってしまったのか。
確かに少し前のリグーロと比べたらケタ違いに強くなっているが、それでも勇者ほどではない。そもそも神官の攻撃は対ゴースト、対ゾンビ向けであって、ゴブリン等の生身の魔物相手は殴打しなければならない、基本的には非攻撃職なのだ。
しまったな。どうやら養殖式クラスアップは内気なリグーロに余計な慢心の種を植え付けてしまったようだ。
「駄目だよ、リグ!」
そうだ、言ってやれサリエラ。
世の中、危険で一杯なのだと。
「リグは魅力的なんだから、誰かに襲われたらいけないよ! 盗賊だっているかもしれない! だから一人で街間を移動しないで!!」
……、え!?
そこ? 注意するとこ、そこなのか!?
「は、はい、分かりましたサリエラ。それなら、一緒に行きましょう?」
「ああ、リグ。いつでも一緒だよ」
そうして二人は抱きしめ合い、目線を交わし、熱いキッスを……。
あ、はい。
二人は大きな障害を乗り越えたからか、今まで以上にラブラブだ。ビジュアル的には普通に美男美女なので健全に見えるのが救いだろうか。サリエラがリグーロに覆いかぶさるような体勢でなければ、だが……。
そっと視線を二人から外したのは、その、なんだ。紳士的な行為だと受け止めて欲しい。
そんな阿呆な事を考えていると、後ろから声をかけられた。
振り向き確認すると、教導官ゴリラことヒルトさんがいた。
「あー、はいはい、ご馳走様。仲がいいのは結構な事だ。だが、テメーら、油断だけはすんじゃねーぞ? それとあっちにいる先輩の言う事、ちゃんと聞いとけよ」
なんか親父みたいな事を言い出した。とても親切なゴリラだった。
その親切な親父ゴリラの隣には、受付ゴリラがいた。名前は、結局知らないな。
「Dランク期待の新星がいきなり二人も異動で、私は少し寂しいです。でも、おめでとうございます」
受付ゴリラは相変わらず丁寧だった。
そして微妙に内部機密を漏らしていた。周囲に人はいないし、教導官ゴリラも気に留めていないのでサリエラが受けた異動命令はそれほど重要な話ではないのだろう。だが、この生真面目ゴリラでさえ、こうやって何かの拍子にポロリしてしまうのだから、俺の出自や能力、職業などは可能な限り秘密にすべきなのがよく分かった。
「はい、ありがとうございます!」
「行ってきます!」
そんな俺の内心など誰も知らぬままに、熱いベーゼを終えた二人は元気よく返事を返し、見送りに来てくれたゴリラ二名に手を振っていた。何故かサイドチェストポーズをしているゴリラズに、俺も返礼のサイドチェストポーズをしてから、馬車に近づく。
そんな俺に走り寄ってきた人影が。
すわっ、俺に一目ぼれした女性か!? と思ったが、そんなはずはなかった。武器防具屋の店主だった。
「よう、間に合ったな。これ、もってけ。選別だ」
「え?」
開口一番、手に持っていた剣と剣帯を俺に差し出してきた店主に、俺はどう答えていいのか分からなかった。
「こいつはお前さんが持っているといい。武器無しじゃ、いくらなんでも危険だろう?」
「え、ええ。それはそうですが。いいのですか?」
武器はきちんと袋槍を持っているのだが、傍目から見たら単なるナイフだ。それを不憫に思ったのだろうか。なんだかだました気になってしまう。
だが、そんな俺の余計な気を払しょくするように、力強く肩を叩かれた。
「いいか? ハッタリってのは大事なんだ。世の中、強そうなヤツには関わらないようにしようって小物も少なくない。小事に足を取られたくなけりゃ、その筋肉に見合うだけの武器は持ってなきゃなんねぇのよ。分かったな!」
「え? はい!!」
本当によく分からない。いや、言っている意味は分かるが、どうして突然こんな事に……。
すると俺の戸惑いを見た店主が、鼻の舌を人差し指で擦り、照れながら教えてくれた。
「あのメイスがああなる程の強敵に打ち勝ったんだ。他の誰がどう思おうが、俺は勇者でも何でもないアンタこそが英雄だと思ってるんだぜ。だから、そんな英雄を丸腰でこの街から立たせちゃいけねぇって、思ってな」
……。
表舞台に立たない方がいいと思っていた。人からの賛美など、小市民な俺には煩わしいものだと思っていた。
でも、そうか。
「ありがとう。大切に使わせて頂きます」
店主は俺のその答えに、おうよ、と返してくれた。
うん、俺は勇者ではない。
だが、勇者よりも希少で強力な聖騎士だ。
……、本当に、だましているようで腹が痛い。だが、それは俺の気持ちの問題だけだ。店主は俺の事を英雄だと言ってくれた。ならせめて、それらしく振る舞う事で彼の気持ちに応えよう。
胸を張って、俺はフロントダブルバイセップスのポーズで意志を示し、彼はそれに頷いてくれた。
こうして俺の新たな旅(半日だけ)は始まった。
「では、出発致しますのでお乗りください」
御者の人が声をかけてくる。
馬車は、リアカーのような粗末なものだ。元々街中を走る為のもので、近場使いなので囲いも椅子も安物。守りも薄く、ゴブリンでさえ破壊出来そうな程にモロそうな代物だった。危険蔓延る街外で運用するには不似合いだが、安物なのでいざとなったら捨てて逃げられる利点もある。
荷物も小麦の袋五個、米の袋五個、それぞれ二キログラムずつの個包装で合計ニ十キロ分しかない。この量は俺の『収納棚』に余裕で入る量だから、捨てていく心配もない。
その俺の『収納棚』の中身だが、結局聖槍、魔槍の類は取り出せなかった。いや、袋槍以外は無理だと言ってもいいだろう。最初はMPが足りないだけだと思っていたが、調べていく内にどうやらロックがかかっているようだと判明した。恐らく、この世界の今の武力的に、俺の所有する武器は強すぎるから神様辺りが取り出せないようにしているのだと推察している。
「文字通り神器だからな。制限もされるか」
いつか、しかるべき時が来たら取り出せるようになるのだろう。そんな機会は訪れないで欲しいものだが、同時に、しかるべき時の為の保険がある事にほっとするのは、俺が自然災害大国の日本出身だからだろうか。
ちなみに俺の『収納棚』は棚のくせに容量が極めて大きい。今入っているものだけでもサリエラの所有可能量を大幅に超えている。しかもまだ全容量の一割にも満たない。ただし、棚と言うだけあってサイズが大きすぎるものは入らない。辛うじてフルプレートとタワーシールドがセットで収まるサイズで、この馬車くらいのサイズだとギリギリ無理だ。
ただ、数だけは異様に入るので、今も俺の『収納棚』には二キロの米袋が百個、小麦の袋も百個、それ以外にも水、酒数種、調味料各種が大樽単位でいくつも入っており、調理済みの料理も二週間分は入っている。いくつ入るか試していたら、どこまでも入ってしまいサリエラとリグーロに呆れられてしまったくらいだ。
そしてその結果、やはりこの『収納棚』の大きすぎる容量も秘密にしよう、となった。ただ、『収納棚』の存在自体は公にしておいた。人前で使えないのは不便だし、ダンジョン踏破者のメンバーの一人だから、この程度は出来ないと説得力がないからかえって余計な疑念を持たれてしまうと言われたからだ。
しかし、俺の『収納棚』は容量が多いとは言え、今回の米袋と小麦袋については俺もサリエラも緊急時以外はノータッチだ。
運搬に誰でも取り出せる『収納ポーチ』や『収納袋』以外を黙って使うのは、お国の定めた法律に反するらしい。軍事的な理由も込みでそうなっていると言うのだから、結構真っ当に法治国家している。
なお、俺もサリエラも、きちんとどこかの商会に所属し、お国から発行される免許を所持していれば運搬業で一生食うに困らなくなる程稼げるそうだ。冒険者引退後はその道もありだよ、とサリエラに勧められてしまった。サリエラ自身はリグーロの側を離れたくないから、今の所、運送屋になるつもりはないらしい。
閑話休題。
サリエラの話に戻ろう。
サリエラは冒険者ランクがDとなった。これも予定通り、想定通りだ。
元々彼の場合、実力が伴わなかった訳ではない。単に神様からそうならないように誘導されていただけだ。その理由も、今なら分かる。
今のこの結果、二人にとって最優のこの結果を導き出すためにタイミングを調整されていたのだ。
まったく、神様ってヤツは……。
「さぁ、こちらは準備出来ましたよ」
馬車に荷物を載せ終えたリグーロが俺に声をかけてくる。
その声に応える為、俺は考え事を途中でやめて手を軽く挙げた。
「おう、分かった。では、そろそろ行くか?」
「そうだね。あちらにはケンもいるし、足りない物は向こうで買いそろえればいいよ。彼なら色々と融通してくれるだろうからね。それに、この街に帰ってくるだけなら半日で戻れるからね」
そうだな。
……。
そうだった、ケンたちの事をすっかり忘れていた。ネタ晴らしもしていなかったな。
……、まぁ、いいか。
「ダンジョンコアを破壊してからこの辺りに魔物がいなくなったので私一人でも戻ってこれます。だから、大丈夫ですよ」
……、ん? リグーロが妙な事を言い出したぞ。
「待って待ってリグ! 一人でなんて危ない事をしないで!」
「サリエラ、私はこれでも神官であり、あなたと同じDランクの冒険者ですよ。だから平和になったこの周辺なら一人で出歩いても大丈夫です! 私は、あなたの側にいられるほどに強くなりました!」
何と言う自信過剰。今までの思慮深かったリグーロはどこへ行ってしまったのか。
確かに少し前のリグーロと比べたらケタ違いに強くなっているが、それでも勇者ほどではない。そもそも神官の攻撃は対ゴースト、対ゾンビ向けであって、ゴブリン等の生身の魔物相手は殴打しなければならない、基本的には非攻撃職なのだ。
しまったな。どうやら養殖式クラスアップは内気なリグーロに余計な慢心の種を植え付けてしまったようだ。
「駄目だよ、リグ!」
そうだ、言ってやれサリエラ。
世の中、危険で一杯なのだと。
「リグは魅力的なんだから、誰かに襲われたらいけないよ! 盗賊だっているかもしれない! だから一人で街間を移動しないで!!」
……、え!?
そこ? 注意するとこ、そこなのか!?
「は、はい、分かりましたサリエラ。それなら、一緒に行きましょう?」
「ああ、リグ。いつでも一緒だよ」
そうして二人は抱きしめ合い、目線を交わし、熱いキッスを……。
あ、はい。
二人は大きな障害を乗り越えたからか、今まで以上にラブラブだ。ビジュアル的には普通に美男美女なので健全に見えるのが救いだろうか。サリエラがリグーロに覆いかぶさるような体勢でなければ、だが……。
そっと視線を二人から外したのは、その、なんだ。紳士的な行為だと受け止めて欲しい。
そんな阿呆な事を考えていると、後ろから声をかけられた。
振り向き確認すると、教導官ゴリラことヒルトさんがいた。
「あー、はいはい、ご馳走様。仲がいいのは結構な事だ。だが、テメーら、油断だけはすんじゃねーぞ? それとあっちにいる先輩の言う事、ちゃんと聞いとけよ」
なんか親父みたいな事を言い出した。とても親切なゴリラだった。
その親切な親父ゴリラの隣には、受付ゴリラがいた。名前は、結局知らないな。
「Dランク期待の新星がいきなり二人も異動で、私は少し寂しいです。でも、おめでとうございます」
受付ゴリラは相変わらず丁寧だった。
そして微妙に内部機密を漏らしていた。周囲に人はいないし、教導官ゴリラも気に留めていないのでサリエラが受けた異動命令はそれほど重要な話ではないのだろう。だが、この生真面目ゴリラでさえ、こうやって何かの拍子にポロリしてしまうのだから、俺の出自や能力、職業などは可能な限り秘密にすべきなのがよく分かった。
「はい、ありがとうございます!」
「行ってきます!」
そんな俺の内心など誰も知らぬままに、熱いベーゼを終えた二人は元気よく返事を返し、見送りに来てくれたゴリラ二名に手を振っていた。何故かサイドチェストポーズをしているゴリラズに、俺も返礼のサイドチェストポーズをしてから、馬車に近づく。
そんな俺に走り寄ってきた人影が。
すわっ、俺に一目ぼれした女性か!? と思ったが、そんなはずはなかった。武器防具屋の店主だった。
「よう、間に合ったな。これ、もってけ。選別だ」
「え?」
開口一番、手に持っていた剣と剣帯を俺に差し出してきた店主に、俺はどう答えていいのか分からなかった。
「こいつはお前さんが持っているといい。武器無しじゃ、いくらなんでも危険だろう?」
「え、ええ。それはそうですが。いいのですか?」
武器はきちんと袋槍を持っているのだが、傍目から見たら単なるナイフだ。それを不憫に思ったのだろうか。なんだかだました気になってしまう。
だが、そんな俺の余計な気を払しょくするように、力強く肩を叩かれた。
「いいか? ハッタリってのは大事なんだ。世の中、強そうなヤツには関わらないようにしようって小物も少なくない。小事に足を取られたくなけりゃ、その筋肉に見合うだけの武器は持ってなきゃなんねぇのよ。分かったな!」
「え? はい!!」
本当によく分からない。いや、言っている意味は分かるが、どうして突然こんな事に……。
すると俺の戸惑いを見た店主が、鼻の舌を人差し指で擦り、照れながら教えてくれた。
「あのメイスがああなる程の強敵に打ち勝ったんだ。他の誰がどう思おうが、俺は勇者でも何でもないアンタこそが英雄だと思ってるんだぜ。だから、そんな英雄を丸腰でこの街から立たせちゃいけねぇって、思ってな」
……。
表舞台に立たない方がいいと思っていた。人からの賛美など、小市民な俺には煩わしいものだと思っていた。
でも、そうか。
「ありがとう。大切に使わせて頂きます」
店主は俺のその答えに、おうよ、と返してくれた。
うん、俺は勇者ではない。
だが、勇者よりも希少で強力な聖騎士だ。
……、本当に、だましているようで腹が痛い。だが、それは俺の気持ちの問題だけだ。店主は俺の事を英雄だと言ってくれた。ならせめて、それらしく振る舞う事で彼の気持ちに応えよう。
胸を張って、俺はフロントダブルバイセップスのポーズで意志を示し、彼はそれに頷いてくれた。
こうして俺の新たな旅(半日だけ)は始まった。
「では、出発致しますのでお乗りください」
御者の人が声をかけてくる。
馬車は、リアカーのような粗末なものだ。元々街中を走る為のもので、近場使いなので囲いも椅子も安物。守りも薄く、ゴブリンでさえ破壊出来そうな程にモロそうな代物だった。危険蔓延る街外で運用するには不似合いだが、安物なのでいざとなったら捨てて逃げられる利点もある。
荷物も小麦の袋五個、米の袋五個、それぞれ二キログラムずつの個包装で合計ニ十キロ分しかない。この量は俺の『収納棚』に余裕で入る量だから、捨てていく心配もない。
その俺の『収納棚』の中身だが、結局聖槍、魔槍の類は取り出せなかった。いや、袋槍以外は無理だと言ってもいいだろう。最初はMPが足りないだけだと思っていたが、調べていく内にどうやらロックがかかっているようだと判明した。恐らく、この世界の今の武力的に、俺の所有する武器は強すぎるから神様辺りが取り出せないようにしているのだと推察している。
「文字通り神器だからな。制限もされるか」
いつか、しかるべき時が来たら取り出せるようになるのだろう。そんな機会は訪れないで欲しいものだが、同時に、しかるべき時の為の保険がある事にほっとするのは、俺が自然災害大国の日本出身だからだろうか。
ちなみに俺の『収納棚』は棚のくせに容量が極めて大きい。今入っているものだけでもサリエラの所有可能量を大幅に超えている。しかもまだ全容量の一割にも満たない。ただし、棚と言うだけあってサイズが大きすぎるものは入らない。辛うじてフルプレートとタワーシールドがセットで収まるサイズで、この馬車くらいのサイズだとギリギリ無理だ。
ただ、数だけは異様に入るので、今も俺の『収納棚』には二キロの米袋が百個、小麦の袋も百個、それ以外にも水、酒数種、調味料各種が大樽単位でいくつも入っており、調理済みの料理も二週間分は入っている。いくつ入るか試していたら、どこまでも入ってしまいサリエラとリグーロに呆れられてしまったくらいだ。
そしてその結果、やはりこの『収納棚』の大きすぎる容量も秘密にしよう、となった。ただ、『収納棚』の存在自体は公にしておいた。人前で使えないのは不便だし、ダンジョン踏破者のメンバーの一人だから、この程度は出来ないと説得力がないからかえって余計な疑念を持たれてしまうと言われたからだ。
しかし、俺の『収納棚』は容量が多いとは言え、今回の米袋と小麦袋については俺もサリエラも緊急時以外はノータッチだ。
運搬に誰でも取り出せる『収納ポーチ』や『収納袋』以外を黙って使うのは、お国の定めた法律に反するらしい。軍事的な理由も込みでそうなっていると言うのだから、結構真っ当に法治国家している。
なお、俺もサリエラも、きちんとどこかの商会に所属し、お国から発行される免許を所持していれば運搬業で一生食うに困らなくなる程稼げるそうだ。冒険者引退後はその道もありだよ、とサリエラに勧められてしまった。サリエラ自身はリグーロの側を離れたくないから、今の所、運送屋になるつもりはないらしい。
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