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Meets02 ホスト系アサシン
14 ぬくもり
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伝書鳩のくるっぽー(仮名)がアニーに新たな指令書を持ってきた。
あれだ、きっと、冒頭は「私だ」って書いてあるに違いない。
そんでもって最後は「なお、この指令書は自動で消滅する」って書いてあるに違いない。
アニーはその小さな紙切れを一瞬で読んで、マッチで燃やした。焦げた臭いが部屋に広がる。
「なんだ、自分で燃やすんだ」
ミチルは少しがっかりして口走った。
「そりゃ、そうよ。勝手に消えるワケないでしょ」
「魔法とかで、ポン! て消えるのかと思った」
「ええ? 魔法?」
アニーは可笑しそうに笑う。ミチルは何か変なことを言っただろうかと首を傾げた。
だってこの世界は魔法があるんじゃないの?
ジェイの持ってた剣は魔剣だって言ってたぞ。
「そういうのは西の大陸の技術でしょ。カエルレウムとかアルブスとか」
「そうなの?」
知らない名前の国が出てきたけれど、ミチルには覚えられない。
「こっちの大陸は未だに原始的だよ。魔術師なんて見たこともないね」
「へえー……」
海を隔てるだけでそんなに違いがあるのかと、ミチルは少し驚いた。
ファンタジーの世界だったらどこに行っても誰に会っても魔法に遭遇するものだから。
そんな会話をしているうちに、アニーは素早く着替えた後、洗面台の棚から古びたナイフを取り出し、バックルに取り付けた。
「それじゃあ、ミチルは留守番してて」
「え? もう行くの? 仕事って夜なんじゃないの?」
「今夜の仕事は相当でかいみたいだ。昼間に打ち合わせがいる。帰りは朝になるからミチルはいい子で寝てて」
「オ、オレも行きたい!」
「ええ?」
ヤベ! 思わず言ってしまった。
だってなんだかアニーの仕草がよそよそしくて。まるでこれが最後みたいな感じだったから。
「しゃ、社会見学! させてよ!」
「──冗談」
アニーは鼻でせせら笑った。その笑顔は完全にミチルを拒否している。
でも。でも、今別れたら、二度と会えないような気がする。
それは、なんか、ヤダ。
「オレも連れてって!」
「ダメ。危険だ」
「だいじょぶ! オレ、前も魔物がわんさか出る森に行ったんだよ! 勇敢に戦ったことだってあるんだから!」
「ミチル」
アニーは真顔になってミチルの右腕を取り、勢いのままに壁にその身体を縫いつける。
「!」
深い青をたたえた瞳がミチルを捕らえ、低く甘い声で囁いた。
「あんまりワガママ言うなら、この場で足腰立たなくするよ……?」
「え──」
ミチルが反応できずにいると、アニーの左手が腰に伸びてそのまま素肌を下になぞった。
「おぎゃああぁあ!」
「──ふ、ムードも何もないね」
アニーはそこでパッと両手を離してミチルに自由を与える。
今までで一番ホンモノっぽい感じに、ミチルは頭が沸騰していくようだった。
「大丈夫。明日の朝、俺が帰ったら港に連れて行ってあげる」
「み、港……?」
「今夜の報酬があれば、ミチルがカエルレウムに渡る旅費になるから」
「そ、そんな大金もらえないよ!」
そうじゃない。欲しいのはそういうのじゃない。
けれどミチルはうまく言えなかった。
「……もらって欲しい。短い間だったけど、とても楽しかったから」
「でも……」
アニーは最後にとても優しい顔で笑っていた。
「あんなによく眠れたのは二十年ぶりだった」
「──」
アニーにとっての夜は。
アニーにとっての夜は、両親が殺された記憶が支配する世界。
安楽に眠ることを、彼自身が許さなかった。
たった二日。素性も良くわからない、ただの子どもの温もりが彼を癒したと言うのか?
「……おやすみ」
そんな言葉を残してアニーは扉を閉めた。
ミチルは床にへたり込んだまま、彼の温もりが遠ざかるのを思い知った。
あれだ、きっと、冒頭は「私だ」って書いてあるに違いない。
そんでもって最後は「なお、この指令書は自動で消滅する」って書いてあるに違いない。
アニーはその小さな紙切れを一瞬で読んで、マッチで燃やした。焦げた臭いが部屋に広がる。
「なんだ、自分で燃やすんだ」
ミチルは少しがっかりして口走った。
「そりゃ、そうよ。勝手に消えるワケないでしょ」
「魔法とかで、ポン! て消えるのかと思った」
「ええ? 魔法?」
アニーは可笑しそうに笑う。ミチルは何か変なことを言っただろうかと首を傾げた。
だってこの世界は魔法があるんじゃないの?
ジェイの持ってた剣は魔剣だって言ってたぞ。
「そういうのは西の大陸の技術でしょ。カエルレウムとかアルブスとか」
「そうなの?」
知らない名前の国が出てきたけれど、ミチルには覚えられない。
「こっちの大陸は未だに原始的だよ。魔術師なんて見たこともないね」
「へえー……」
海を隔てるだけでそんなに違いがあるのかと、ミチルは少し驚いた。
ファンタジーの世界だったらどこに行っても誰に会っても魔法に遭遇するものだから。
そんな会話をしているうちに、アニーは素早く着替えた後、洗面台の棚から古びたナイフを取り出し、バックルに取り付けた。
「それじゃあ、ミチルは留守番してて」
「え? もう行くの? 仕事って夜なんじゃないの?」
「今夜の仕事は相当でかいみたいだ。昼間に打ち合わせがいる。帰りは朝になるからミチルはいい子で寝てて」
「オ、オレも行きたい!」
「ええ?」
ヤベ! 思わず言ってしまった。
だってなんだかアニーの仕草がよそよそしくて。まるでこれが最後みたいな感じだったから。
「しゃ、社会見学! させてよ!」
「──冗談」
アニーは鼻でせせら笑った。その笑顔は完全にミチルを拒否している。
でも。でも、今別れたら、二度と会えないような気がする。
それは、なんか、ヤダ。
「オレも連れてって!」
「ダメ。危険だ」
「だいじょぶ! オレ、前も魔物がわんさか出る森に行ったんだよ! 勇敢に戦ったことだってあるんだから!」
「ミチル」
アニーは真顔になってミチルの右腕を取り、勢いのままに壁にその身体を縫いつける。
「!」
深い青をたたえた瞳がミチルを捕らえ、低く甘い声で囁いた。
「あんまりワガママ言うなら、この場で足腰立たなくするよ……?」
「え──」
ミチルが反応できずにいると、アニーの左手が腰に伸びてそのまま素肌を下になぞった。
「おぎゃああぁあ!」
「──ふ、ムードも何もないね」
アニーはそこでパッと両手を離してミチルに自由を与える。
今までで一番ホンモノっぽい感じに、ミチルは頭が沸騰していくようだった。
「大丈夫。明日の朝、俺が帰ったら港に連れて行ってあげる」
「み、港……?」
「今夜の報酬があれば、ミチルがカエルレウムに渡る旅費になるから」
「そ、そんな大金もらえないよ!」
そうじゃない。欲しいのはそういうのじゃない。
けれどミチルはうまく言えなかった。
「……もらって欲しい。短い間だったけど、とても楽しかったから」
「でも……」
アニーは最後にとても優しい顔で笑っていた。
「あんなによく眠れたのは二十年ぶりだった」
「──」
アニーにとっての夜は。
アニーにとっての夜は、両親が殺された記憶が支配する世界。
安楽に眠ることを、彼自身が許さなかった。
たった二日。素性も良くわからない、ただの子どもの温もりが彼を癒したと言うのか?
「……おやすみ」
そんな言葉を残してアニーは扉を閉めた。
ミチルは床にへたり込んだまま、彼の温もりが遠ざかるのを思い知った。
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