上 下
20 / 320

真昼の海

しおりを挟む
あれから随分経ったみたいで
やっと次の夏が すぐそこに
胸の中を埋める からっぽの面影
僕は君を 忘れないだろう

真昼の海 砂浜に陽炎
走る人も 泳ぐ人も居ない
記憶をたどってみても
誰も居ない 今だけは

あれだけ後悔しないと思っても
やっと次の穴が ふさがってきて
左手をすり抜ける 残り香の感触
君は僕を 忘れたのだろう

真昼の海 長い髪と黒い服
歌うことも 笑うこともない
言葉を紡いでみても
届かない もう今は

時間と心は 戻せないから悲しくて
悲しみと痛みは 癒せないから怖くて
失くしたものにも すぐに気付けない
真昼の海に 沈むまでは 潮のように
血のように

真昼の海 その果ての果て
辿り着くことも 巡り会うこともない
真昼の海 長い髪と黒い服
歌うことも 笑うこともない

真昼の海 砂浜に陽炎
走る人も 泳ぐ人も居ない
記憶をたどってみても
誰も居ない 今だけは

しおりを挟む

処理中です...