ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

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ヒーロー達の青春エピローグ~春の章~

【第11話】ごめん……やっぱり無理……

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 月夜がムスッとした表情で登校している。
 そんな彼女に背後から忍び寄る一つの影が、肩をポンッと叩いて一言。

「おっはよー! 月夜!」
「……何だ静か……おはよう……」

 ぶっきらぼうな挨拶だった。
 月夜のその顔を見た瞬間、静の顔が引き攣る。

「おぉ……これはまた、機嫌悪そうだな……」
「……別に……機嫌悪くなんてない……ぷんっ!」
「いや、機嫌悪いだろ……その顔で機嫌悪くなかったとしたら、ただのモブヤンキーだぞ?」
「誰がモブヤンキーよ! 誰が!!」
「誰って……月夜が、だよ」
「むきーっ!!」

 地団駄を踏む月夜。
 相当荒れている様子だ。
 そんな月夜に、若干引きつつ、静は苦笑いで話を聞く事にする。
 月夜がこれ程までに荒れているのだ……きっと相当な出来事があったのだろう……それが、静の考えだ。

「まぁまぁ……落ち着いて落ち着いて。何があったんだよ。もうバレバレだから、隠す必要もないだろう?」
「…………聞いてくれるの?」
「ああ! 聞くとも! 私は、助けを求められたりすれば、友達の為に何でも出来るタイプだ!! 裸にすらなれる! さぁ! 思いの丈をぶちまけたまえ!」
「いや、それはどうなのよ…………でも、まぁいいわ。聞いてくれると言うのなら聞いてもらいましょうか……後で後悔してないでね?」
「そ、そんなに?」
「うん、そんなに……聞いたら、胸糞悪過ぎて吐いちゃうかも」
「おぉ……そりゃ相当だな。だがしかし、これで逃げるような私ではない! さぁ! カモン!!」
「良い覚悟ね。分かった、話してあげるわ。実はね――」

 月夜の重たい口が開く。
 静は、緊張感からゴクリと生唾を飲み込んだ。
 月夜の不機嫌の理由――それが今、明らかになる。

「昨日、家に帰ったらね? あいつが居たのよ――――白金愛梨が!!」
「なぁーんだ、そんな事か」

 全然大した事じゃなかった。

「そんな事って何よ!! あいつと兄貴と皐月姉! 三人仲良く夕飯食べてたのよ!? 兄貴は無駄にデレデレしちゃってさぁ!! だから私、外でご飯食べたんだよ!? 私だって皐月姉の手作りシチュー食べたかったのにぃー!!」
「いや……一緒に食べれば良かったじゃないか」
「嫌よ!!」
「即答だな……」
「何で私があんな奴と一緒にご飯を食べなくちゃいけないのよ!! せっかくのシチューが不味くなる!!」

 先程よりも激しく地団駄を踏む月夜を見て、静は更に苦笑いを重ねた。

「そんなにシチューが食べたかったのなら、愛梨さんが帰った後に食べれば良かったじゃないか」
「いや、シチューは今日の朝食べたのよ。残ってたから」
「しっかり食べてるのか……」
「美味しかったわ。流石皐月姉ね」
「だとしたらさ……もう怒る理由ないじゃん……」
「あるよ! 怒る理由はあるよ!! 私は、あの女が我が物顔で私の家で夕飯食べているっていう状況に腹が立つのよ!! 食べたけど! 今日の朝シチューはたっぷりいただいたけれども!! 私は――兄貴や皐月姉と一緒に食べたかったの!!」

 (だから一緒に食べればよかったじゃん……)等と言っても無駄なのだろうと、静は溜め息を吐いた。

「月夜は本当に、愛梨さんの事嫌ってるよなぁー」
「嫌いよ――大っ嫌い!!」
「何でそんなに愛梨さんの事嫌うんだ? 良い人じゃん。それに、太陽さんとの夫婦漫才、なかなか面白いじゃんか」
「夫婦とか言うな!」
「まぁ……確かに? ブラコンの月夜としては、大好きなお兄ちゃんが取られそうで憎たらしいって気持ちになるのは分かるけどね」
「私ブラコンじゃないもん!! 兄貴なんて大っ嫌いだもん!!」
「はいはい……」
「もぉー!! 静ー!!」

 ますます不機嫌になっていく月夜。
 やれやれ……と、静は大きく溜め息を吐き、こう続けた。

「月夜も、少しは歩み寄りな」
「はぁ? だから私は、あんな奴と……」
「きっと愛梨さんも、あんたとは――


 仲良くやりたいって思ってるからさ」

「…………」

 月夜は俯いて、もどかしい気持ちになる。

(そんな事、分かってるわよ……私だって……私だって本当は……)


 そして時は過ぎ、放課後。
 月夜が帰宅する。
 またしても、リビングから騒がしい声が聞こえる。

 リビングのドアを開けると――

 昨日に引き続き、愛梨の姿があった。
 目を見開いてしまう月夜。
 自分の中で、モヤモヤとした気持ちが湧き上がってくるのが分かる。

 月夜の存在を確認した太陽、皐月、そして愛梨の三人がそれぞれ声を掛けた。

「あ、月夜おかりなさい。ご飯出来てるわよ。一緒に食べましょ」
「美味いぞ、ハンバーグ。食え食え」

「…………」

 皐月と太陽のその問い掛けに、月夜は何も返事をしない。
 三人の中で唯一、月夜の気持ちを知っている愛梨が、申し訳なさそうに言う。

「ご……ごめんね? 月夜ちゃん……」

 愛梨のその言葉を聞き、月夜の中で、先程迄のモヤモヤとは別の、イライラとするような気持ちが湧き上がった。

『愛梨さんだって……きっと、あんたとは仲良くやりたいって思ってるからさ』

 浮かんで来るのは、静のその言葉。
 しかし――

(ごめん……やっぱり無理……)

「いらない!」

 そして月夜は言う。

「私、今日も晩ご飯外で食べるから!」
「お、おいっ! 月夜!!」

 月夜は帰宅した家から再び、外へ出て行ったのであった。
 一連の流れを、そして月夜が閉めた扉を……皐月と愛梨は神妙な目で見つめていたのだった。

「どうしたんだ? 月夜の奴……友達と約束でもしてたんかな?」
「「…………」」
「ん? 何? オレ今、何かおかしな事言った?」

 ただ一人……太陽を除いて。
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