転生帰録2──鵺が嗤う絹の楔

城山リツ

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第三章

3-24 守る手段

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「……ちょっと、言葉が出ないな」
 
「でしょ?」
 
 あらましを聞いた皓矢こうやは開口したまま頭を抱えた。
 
「一体、どこをどうしたら、そんなひん曲がった信仰心が生まれるんだろう……」
 
「所詮お坊ちゃまには下々の考えなんてわかんないよねえ」
 
はるか、言い過ぎだぞ」
 
「えー。だって眞瀬木ませき雨辺うべがこうなったのは、銀騎しらきが介入したからでしょう?」
 
 永が不服を言うと、それに鈴心すずねも追随した。
 
「銀騎はきっかけに過ぎないかもしれませんが、責任はあると思います」
 
「ほらぁ」
 
 すると皓矢は更に真顔になっていた。
 
「とにかくもう一度うちの文献を漁る必要があるな。少し時間が欲しい」
 
「おう、もっと詳細に調べてくれよな」
 
「俺たちはその間どうするんだ?」
 
「お兄様、私達にできることはありますか?」
 
 鈴心が聞くと皓矢は考えながら答える。
 
「そうだね。その雨辺うべすみれが信じている組織が知りたい。眞瀬木の協力者、伊藤と言う男、何よりメシアなんて存在は僕は初めて聞いた」
 
「うん、それはもうちょっと探ってみる」
 
「あと、できればそのお薬とやらのサンプルは手に入るかい?それが分析できれば──」
 
「ああ。わかった。やってみる」
 
「ハル様、危険です!」
 
 簡単に頷く永を鈴心が嗜めると、永は手を振って笑った。
 
「大丈夫だって、気をつけるから!梢賢しょうけんくんもいるしね」
 
「無理はするな。何かある前に引き返すんだ、いいね?」
 
「う、うん」
 
 しかし皓矢も鈴心同様神妙な顔で言うので、永は少し態度を改めた。
 
蕾生らいおくん」
 
「?」
 
白藍牙はくらんがは持っているね?」
 
「ああ」
 
 麓紫村ろくしむらに来てから蕾生は外出時はずっと白藍牙を背負っている。背にあるそれに手をかけて頷いた。
 
「何かあったら、鈴心と永くんは君が守るんだ」
 
「もちろん。けど、これが役に立つのか?」
 
 今の所白藍牙はただの木刀でしかない。蕾生は少し不安を覚えていた。だが、皓矢は自信を持って頷く。
 
「それは君の牙だ。使い方は君の心が知っている」
 
「……?」
 
 そんな抽象的に言われても困る。ただ白藍牙を握ると少し勇気が出る気がする。蕾生はその自分の感覚を信じることにした。
 
「こうなっては慧心弓けいしんきゅうどころじゃないかもしれないけど、そっちも探りなさい」
 
「ああー!そうだったー!どんどん最初の目的から遠ざかる!」
 
 今まさにそれを思い出した永は頭を抱えて大袈裟に叫んだ。しかし鈴心は既に諦めたような顔で溜息をついた。
 
「それもいつもの事です」
 
「ではまた連絡するよ。くれぐれも気をつけて」
 
 皓矢が締めようとした所で遠くから星弥せいやの声が聞こえてきた。
 
「すずちゃーん!すずちゃー……」
 
 だが、その姿を再び見せることもなく電話は切れた。
 
「はあ……」
 
 鈴心は今日一番の大きな溜息をついていた。







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