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第六章 鵺が啼く空は虚ろ
第7話 共鳴
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「ようするにどうなんだよ? 銀騎さんの容体をお前はわかってるのか? それとも超天才の親父が作った術式なんて理解できないって言いたいのか?」
皓矢の説明に回りくどさを感じた永は少し苛立って結論を急く。
「どちらかと言えば、後者かな。父の術式は精巧かつ複雑で、父でないと全てを理解するのは不可能だろうね」
「そんなんで大丈夫なのか?」
鈴心に聞いていた印象とは逆に自信無さげな皓矢に、蕾生も思わず口を挟む。
「天才に凡人が報いるためには試行錯誤を繰り返すしかない。そのために君達を連れてきてもらったんだ」
「具体的にはどのような処置をお考えなんです?」
鈴心の問いに、皓矢は視線を蕾生に定めて言った。
「僕が考えているのは、共鳴だ。先日、蕾生くんが鵺化する運命を聞かされて、一瞬だけど我を失ったことがあったよね?」
「ああ……」
「だけど、星弥がかけた言葉を聞いて君は冷静を取り戻した──様に僕には見えたのだけど」
「……よくわかんね。あの時は頭が真っ白だったから」
実は蕾生もそう思っているのだが、なんとなく肯定するのが気恥ずかしくてはぐらかしてしまった。
そんな蕾生の気持ちもわかっているのか、皓矢はそれを前提においた説明を始める。
「あの時、星弥と君のキクレー因子が共鳴したんじゃないかと僕は考えている。キクレー因子同士がリンクすることでお互いを正常に戻す作用があるのではないかと思うんだ」
「……」
永はそれまでツチノコ特有のものだと思っていたキクレー因子の真実がどんどん示されていくので、知識を更新するべく考え込んでいる。
「さらに言うと、蕾生くんが我を失った時、永くんと鈴心も君に縋りついてなんとか鵺化させないようにしていたよね。あれも同様の効果を本能的に君達が行ったんだと僕はみている」
「なるほど……」
キクレー因子に関しては永より基礎知識がある鈴心は納得して頷いた。
「キクレー因子には恐らく正負両方の作用がある。因子保有者の永くん、鈴心、星弥が君を止めようとしたから君は止まることができた」
「つまり、私達が星弥に戻って欲しいと願えばいい、ということですか?」
鈴心の少し希望を持った問いかけに、永はまったをかけるように懐疑的な意見を示す。
「そうは言っても、念じるだけで戻るとは思えないな。僕らはこれまでキクレー因子のことなんて気にしたことなんかないし、あんた達みたいな不思議な力はないけど?」
「ははっ、目に見える力だけが全てではないよ。君達は充分に不思議な力を持ってる。ただ、その使い方を知らないだけだ。今回は僕がそれを引き出して使わせてもらう」
そう言われて永は複雑な顔をした。皓矢に自分の中の何かを委ねることに抵抗があるのだ。
「俺達は何をすればいいんだ?」
蕾生が聞くと、皓矢は簡潔に答えた。
「星弥に触れて、あの子を想ってくれればいい。その道筋は僕が示す」
「──わかった」
蕾生が大きく頷くと、永は慌て出した。
「ちょっと、ライくん、即答なの?」
「だって銀騎を助けるためにここに来たんだろ?」
蕾生らしい単純思考なのだが、永はぶつぶつ文句を呟く。
「そうだけどさ、もっとこう取引をさあ、せっかく恩に着せられるチャンスがさあ……」
「そんな駆け引きやってるヒマなんかないだろ。早く処置しないと、悪化したらどうするんだよ」
完全に蕾生の方が正論だったので、余計な損得を考えていた永はため息混じりに渋々頷いた。
「わかったよ、じゃあ銀騎さんが無事に目を覚ましたら、うんと恩着せてやろうっと」
「ありがとう。君達の好意に感謝するよ」
やっと皓矢は心から微笑んだ。そのまま一同は二階に上がり、星弥の部屋を目指した。
皓矢の説明に回りくどさを感じた永は少し苛立って結論を急く。
「どちらかと言えば、後者かな。父の術式は精巧かつ複雑で、父でないと全てを理解するのは不可能だろうね」
「そんなんで大丈夫なのか?」
鈴心に聞いていた印象とは逆に自信無さげな皓矢に、蕾生も思わず口を挟む。
「天才に凡人が報いるためには試行錯誤を繰り返すしかない。そのために君達を連れてきてもらったんだ」
「具体的にはどのような処置をお考えなんです?」
鈴心の問いに、皓矢は視線を蕾生に定めて言った。
「僕が考えているのは、共鳴だ。先日、蕾生くんが鵺化する運命を聞かされて、一瞬だけど我を失ったことがあったよね?」
「ああ……」
「だけど、星弥がかけた言葉を聞いて君は冷静を取り戻した──様に僕には見えたのだけど」
「……よくわかんね。あの時は頭が真っ白だったから」
実は蕾生もそう思っているのだが、なんとなく肯定するのが気恥ずかしくてはぐらかしてしまった。
そんな蕾生の気持ちもわかっているのか、皓矢はそれを前提においた説明を始める。
「あの時、星弥と君のキクレー因子が共鳴したんじゃないかと僕は考えている。キクレー因子同士がリンクすることでお互いを正常に戻す作用があるのではないかと思うんだ」
「……」
永はそれまでツチノコ特有のものだと思っていたキクレー因子の真実がどんどん示されていくので、知識を更新するべく考え込んでいる。
「さらに言うと、蕾生くんが我を失った時、永くんと鈴心も君に縋りついてなんとか鵺化させないようにしていたよね。あれも同様の効果を本能的に君達が行ったんだと僕はみている」
「なるほど……」
キクレー因子に関しては永より基礎知識がある鈴心は納得して頷いた。
「キクレー因子には恐らく正負両方の作用がある。因子保有者の永くん、鈴心、星弥が君を止めようとしたから君は止まることができた」
「つまり、私達が星弥に戻って欲しいと願えばいい、ということですか?」
鈴心の少し希望を持った問いかけに、永はまったをかけるように懐疑的な意見を示す。
「そうは言っても、念じるだけで戻るとは思えないな。僕らはこれまでキクレー因子のことなんて気にしたことなんかないし、あんた達みたいな不思議な力はないけど?」
「ははっ、目に見える力だけが全てではないよ。君達は充分に不思議な力を持ってる。ただ、その使い方を知らないだけだ。今回は僕がそれを引き出して使わせてもらう」
そう言われて永は複雑な顔をした。皓矢に自分の中の何かを委ねることに抵抗があるのだ。
「俺達は何をすればいいんだ?」
蕾生が聞くと、皓矢は簡潔に答えた。
「星弥に触れて、あの子を想ってくれればいい。その道筋は僕が示す」
「──わかった」
蕾生が大きく頷くと、永は慌て出した。
「ちょっと、ライくん、即答なの?」
「だって銀騎を助けるためにここに来たんだろ?」
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「そうだけどさ、もっとこう取引をさあ、せっかく恩に着せられるチャンスがさあ……」
「そんな駆け引きやってるヒマなんかないだろ。早く処置しないと、悪化したらどうするんだよ」
完全に蕾生の方が正論だったので、余計な損得を考えていた永はため息混じりに渋々頷いた。
「わかったよ、じゃあ銀騎さんが無事に目を覚ましたら、うんと恩着せてやろうっと」
「ありがとう。君達の好意に感謝するよ」
やっと皓矢は心から微笑んだ。そのまま一同は二階に上がり、星弥の部屋を目指した。
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