異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!

城山リツ

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Interlude03 ミチル is Love …

8 〇〇希望少年

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 坂之下さかのしたミチル。満18歳。異世界カエルラ=プルーマにやってきて〇〇日。
 それまで年上イケメンにうほうほしていたが、ついに正真正銘のショタに巡り会ってしまった。

「ミチルお兄さま! お会いしたかったです!」

 数多の障害(ジンの屈強な弟子達)をことごとく蹴散らして、若干10歳の少年は瞳をキラキラさせていた。

「えーっと……?」

 すぐ目の前のちんまい子どもの、度を超えた好意の眼差しにミチルは戸惑った。
 だが彼はピンク色のくせっ毛を揺らし、ルビーのように紅い目でミチルを熱っぽく見上げる。

「お忘れですか? 大会の一回戦で対戦した、ミモザです!」

「いや、覚えてるけどぉ……」

 おかしいな。こんな雰囲気だったっけ?
 あの猫少年は、もっと人を馬鹿にしたように笑って、軽く闇堕ちしていた印象だ。

 決して、今のように……

「ああん、覚えててくれたんですね! ミモザ、感激ィ!」

 ぶりぶりぶりっ子で、お尻をぷりぷりさせて、腰をくねらせながら笑顔を振り撒くような子どもではなかった。

「キミ、ほんとにあの時の子?」

 まるで陰と陽。決勝戦の時の邪悪な笑みはどこにもない。もっとも、今の笑みも無邪気ではないが。

「そうですよ。でも僕、あの時、自分が自分じゃない変な感じだったから……」

「何? それは本当か?」

 ミモザ少年の言葉に、ジンは眉をピクリと動かして反応するが、オジサンの言葉は子どもには聞こえていないようだった。


 
「僕、ずっとお兄さまに謝りたくて! 試合では酷いことしちゃってごめんなさい!」

 馬鹿にされた挙句、二時間も眠らされたことを思い出し、ミチルは苦笑いした。

「ああ、まあ……うん」

「許して……くれますか?」

 10歳の子どもに目をウルウルさせて謝られたら、許す以外の選択肢は人であれば、ない。

「う、うん。まあ、特に怪我もしなかったし……」

 ミチルがそう言うと、ミモザはパァッと顔を輝かせて喜んだ。

「嬉しいっ! お兄さま、好きっ!」

 そしてそのままミチルに抱きついて、お腹に顔を擦りつける!
 スリスリで、ぐりぐりっ!

「にゃあぁん!」

 思わずミチルは変な声が出た。
 その声にもちろん反応したイケメン四人は、ミチルに抱きついたミモザ少年を注視する。

「……ニヤリ」

 ミチル以外に向けられる悪魔のホホエミ!
 イケメン達は瞬時に理解した。

 このショタは、攻め希望である! と。


 
「おい、こら、クソガキ! 離れろ!」

 ミチルをショタおにの餌食にするわけにはいかない。
 エリオットはミモザの肩に手をかけて、ミチルから離そうとした。

「……」

「てめえ、無視すんのか!」

 一向にミチルの腰にしがみついて離れないミモザを、エリオットは体重かけて引っ張る。

「ふぐぐぐ……ッ!」

「ににににに……っ」

 だが、ミモザも見上げた根性でミチルの腰を離さなかった。10歳のわりに大した腕力である。

「ぎゃああ!」

 そんな体力自慢たちにミチルが耐え切れるはずもなく、真っ先に転んで尻もちをついた。

「お兄さま、ごめんなさい! 大丈夫ですかぁ?」

 そんなことになっても、ミチルから離れなかったミモザは、謝りながらもミチルに抱きついていた。ぷりぷり尻尾を振るようにお尻を振って。

「く、クソガキ……!」

 エリオットが悔しそうに歯噛みしていると、ミチル奪還のため、ついにあの男が立ち上がる!

「エリオット、俺に代われ」

「アニー!」

 アニーは笑顔のまま、額に青筋が立っていた。

「フッ、マフィアはなあ、悪ガキどもの扱いには慣れてるんだ。いっちょヤキ入れて──」

 ポキポキと拳を鳴らしながらミモザにむけてすごむアニー。それはイケメンにあるまじき行為。

「ああん、お兄さま、怖いぃん!」

 アニーの行動は完全に逆効果で、ミモザに更にセクハラさせる機会を与えるだけだった。
 少年はミチルの膝にちょこんと座って、怖がるふりしてミチルの胸をまさぐった!

「ふぁああ……ん!」

「……ニヤァ」

 ちっこくても攻め希望の微笑みが、アニーとエリオット、ジェイにもブッ刺さる。
 三人が戦闘体制に入ろうとした時、ジンの一喝が響いた。


 
「耐えろ、馬鹿者ども! 今はそれよりも重要なことがある!」

「ジジン!?」

「ジジイではない、先生と呼べ!」

「うるせえ、止めんな!」

 アニーとエリオットがぶうぶう文句を言うが、ジェイがとりあえず二人を抑えて聞いた。

「師範殿。この少年が何か?」

 ジンは内なる怒りを年の功で抑え、溜息を吐いた後、ミモザに言う。

「そこの餓鬼、聞きたいことがある。その間シウレンは貸してやるから、素直に吐いた方が身のためだ」

 怒りはだいぶ隠しきれていない。

「先生え……」

 ミチルが呆れていると、ジンは悔しそうに更に顔を歪めた。

「シウレン、辛いだろうが耐えろ。今夜は儂が必ず清めてやるから……っ」

「おおい! 子どもの前で何てこと言いやがる!」

 真っ赤になって怒るミチルを側で見て、ミモザは口を尖らせた。
 ジンはこの不貞腐れた少年から、必要な情報を引き出せるのか。

 そして、今夜も誰がミチルを清めるか戦争が勃発してしまうのか!?
 それはこの攻め希望ショタにかかっている!
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