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第1章
第6話 探しもの
しおりを挟む「だ、誰……?」
「あぁ、私、ラティモアと申します。以後お見知りおきを。」
天使と名乗るその男は十字架の祠に腰掛け、足組みをしながらそう言った。
「あ、あの……その腰掛けてる祠、大切な所なので、座らないでもらえませんか……?」
私は恐る恐るそう言った。
「おっと、それは失礼。」
男は慌てて立ち上がる。
「この辺に「探し物」の気配がしてね、来てみたんだけど。どーも気配が薄くて……。」
男はそう言ってため息をついた。
「探し物……?」
何のことだろう。
「えっと……それは今日中に終わるんですか?」
外は暗くなり始めている。
私はこれから晩御飯の支度をしなくちゃいけないし……。
一緒に探す余裕はないかも……。
「いや、これは長期戦になるつもりだし……。まぁ、いいや。」
「てなわけで、今日泊めてくれない?☆」
男は手を合わせてお願いしてきた。
「え、えぇ!?」
急すぎて頭が追いつかない……。
ど、どうしたら……。
「あ、寝床があれば大丈夫だから!それに、幼気な少女をおそう趣味はないさ。」
う、直球だなぁ……。本当に大丈夫なのだろうか……。
ミヨコは疑いながら後退りした。
ぐぅー……
すると二人のお腹が音を立ててなった。
「あはは、腹の虫は正直だねぇ」
「う……、これから晩御飯つくるので、良かったらどうぞ。」
私は仕方なく謎の男を迎え入れることにした。
「はぁ、食った食った!悪いねぇ、ご馳走してもらっちゃって。」
「いえ……、今日はたまたま買いすぎちゃったので……。」
とは言うものの、このラティモアと名乗る謎の男を迎え入れて本当に良かったのだろうか。
それに、何故こんなところに「探し物」なんて。
「それで、その「探し物」っていうのは何なんですか?この森の中にある物なの?」
私は彼にそう聞いた。
「いや、どうやら勘違いをしたみたいだ。ここに探し物はないよ。」
「え、じゃあ、何故まだここに?」
「……。」
ラティモアは私を見ながら黙り込んだ。
……?私の顔になにか付いているのか、じーっとこちらを見ている。
「あ、あの……何か……。」
ドキッとするほど整った綺麗な顔…。
私は思わず顔をそらした。
「……少し、似ているな。あの人に。」
あの人?一体、誰のこと……?
「きみ、両親はどこへ?」
「……分かりません。人間界で、はぐれてしまいました。両親を探すために今は獣神高校に通っています。」
私は何故か正直に話してしまった。
話して……良かったのだろうか。
「あぁ、獣神高校ね。話には聞いてたけど……。じゃあ、マリアちゃんと同級生かぁ、元気でやってるかな~」
「マリアちゃん……?」
「あぁ、知らない?生徒会長になったって聞いたけど。学生の唯一の天使。いるだろ?」
天使ってその子のことだったんだ…。
「はい……。います。知り合いなんですか?」
「まぁ、天界の教え子みたいなものさ。よろしくやっておくれよ。気難しい子だけどさ!」
ラティモアはあははと笑った。
「それより、君の両親。2人とも魔獣族なのかい?何故君たち魔獣族にとって危険な人間界に居たりしたんだ?」
ラティモアは不思議そうにそう言った。
「いえ、父は兎の魔獣族ですが、母は人間です。何故人間界にいたのかは私も分かりません……。ラティモアさんの言う通り、人間界で魔ノラに襲われて兄と私だけこの結界へ逃げてきました。」
「そっか。大変だったね。君には兄がいるんだ。その兄は今どこに?」
「人間界へノラとして両親を探しに行きました。たまに現状報告で帰ってきます。」
今のところ良い報告はないけど……。
「1人で行ったのかい?大丈夫なの?」
「兄は他の魔獣族より魔力が強いので……。でも、心配はしています。いつも兄に任せっぱなして……。」
こんな事まで話してしまうなんて。でも、ラティモアは真剣に話を聞いてくれて、つい話してしまった。
昔を思い出して少し、泣きそうにもなってしまった。
「大変だったね。手伝えることがあれば力になるよ。君の兄にも1度会ってみたいな。やはり魔獣族とはいえ、人間界は危険だから。さ、もう今日は遅いから寝ようか。」
ラティモアは私の頭を撫でると布団に横になった。
私も寝室で寝よう……。
なんだか相談できてスッキリした気がする。
私は居間から寝室に入ろうとした。
「あ、そうだ。最後に一つだけ聞いてもいい?」
ラティモアが話しかけてきた。
「なんですか?」
「君の母親は本当に人間なんだよね?」
その時はその質問の意味はまったく分からなかった。予想もしなかった質問に、私は深く考えなかったのだ。
「人間ですよ?」
私は迷わずそう答えた。
「……そっか。おやすみ。」
ラティモアはそう言って寝てしまった。
私も寝室に横になると疲れていたせいか、すぐ眠りについた。
7話に続く。
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