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全日本プロレス90年代外国人列伝
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小橋建太が戦った最高の男たち。
在りし日の思い出が詰まった一冊。
それも当事者であり語り部となった小橋さんだけの思い出としてではなく、
「みんなの思い出」
として綴られた本である。
構成が見事で、みんなの思い出を標榜する本で真っ先に登場するのが
アブドーラ・ザ・ブッチャー。
これほど〝みんなの思い出〟に残る選手は長いプロレスの歴史の中にも珍しい。直後にはアンドレ・ザ・ジャイアントが登場。その後も要所でハンセン、ウィリアムス、ゴディら強豪からファンクス、デストロイヤーといった古豪も。
その合間に、いたいた!って選手から、私のお目当てでもあったディートンに始まるイイ温度の選手が入り、さらに全く記憶にない選手や、のちに有名になる選手の無名時代の記録までがひしめいている。
彩り豊かな顔ぶれを紐解けば貴重な証言から全くの余談まで出るわ出るわ。
90年代全日系外人レスラーという金脈がゴールドラッシュに沸いている。
マイク・バートンやジム・スティール、ジョージ・ハインズは(あの)豊橋市体育館で見ている。もちろんスティーブ・ウィリアムスも。まさか、あの時に見たバートンもスティールもハインズまで全然違う姿かたちをまとって居たとは、中学生の私は知る由もなく。
ただただテレビや雑誌で見たターボドロップⅡに喝采を送っていた。
でも僕が全日本プロレスの会場に足を踏み入れた時、小橋さんは航海に出てしまっていて入れ違いだった。私が晩年のウィリアムスにサインと握手をしてもらった同じ会場で小橋さんは中京テレビの佐藤アナウンサーの絶叫とともにバックドロップドライバーを食らっていたのだ。
本書の中でも語られるように、小橋イズムとは国籍も王道も邪道も地方もビッグマッチも前座もメインも関係なく、全力でファイトし熱くなること。
これは佐山聡さんが言うところの「猪木イズムとは没入力であり、猪木さんはプロレスに没入していた」という言葉に重なる。
小橋さんがプロレスに没入していた90年代の輝ける記録と記憶の名勝負の宝箱を開いて、みんなと分かち合う温かい本。
その選手の魅力や実力、意外な素顔に至るまで、小橋さんの眼差しは厳しくも温かい。
決して〝とんだいっぱい食わせモノ〟のレッテルが張られたからと言って今更ながらに貶めることはせず、むしろそういう選手でもいいところ、惜しかったところ、それぞれの魅力を短くてもちゃんと書いているように思う。
笑えるけど馬鹿にはしない。
これってすごく難しいし、実際それじゃ真面目過ぎてつまらなくもなりがち。
この温度がちょうどいい。
もっと熱すぎて大げさでも胃もたれするし、冷めてると皮肉にしか思えない。
元の素材の良さと語り部の小橋さんのキャラクターがマッチした、とてもいい本です。
また日テレプロレスアーカイ部で視聴できる動画も書いてあるけど、それがたとえ自分が負けてしまった試合でも惜しみなく賛辞を送り、それをもってサブゥーへの手向けにしているようにも思う。確かにあの決着シーンは絶品で、オブライトとの異色コンビ…もっと見たかったな。あのデカい背中を踏み台にしてすっ飛んでいくサブゥー、かっこいいもんな。
ハンセンとのエピソードは「一冊書ける」というほどで、実際かなりの分量を割いている。そしてファンとしても、そりゃあ読みたいし聞きたいに決まっている。
ただそれを「当初は構想に入ってなかったが、紙面の都合で有名どころの選手も含めた構成になった」と素直にそのまま書いてしまっているのも小橋さんのいいところ。
そこは「やはり彼らとの激闘はファンの皆様としても外せないだろうという思いから云々」とかナントカ書いておけばいいものを、まるで担当の編集者さんとのやり取りをそのまま載せたようなフレーズに、本書の飾り気のなさが垣間見える。
そんな小橋さんの目を通して追体験する90年代全日本マットの、いわば青いコーナーサイド(昔の全日本はリングがツートンカラーだったのだ)の物語。
馬場さんの息遣い、三沢さんの生きざま、大森隆男さんや秋山準さんらの台頭、全日本プロレスという歴史の、これもほんの一部という贅沢さ。
ひとつひとつの記事は長短さまざま、内容も濃淡があり、それがそのまま印象度合いや戦績にもつながっている。
そういえばデストロイヤーは息子のカート・ベイヤーがデビューしてから引退しているし、テリーは90年台に狂い咲きしてドリーは今でも健在だしでわかるけど、イワン・コロフがギリギリ参戦してたのが意外だったなあ。
リッキー・サンタナの写真がアイスマンなのはクスっと来ました。さすが小橋イズムはデスマッチ団体も関係なく網羅している…それとつくづく縁というのはあるもので。
この本にはよく大分県の荷揚町体育館が出てくる。
藤波辰爾さんゆかりの場所であり、小橋建太さんにも縁深い。
有力なプロモーターがいらしたとのことだけど、それ以上にこの場所にはプロレスを引き付ける磁場みたいなものがあったのかもしれない。
札幌中島体育センターや後楽園ホール、大阪府立体育会館とは、また違った地方会場ならではのエピソードは新鮮でうれしい。
有名な選手や団体、試合の話は出尽くしても、津々浦々の会場での話なんてそれこそ体育館の屋根の数ほどあるわけで。
昔よく読んでいた田中ケロさんの巡業日記シリーズみたいに、今度はそういう90年代全日本プロレス旅日記なんてのも面白いのではないだろうか。
もうこんなことみんな思ってるし言っても仕方ないんだけれど、
三沢さんもだけど、冬木さんが居てくれたらどれだけの話が出てきただろう。
猪木信者ならぬ冬木信者だった私は近年に出版されたり掲載されたりした国際プロレスに関する書籍やインタビューを読むたびに思う。天龍源一郎さんや、その奥様の本にも、三沢さん川田さんの本にも、こうして小橋さんの話の中にも、チラリチラリと顔をのぞかせているのがうれしい。うれしいけど、ああ…ボスはもうとっくに居ないんだもんな、とさみしくなる。
亡くなられたとき、私は高校生だった。
あのときだって悲しかった。残念だった。さみしかった。
でも自分が年月を重ねて、あのときのボスの年齢に近づくと、また違ったさみしさが込み上げてくる。
だから残った皆さんが元気なうちに、残せるものは残してほしい。
語れることは語ってほしい。
小橋建太さんの自伝のタイトルは「悔いは、ない」だった。
悔いのないプロレス人生の、悔いのない記録や記憶を、これからも語り継いでほしいし
それを見届け残していくのがファンの願いでもある。
この本も、そのひとつ。
猪木イズムが没入なら、小橋イズムは青春。
全力ファイトの青春から、振り返り分かち合う青春に移り変わっても、
小橋さんのプロレスラー人生は終わらない。まだ終わってもらっちゃ困る。
BigでBestなBabaさんの時代の素晴らしいBookでした。
在りし日の思い出が詰まった一冊。
それも当事者であり語り部となった小橋さんだけの思い出としてではなく、
「みんなの思い出」
として綴られた本である。
構成が見事で、みんなの思い出を標榜する本で真っ先に登場するのが
アブドーラ・ザ・ブッチャー。
これほど〝みんなの思い出〟に残る選手は長いプロレスの歴史の中にも珍しい。直後にはアンドレ・ザ・ジャイアントが登場。その後も要所でハンセン、ウィリアムス、ゴディら強豪からファンクス、デストロイヤーといった古豪も。
その合間に、いたいた!って選手から、私のお目当てでもあったディートンに始まるイイ温度の選手が入り、さらに全く記憶にない選手や、のちに有名になる選手の無名時代の記録までがひしめいている。
彩り豊かな顔ぶれを紐解けば貴重な証言から全くの余談まで出るわ出るわ。
90年代全日系外人レスラーという金脈がゴールドラッシュに沸いている。
マイク・バートンやジム・スティール、ジョージ・ハインズは(あの)豊橋市体育館で見ている。もちろんスティーブ・ウィリアムスも。まさか、あの時に見たバートンもスティールもハインズまで全然違う姿かたちをまとって居たとは、中学生の私は知る由もなく。
ただただテレビや雑誌で見たターボドロップⅡに喝采を送っていた。
でも僕が全日本プロレスの会場に足を踏み入れた時、小橋さんは航海に出てしまっていて入れ違いだった。私が晩年のウィリアムスにサインと握手をしてもらった同じ会場で小橋さんは中京テレビの佐藤アナウンサーの絶叫とともにバックドロップドライバーを食らっていたのだ。
本書の中でも語られるように、小橋イズムとは国籍も王道も邪道も地方もビッグマッチも前座もメインも関係なく、全力でファイトし熱くなること。
これは佐山聡さんが言うところの「猪木イズムとは没入力であり、猪木さんはプロレスに没入していた」という言葉に重なる。
小橋さんがプロレスに没入していた90年代の輝ける記録と記憶の名勝負の宝箱を開いて、みんなと分かち合う温かい本。
その選手の魅力や実力、意外な素顔に至るまで、小橋さんの眼差しは厳しくも温かい。
決して〝とんだいっぱい食わせモノ〟のレッテルが張られたからと言って今更ながらに貶めることはせず、むしろそういう選手でもいいところ、惜しかったところ、それぞれの魅力を短くてもちゃんと書いているように思う。
笑えるけど馬鹿にはしない。
これってすごく難しいし、実際それじゃ真面目過ぎてつまらなくもなりがち。
この温度がちょうどいい。
もっと熱すぎて大げさでも胃もたれするし、冷めてると皮肉にしか思えない。
元の素材の良さと語り部の小橋さんのキャラクターがマッチした、とてもいい本です。
また日テレプロレスアーカイ部で視聴できる動画も書いてあるけど、それがたとえ自分が負けてしまった試合でも惜しみなく賛辞を送り、それをもってサブゥーへの手向けにしているようにも思う。確かにあの決着シーンは絶品で、オブライトとの異色コンビ…もっと見たかったな。あのデカい背中を踏み台にしてすっ飛んでいくサブゥー、かっこいいもんな。
ハンセンとのエピソードは「一冊書ける」というほどで、実際かなりの分量を割いている。そしてファンとしても、そりゃあ読みたいし聞きたいに決まっている。
ただそれを「当初は構想に入ってなかったが、紙面の都合で有名どころの選手も含めた構成になった」と素直にそのまま書いてしまっているのも小橋さんのいいところ。
そこは「やはり彼らとの激闘はファンの皆様としても外せないだろうという思いから云々」とかナントカ書いておけばいいものを、まるで担当の編集者さんとのやり取りをそのまま載せたようなフレーズに、本書の飾り気のなさが垣間見える。
そんな小橋さんの目を通して追体験する90年代全日本マットの、いわば青いコーナーサイド(昔の全日本はリングがツートンカラーだったのだ)の物語。
馬場さんの息遣い、三沢さんの生きざま、大森隆男さんや秋山準さんらの台頭、全日本プロレスという歴史の、これもほんの一部という贅沢さ。
ひとつひとつの記事は長短さまざま、内容も濃淡があり、それがそのまま印象度合いや戦績にもつながっている。
そういえばデストロイヤーは息子のカート・ベイヤーがデビューしてから引退しているし、テリーは90年台に狂い咲きしてドリーは今でも健在だしでわかるけど、イワン・コロフがギリギリ参戦してたのが意外だったなあ。
リッキー・サンタナの写真がアイスマンなのはクスっと来ました。さすが小橋イズムはデスマッチ団体も関係なく網羅している…それとつくづく縁というのはあるもので。
この本にはよく大分県の荷揚町体育館が出てくる。
藤波辰爾さんゆかりの場所であり、小橋建太さんにも縁深い。
有力なプロモーターがいらしたとのことだけど、それ以上にこの場所にはプロレスを引き付ける磁場みたいなものがあったのかもしれない。
札幌中島体育センターや後楽園ホール、大阪府立体育会館とは、また違った地方会場ならではのエピソードは新鮮でうれしい。
有名な選手や団体、試合の話は出尽くしても、津々浦々の会場での話なんてそれこそ体育館の屋根の数ほどあるわけで。
昔よく読んでいた田中ケロさんの巡業日記シリーズみたいに、今度はそういう90年代全日本プロレス旅日記なんてのも面白いのではないだろうか。
もうこんなことみんな思ってるし言っても仕方ないんだけれど、
三沢さんもだけど、冬木さんが居てくれたらどれだけの話が出てきただろう。
猪木信者ならぬ冬木信者だった私は近年に出版されたり掲載されたりした国際プロレスに関する書籍やインタビューを読むたびに思う。天龍源一郎さんや、その奥様の本にも、三沢さん川田さんの本にも、こうして小橋さんの話の中にも、チラリチラリと顔をのぞかせているのがうれしい。うれしいけど、ああ…ボスはもうとっくに居ないんだもんな、とさみしくなる。
亡くなられたとき、私は高校生だった。
あのときだって悲しかった。残念だった。さみしかった。
でも自分が年月を重ねて、あのときのボスの年齢に近づくと、また違ったさみしさが込み上げてくる。
だから残った皆さんが元気なうちに、残せるものは残してほしい。
語れることは語ってほしい。
小橋建太さんの自伝のタイトルは「悔いは、ない」だった。
悔いのないプロレス人生の、悔いのない記録や記憶を、これからも語り継いでほしいし
それを見届け残していくのがファンの願いでもある。
この本も、そのひとつ。
猪木イズムが没入なら、小橋イズムは青春。
全力ファイトの青春から、振り返り分かち合う青春に移り変わっても、
小橋さんのプロレスラー人生は終わらない。まだ終わってもらっちゃ困る。
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