空晴ラビット 1

やました

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第1章

第2話 出会い

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「やっと……着いた……」

私は息を切らしながら何とか学校へたどり着くことができた。

片道30分とはいえ、階段の多い通学路には心底参ったとしか言いようがない。

何より、この獣神高校へ続く階段も相当な体力を使った。

 「体力つけなきゃ……ダメだぁ」

私はそう心に誓った。

それにしてもなんて大きな学校なのだろう。
こんな小さな村にいつの間にか出来ていたこの学校は、この場所には似つかわしくないほど綺麗で、まるで教会のように見える。
どこからか鐘の音が響き渡りそうな雰囲気だ。

「今日からここに通うんだ……」

心がとてもウキウキする、そんな気分に浸って歩いて行くと、目の前に人集りが見えてきた。

どうやらクラス表を見ている学生のようだ。

……けど、私に人集りをかき分けてクラス表を見に行く体力はもうなかった。

仕方なく私は人集りから少し離れた場所から、人がいなくなるまで待つことした。

しばらくの間ぼーっと人集りを眺めて待っていると、
人集りの中の1人と目が合った。
白い綺麗な長髪のその女の子は、私のところへ走ってくる。

「はぁ、はぁ、クラス表見れた?その様子じゃまだ、見れてないのかな?」

女の子は私に笑顔で話しかけてきた。

近くで見るとなんてかわいい女の子だろう……。ブルーの瞳に引き込まれそう……。耳と尻尾を見る限り狐の半魔獣族なのかな?

「う、うん、人集りが凄くて……。人が空くまで待ってたんだ。」

私はそう答えた。
狐の女の子は、あはは!そっかそっか!と笑った。

「じゃあ、あたしが代わりに見てくるよ!名前は?」

「えっ!ミ、ミヨコ……ですっ」

「おっけ!ミヨコちゃん!ちょっと待っててね!……どぉりゃー!!」

狐の女の子は勢いよく人集りに向かって行き、あっという間に見えなくなってしまった。


……しばらくすると、狐の女の子はヘトヘトになりながら戻ってきた。

「はぁはぁ、お待たせぇ~見てきたよぉ……はぁはぁ、」

「お、お疲れ様……。なんかゴメンなさい……代わりに見に行ってもらってしまって……。」

私はなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

すると、息を整えた狐の女の子は、凄く嬉しそうな顔で私を見た。
私はピクッと体をひくつかせる。


「あたしと同じクラスだよ!Aクラス!やったー!ミヨコちゃんと一緒だ!」

狐の女の子は嬉しそうに私の手を掴みクルクルと回った。

「ふ、ふぇ~~~!!」

私は情けない悲鳴と共に目を回しその場でしゃがみこんでしまった。

「わわわ!ごめん!大丈夫!?」

狐の女の子は心配そうに私の顔を覗き込んだ。

すると、遠くの方からもう1人の女の子が近づいて来る気配がした。

「ちょっと、キュトア!何してるの!?ゴメンなさい、そこの方……大丈夫?立てる?」

私は必死にピントを合わせようと、手を伸ばしてきた女の子をじーっと見た。

……あれ?んん??

何かがおかしい気がする……。
徐々に目が回復してきて、手を伸ばしてきた女の子のピントが合ってきた。

「ふ、ふぇ~~~~!同じ顔の女の子が2人!?」

なんと狐耳の女の子が目の前に2人いたのだ。
目が回ったせいではない。
本当に瓜二つの女の子がそこに立っていた。

2人の狐の女の子はキョトンとした後、あはは!と笑った。

「驚かせてごめんね、あたしたち双子なの!私が妹のキュトアで、こっちは姉のサフィア!よろしくね!ミヨコちゃん!」

キュトアと名乗るその女の子はそう言ってニコッと笑った。

「よ、よろしく、キュトアちゃん、サフィアちゃんっ」

私は戸惑いながらも挨拶をした。
双子だなんて、生まれて初めて見た。

「もう、キュトアったら……あたしと違うクラスだったからって落ち込んで……、同じクラスの子見つけたからってはしゃぎすぎよ!」

サフィアちゃんはそう言ってキュトアちゃんの頭にチョップした。

「あぅ!ご、こめんなさいぃ~」

キュトアちゃんはそう言って頭を抱えた。

「普通、双子は絶対クラスが別れるのよ、中学でもそうだったでしょ?」

「うっ、そ、そうだね……」

キュトアちゃんはちょっとしょんぼりした顔をした。
よっぽどお姉さんと一緒のクラスが良かったんだな……。
なんだか、かわいい……。

私は思わず、ふふっと笑った。

「ちょっとー!ミヨコちゃんなに笑ってるのー!すごく悲しかったんだからぁ~!」

キュトアちゃんはぷりぷりとほっぺを膨らませた。

「あっ、ゴメンなさい!つい…可愛くて……」

「いいのよミヨコちゃん、キュトアに謝る必要は無いわ」

サフィアちゃんはそう言ってふん!っとそっぽを向く素振りをした。

「も~!サフィアまで~!ミヨコちゃん!もう教室に行こぉよぉ~」

「わわ、分かったよっ、サフィアちゃん、またあとでね!」

「えぇ、困った子だけど、キュトアをよろしくね、ミヨコちゃん。」

うん!と、私はサフィアちゃんにそう言った。
きっと、サフィアちゃんは妹のことが心配なだけなのだ。

私はキュトアちゃんに引っ張られながら、またふふっと笑った。


3話へ続く





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